編集部より

自分のクリニックを立ち上げるのは、そこまでに大変な努力の積み上げが必要です。しかしそこで終わりではなく、開業した後は速やかに地域の信頼を勝ち得て経営を軌道に乗せる必要があります。

本記事ではこいけ診療所所長で医師の小池雅美さんに、クリニックの再診率がなぜ重要か、再診率の計算法、再診率を増加させるための具体的な施策を伺います。

 

監修/小池雅美 医師 こいけ診療所院長

文/ 美濃佳奈子 薬事ライター

          

 

女性を診察する医師とそばに立つ女性看護師  

クリニックの経営を安定させるには、再診率アップを目指すことが大切です。とはいえ、多岐にわたる業務をこなすことに精一杯で、なかなか取り組めないと感じる方もいるでしょう。また、具体的にどうすれば再診率アップにつながるのか、わからないという方もいるかもしれません。

今回は、クリニックの売上増加につながる再診率向上のポイントとともに、具体的な施策についてお伝えします。

 

1.まずは自院の再診率をチェックしてみよう

聴診器とメモを机に置き、計算機で計算をしている男性医師

        

開業当初は、初診の患者さんを増やすために広告や看板設置などの宣伝を行うクリニックがほとんどです。しかし、そうした集客方法には、広告費がかかります。開業後数年が経っているにもかかわらず同じような方法を続けていると、固定費を減らすことができず、利益アップが見込めない可能性があります。また、「なかなか売上が安定しない」「収益が増えない」と感じる場合、既存の患者さんのリピート率が不十分なのかもしれません。既存の患者さんの再診率アップを目指す取り組みを考えてみましょう。

   

再診率の計算方法

まずは、自院の再診率を確認してみましょう。再診率は、一日あたりの患者数から、再診となった割合を計算して求めます。

例えば、1日あたり40名の外来患者さんが来院し、そのうち32人が再診であれば、再診率は80%となります。

なお、再診率が80%の場合、裏を返せば、初診率は20%です。再診率が高いほど、初診率が低くなります。状況によって初診の患者さんを増やしたいと考えることも大切ですが、収支を検討したうえで、バランスを考えた取り組みを考えることが大切です。

1日あたりの再診率を確認したら、さらに1か月、半年、一年と再診率の推移を確認し、その都度、最適な施策を取り入れてみましょう。

   

診療科別 再診率の目安

自院の再診率が把握できたとしても、高いのか低いのか判断できない場合もあるでしょう。厚生労働省の資料「医療施設調査(平成26年)」の結果によると、無床診療所における、診療科別の平均初診率と再診率は以下のとおりです。自院の再診率の平均と比べてみましょう。

  

図表1:診療科別平均来院人数と初診率、再診率(1日あたり)

無床診療所における1日当たりの初診率と再診率(診療科目別)

出典: 平成26年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況|厚生労働省

 

上記のデータはあくまで目安です。規模や病床の有無によっても異なりますが、自院の再診率と比較して、大幅に数値が低い場合には、再診率アップを目指してはいかがでしょうか。

  

2.売上増加だけじゃない。再診率を上げることによるメリット

腕を組んで立つ男性医師

      

再診率アップは売上アップに直結するだけでなく、他にもさまざまなメリットをもたらします。詳しく見てみましょう。

 

広告費の削減

先にもお伝えしたように、初診の患者さんを確保するためには、ポスティングや看板広告、ホームページのSEO対策など、認知度アップに向けた広告費が継続的に必要になります。その点、再診の患者さんは、すでに自院を認知して来院してくれる存在です。認知度アップにかかるコストを削減できるという点でも、収益アップに大きく寄与します。

 

外来業務の効率化

初診時と比べ、再診時には患者さんの情報を得るための問診や診察時間を短縮できます。また、患者さんの過去のデータをもとに診療できるため、リスク管理の負担も軽減されます。結果として、患者さん1人あたりの外来時間が短縮され、効率化につながる点がメリットです。

 

患者さんとの信頼関係を築きやすい

クリニックを再診するということは、そのクリニックにある程度の信頼感や安心感を持っているということです。患者さんにとっては、身近で相談しやすいクリニックという認識があり、信頼関係を築きやすくなるというメリットがあります。また、納得して来院しているため、ミスコミュニケーションによるトラブルが発生するリスクが軽減されると考えられます。

       

3.再診率アップのために取り組みたい3つの施策

タブレットを見せながら患者さんと会話する医師

      

再診率アップへの取り組みは、クリニック経営にさまざまなメリットをもたらします。では、具体的にどのような取り組みを進めればよいのでしょうか。ポイントを解説します。

 

 

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP