2023.09.25
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事例で学ぶ 訪問介護でよくある課題と経営改善法

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.5

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

   

   

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第5回は訪問介護でよくある課題と経営改善法です。

訪問介護は介護業界で最も人員不足の分野と言われています。ニーズがあり、事業所は増える一方人手が集まらない訪問介護事業所はどう舵取りすればいいのか。

また、2024年(令和6年)の介護報酬改定時に保険利用が可能になる新サービスの影響も解説いただきます。

 

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部  

               

介助中の訪問介護員(ヘルパー)          

1. 訪問介護の人材不足と高齢化の拡大

訪問介護サービスは介護保険の創世記に於いては、間違いなく花形のサービスであった。ホームヘルパー資格は主に主婦層で注目の資格となり、専門学校には多くの受講者でいっぱいの状態であった。

   

介護保険の施行以来、23年を経過した今、訪問介護の有効求人倍率は15.5倍を超え、介護福祉の倒産件数でも断トツのトップである。その原因の多くが人手不足とされる。訪問介護職員の平均年齢は、他のサービスに比べて高くなっている。令和3年度調査では、54.4才である。これは、介護保険創世記にヘルパー資格を取ったスタッフが、これまでの訪問介護を支えてきたことを意味する。言い換えると、新しい資格者が増えていない現状も見え隠れする。

  

訪問サービスを担当する職員は初任者研修修了者以上の資格が必要とされる。そのためには、時間と費用を掛けることが求められる。しかし、デイサービスや介護施設の介護職員は資格が求められることはない。これから介護の仕事をしようとする者は、通常は資格が無くても仕事ができる介護施設などに就職を考える。結果、初任者研修修了者以上の有資格者が中々誕生しないという現実が見えてくる。

  

介護施設などに就職したものは、実務者研修を経て介護福祉士を取るコースを辿ることができるため、そのまま定着することも多い。すなわち、訪問介護に人材が廻ってこない状況となっている。訪問介護事業者サイドで、初任者研修の受講を促進する取組として、その取得費用の一部などを補填する取組も一時期は目立ったが、今は尻すぼみの状況である。

   

また、介護職員等特定処遇改善加算の算定状況で、訪問介護の算定率が低いことも驚きだ。いの一番に処遇改善加算を算定して、給与面を改善し、職員の確保と定着を促進すべきである。訪問介護サービスは、他のサービスに比べて小規模零細の事業所が多い。経営者の高齢化に伴って、後継者の問題が浮上しているのも事実だ。それらの諸問題を、訪問介護業界として、どう乗り切っていくか。大きな課題が表面化して居る。

   

訪問介護員の人手不足の現状介護関係職種別の年齢階級別構成割合及び平均年齢図表:訪問介護員の人手不足の現状と介護関係職種別の年齢階級別構成割合及び平均年齢

出典:第220回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料

             

2. 人手不足の原因と対策

ヘルパー資格と現在の初任者研修の大きな違いが、訪問介護事業所での実習が無くなったことである。そのため、初任者研修修了者は訪問介護サービスの素晴らしさを体験せずに研修を終える。訪問介護サービスについて、学生のインターンシップなどを促進するなどの業界内努力も必要である。

  

また、介護職員は給与が安いというイメージがある。そのため、政府は、処遇改善加算等を充実させてきたことから、処遇環境は改善に向かいつつある。特に、大手事業所の給与水準は、一般企業並に改善されている。それでも定着率が改善しない理由は、

  

  

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