編集部より

病院の現役事務長藤井将志さんが、病院での職員のメンタルヘルスとその対応法について解説します。精神疾患で休職し、復帰してきたスタッフに対して、どのような人事対応が必要なのでしょうか。

  

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

1. 病気に関する基礎知識を持つ

うつ病等のいわゆるメンタル不全で仕事が継続できない状態になり、休職してしまう職員にどう対応していくのか、を考えます。こうしたうつ病等の数は増えており、図表1のグラフからも気分障害やストレス関連障害の患者数が増加していることが容易に見て取れます。

 

「うつ病など精神疾患はメンタルが弱い人がなるもので自分はかからない」なんて思っている人がいるかもしれないですが「こころの風邪」とも言われるくらい、誰でもかかる可能性があります。風邪と言っても、対応を間違えて悪化してしまうと最悪の場合、自殺という惨事に至ってしまうのでしっかりとした治療が必要です。また、普通の風邪と違って2 〜3日で治るものでもありません。ある程度の期間ストレスがかかりメンタル不全な状態になるので、治るのにもそれなりの時間がかかることが多いです。一般に、業務上のストレスという1つの因子により発症するのではなく、その他に家庭内のことや、自身の健康のことなど、プライベートな領域でもストレスがかかり、2〜3つといった複数の因子が重なると精神疾患が発症しやすいと言われています。比較的真面目で深く考えてしまう人がなってしまったり、前兆もなく突然働けない状態になったりすることもあります。まずは管理職がこうした精神疲労の特徴を知っておくことは大前提でしょう。「メンタル不全なんかになるやつは怠け者だ」なんていう考えは遠い昔の話です。

  

 

図表1:精神疾患を有する外来患者数の推移(疾病別内訳)

図表1:精神疾患を有する外来患者数の推移(疾病別内訳)

出典:厚生労働省

  

筆者の病院は職員数が250名ほどいますが、年に1人程度メンタル不全で休職する職員がいます。心療内科にかかっている職員はもっと多いです。決まった復職プログラムはありませんが、その人に合った復職を支援する体制をとっています。

 

主治医である心療内科の先生から指示されている頻度で少しずつ仕事を始めてもらい、働く日数や働く時間などをフルタイムになるまで徐々に増やしていきます。期間は数カ月から数年と人により差がありますが、ほとんどの職員は辞めずに完全復職できます。幸いにも、自殺という最悪の事態になったことはありません。職員がメンタル不全に入ってしまったら、このように対応しますが、できれば予防したいものです。

 

2.メンタルに影響する複数因子をひとつでも軽減させる

メンタルが不調傾向であれば所属長と相談してほしいと伝えても、なかなか事前に見つけられません。そもそも、本人自身も気づかないうちにメンタルが落ちていることも多々あります。直属の上司が少し気になる兆候がある場合は、定期的に面談をし業務量を把握し、少しでもストレスが少なくなるように調整できると良いでしょう。

 

教科書的にはこれでいいのですが、気づけなかったり、感染症や救急、災害といった仕事がらストレスを避けられない状況もあります。万全の対策ではありませんが、職員自身も所属長もメンタル不調をいつも近くにある危険として気にしておく、ということは必要でしょう。面談時の視点として持つべき点は

 

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