2023.08.28
5

事例で学ぶ 介護施設でよくある課題と経営改善法

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.4

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

  

  

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第4回は介護施設でよくある課題と経営改善法です。

ご利用者やご入居者の喜ぶ、ためになるサービスを保ちつつ、介護報酬や診療報酬の仕組みをよく知って、本来計上できるはずの利益を取りこぼさないようにするのが大切です。

申請や人員配置、基本的な稼働率や単価向上の仕方のほか、現在の事業所の発展を試みたい介護経営者はコストパフォーマンスやコンプライアンスについても必読です。

 

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

 

       

1. 利用者単価向上

介護施設における利用者単価は、入所者における重度者の割合が大きく影響する。特別養護老人ホームは要介護3以上の施設であるため、重度者を中心に入所を進めている。加算においては、看取り加算がポイントで、看取り期に於いて、病院に転院させる施設がまだまだ多いのが現状であるが、最後まで施設で看取りを行う事も、今後の施設経営には求められる。

   

例えば、介護老人保健施設では、いわゆる特養化したお預かり型の施設では収益の向上は見込めない。最終的に、基本報酬の最高位である超強化型を目指す。この時、在宅復帰率がポイントとなるが、長期滞在の入所者を全く受け入れないという事は、地域のニーズからも難しいという声を聞く。このような場合、定員の半分までは長期滞在の入所者を受入れ、半分の入所者を3ヶ月―5ヶ月程度で在宅に復帰させる事を実現する事で、指標の数字をクリアする事が可能である。3ヶ月というのは、短期集中リハビリテーション加算が3ヶ月まで算定で有ることから、これをひとつの区切りとして、利用者家族の事前同意の下で退所を実現する。

このサイクルができると、比較的容易に、介護老人保健施設の最上位区分である超強化型の算定が可能となる。このように、最上位の基本報酬を算定した上で、介護施設サービスに位置づけられている加算は、基本的にすべて算定するという意識が重要となる。

  

よく見かけるのが、職員不足や事務負担、報酬単価が低いこと等を理由として、加算を算定していない施設である。できない理由は、無数にあるが、加算を算定する理由は収益の向上に他有りえない。たしかに、加算を算定することで、計画書が増え、スクーリングなどの手間が増え、記録等の書類も増える。ただでさえ忙しい中で、そのような手間を増やしたくないという現場の声は無視できない。そのために、業務内容の見直し、業務の標準化を進めなければならない。

  

介護記録ソフトなどのICT化や介護ロボット、見守りセンサーなどの導入も積極的に進めるべきだ。インカムを導入する事で、業務フローも驚くほど改善が可能となる。確かに、設備投資を伴うが、今はICT補助金などが充実している。それらを活用することで、コスト負担はかなり軽減できる。短期的には設備投資で収益は悪化しても、中長期的は短期間で投資は回収できる。これらのICT化とともに、LIFEの活用にも力を入れる必要がある。LIFEを上手く活用することで、加算が算定できるし、施設のケアの質も向上が期待出来る。その活用ノウハウは、施設の財産となり、差別化に繋がる。

  

利用者満足の向上は、職員満足に直結し、定着率の向上や、人材確保にも有効に作用する。経営陣が指示すべきは、加算は全部取ることを指示することである。伸びている介護施設は、必ずと言って良いほど、殆どの加算を算定している。

           

2. 稼働率向上

介護施設の基本的な構造は、三角形になる。底辺は、在宅サービス、中間がショートステイ、上部が介護施設を頭に描いて欲しい。併設の在宅サービスの利用者数を如何に拡大するかが、大きなポイントである。この在宅サービスの利用者が、介護施設の見込入所者になる。

  

在宅サービスの利用者が、更なる高齢化や重度化で、ショートステイを使うようになる。そのショートステイの利用が、ある意味でお試しとなって、介護施設の利用に結びつく。

   

また、介護老人保健施設の場合は、在宅復帰の施設である事から、一定の状態に改善されれば、退所して居宅に戻り、在宅サービスを利用する。更なる高齢化や重度化で、再び、介護老人保健施設に入所し、状態改善で居宅に戻るというサイクルを繰り返す。そして、

 

 

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP