2022.07.29
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中小規模薬局の人材定着 ~薬剤師と管理栄養士~

“超”地域密着調剤薬局の経営戦略 ~地域と共に生き続ける~ vol.4

“超”地域密着調剤薬局の経営戦略  ~地域と共に生き続ける~

 

編集部より

「物」から「人」へ。2025年の実現を目指す地域包括ケアシステムの構築に向けて、薬局のあり方は変革期の真っ只中です。厳しい薬局経営が続く中、地域に根差す調剤薬局の強みを活かせる時代がようやく来たと考えている薬局経営者・管理者の方たちも多いことと思います。しかし、街の小さな薬局が地域と共に生きるとは具体的にどういうことなのでしょうか?本コラムでは、東京都練馬区江古田で地域密着調剤薬局経営をされている、たむら薬局の田村憲胤(のりつぐ)さんに、採用・税務・地域連携など薬局経営に関わる実践についてお話しいただきます。

第4回は「人材定着」がテーマです。スタッフを飲みに誘い、福利厚生を充実させることが社員の定着につながると考えていた田村さんですが、コロナ禍のタイミングで人事評価制度の導入に向け動き出しました。舵を切ったその背景と行動に迫ります。「人事評価制度を導入したい」と考えている薬局経営者の方へのヒントがたくさん見つかるかもしれません。

 

地域に根差す薬剤師・管理栄養士をどう定着させるか

皆さまこんにちは。

 

今回は「社員の定着」がテーマです。

前回のコラムの最後に「会社のビジョン」と社員の「成長のベクトル」を合わせ一緒に成長し、地域顧客から評価されていることを実感できる環境を作っていくことが大切で、併せて「人事評価制度」を整備することで定着にもつながり、能動的に能力を最大化につながるとお伝えしました。

 

理屈ではわかっているものの、現実的に人事評価制度を導入して浸透させ、評価と連動していくかと考えると、なかなか難しいと感じられている経営者の方たちも多いのではないでしょうか。

  

コロナ禍と重なった人事評価制度着手のタイミング

第2回コラムでお伝えした、ビジョンを掲げるのと同時に、地域住民に満足してもらうために、業務や成果の物差しを欲していました。好循環を生み出すためのチームづくりのためにも人事評価制度は重要と考えていたので、グレードや考課表を何パターンも考えてはいました。

 

ただ、ビジョンと一致しない社員が存在する以上、制度化は現実的ではなく「まずはできることから」と考え、以前の反省を踏まえ、賃金規定と就業規則を整備しました。そして、ビジョンに共感して入社してくれた若手が育ち、全員が同じ方向を向いた社員になった2020年4月頃から人事評価制度に着手し始めました。

 

2020年4月といえば第1回目の緊急事態宣言が出たタイミングです。この頃、マスク・消毒剤・体温計が売り切れ、さらには根拠のないデマ情報から、ティッシュ・トイレットペーパーなどの紙類が品薄になっていました。「薬局はcareからcureまで関わる場所」という思いで、以前から日常生活に必要なものは全部提供できるようにと衛生用品・日用品などの毎日配送があるボランタリーチェーンでルートを確保していたことが功を奏し、コロナ禍で「かかりつけ」にしてくれている地域住民には、必要な情報や「モノ」をどうにか供給し続けることができました。

 

また受診抑制が起こり、0410対応など患者の受診行動が変化していく中、コロナ前から薬局アプリによる処方箋送信・チャット相談ができる体制を進めていたことや、地域の全ての医療機関に対応できる営業時間を確保し、管理栄養士考案の健康レシピや、地域の医療情報など必要な情報を発信してきたことも重なり、結果「たむら薬局があって良かった」と言ってもらえました。そのご家族・友人などが口コミで来店してくださり、衛生用品・日用品の提供をきっかけに処方箋応需にもつながり、コロナ禍の状況下、なんとか結果を出し続けることができました。

 

COVID-19感染拡大前後のたむら薬局の技術料・売上高の推移

COVID-19感染拡大前後のたむら薬局の技術料・売上高の推移

  

 

組織診断から見えた、人事評価制度制定の理由とは?

「今しかない!!」

 

そう思い、まずは組織診断から始めました。結果としては、今まで繰り返し理念や想いを伝えていた甲斐もあって、高いモチベーションの社員が多いことを示す形となりましたが、一方で、教育制度・評価制度に関して不十分という課題も見えてきました。

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