2024.04.22
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在宅件数を増やすには?具体的な取り組みや在宅医療を提案したい患者さんの特徴を紹介

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営~Vol.10

    

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

 

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

 

 第10回は、在宅件数を増やすには?具体的な取り組みや在宅医療を提案したい患者さんの特徴を紹介です。本記事では、在宅業務を推進するメリットや在宅件数を増やすための具体的な取り組み、在宅医療を提案したい患者さんの特徴について紹介します。

 

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

   

      
医療従事者と車いすに乗った患者さん

      

  

「住み慣れた自宅で治療を続けたい」「終末期は家族に見守られながら自宅で過ごしたい」といった希望を抱く高齢患者さんは少なくありません。そうしたニーズに応えるべく、2024年度の調剤報酬改定では、在宅関連の指導料見直しや加算の新設が予定されており、薬局薬剤師の在宅医療への参加が求められています。

本記事では、在宅業務を推進するメリットや関連する指導料・加算について解説するとともに、在宅件数を増やす取り組みや、在宅医療を提案したい患者さんの特徴をお伝えします。

       

1. 在宅医療とは

患者さんの暮らしを支える在宅医療と介護連携の図

    

  

在宅医療とは、医療従事者が患者さんの自宅や介護施設を訪問して診療や治療、処置を行う医療のことです。通院が困難な患者さんでも住み慣れた場所で自分らしい暮らしを続けられるように支援するのが目的です。

日本保険薬局協会が報告した「調剤報酬等に係る届出の調査報告書」によると、2018年9月の調査では在宅業務を年間10件以上行った薬局の割合が27.5%でしたが、2023年5月には38.7%まで増加しています。2025年には団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)を迎えることもあり、在宅医療の需要は今後も増加していくと考えられます。

 

 

図表1:患者さんを中心とした在宅医療・介護連携の推進

保険薬局における医薬品の在庫金額・購入金額・廃棄額の平均値

出典:厚生労働省「在宅医療について」

 

2. 薬局薬剤師が行う在宅業務とは

薬の入った袋を渡している写真

 

  

在宅医療に携わる医療従事者として、薬剤師はどのような業務を担うのでしょうか。薬局薬剤師が行う在宅業務と、在宅業務を行ううえでの課題をお伝えします。

 

薬局薬剤師が行う在宅業務とは

在宅医療において、薬局薬剤師は対象となる患者さんの薬剤の保管状況や飲み忘れ、薬剤の重複・併用禁忌などを確認し、患者さんやその家族に薬剤の情報提供を行うのが主な業務です。処方内容に問題がある場合には医師へ疑義照会や残薬調整を行ったり、ときには医師の在宅訪問に同行し処方提案をしたりすることもあります。

また免疫力が低下している患者さんに対して使用される注射剤の無菌調剤を行うケースもあります。薬剤の混合では、微生物や異物によって汚染しないようにするといった専門的な手技が必要になるため、薬局薬剤師の職能を活かせる業務の1つといえるでしょう。

  

薬局薬剤師が行う在宅業務の課題

薬局で在宅業務を行うときには、さまざまな状況に対応できるような体制を整えなければなりません。例えば患者さんの急変に対応するために、24時間対応を取っておく必要があります。しかし、2022年に厚生労働省が作成した「在宅医療の提供体制について(その2)」によると、2021年時点で24時間対応が可能な薬局は全体の約3割しかなく、都道府県によって差が出ています。24時間対応をするには、業務フローを整備したり薬剤師の人数を十分に確保したりする必要があるでしょう。

  

3. 在宅業務に関連する指導料・加算

指導料や加算も取りこぼさないように計算     

  

在宅医療を行うと、どのような指導料や加算を算定することができるのでしょうか。在宅業務に関する代表的な指導料や加算をご紹介します。

 

在宅患者訪問薬剤管理指導料

在宅患者訪問薬剤管理指導料は、在宅患者さんへの薬学管理を評されるものです。算定には以下の要件を満たす必要があります。

  • 対象:通院が困難かつ在宅で療養している患者さん
  • 内容:薬局薬剤師が医師の指示に基づき、薬学的管理指導計画を策定したのち、患者さんの自宅や介護施設を訪問して薬学的管理指導を行い、医師に対して訪問結果について文書で情報提供を行った場合
  • 上限:月4回に限る(末期の悪性腫瘍の患者さん等は、週2回かつ月8回まで)

  

ただし、算定する際には薬剤師は名称や所在地、開設者の氏名、在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を事前に地方厚生(支)局長に届け出ておく必要があります。

本指導料は同じ建物において訪問診療を利用している患者数とオンライン服薬指導の利用有無によって点数が異なります。

 

  1. 単一建物患者 1人の場合650点
  2. 単一建物患者 2~9人の場合320点
  3. 単一建物患者 10人以上の場合290点
  4. 在宅患者オンライン薬剤管理指導料(オンライン服薬指導を利用した場合) 59

出典:日本薬剤師会調剤報酬点数表(令和5年4月1日施行)」

  

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料

在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 対象:通院が困難かつ在宅で療養している患者さん
  • 内容:在宅患者さんの状態の急変に対して、在宅療養を担う医療機関の医師や医療機関と連携する他の医療機関の医師の求めに応じて、薬局薬剤師が在宅業務を行った場合。また、医師の求めに応じて、計画的な訪問薬剤管理指導とは別に、緊急で患者さんの自宅を訪問して必要な薬学的管理指導を行い、医師に対して訪問結果を文書にて情報提供を行った場合。
  • 上限:月4回に限る

 

本指導料は急変の原因疾患が訪問薬剤管理指導計画の対象かどうかで算定できる指導料(点数)が異なります。またオンライン服薬指導を利用した場合にも異なる点数を算定します。

 

  1. 計画的な訪問薬剤指導に係る疾患の急変の場合500点
  2. 1・3以外の場合200点
  3. 在宅患者オンライン薬剤管理指導料(オンライン服薬指導を利用した場合) 59点

出典:日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和5年4月1日施行)」

    

2024年度調剤報酬改定における在宅業務の指導料や加算の変更点

2024年2月に厚生労働省から2024年度調剤報酬改定の概要が発表されました。

 

 

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