2025.06.09
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2027年度介護保険制度改正の展望と課題

~菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営~Vol.6

    

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定を通して、介護業界には多くの課題が生まれました。経営課題はもちろん、人材不足の解決、介護DXをどのように進めるか、事業所経営者は様々な問題と直面することでしょう。そこで、本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」として、介護の現場に重要なノウハウやマインドを解説頂きます。

  

第6回は、「2027年度介護保険制度改正の展望と課題」です。

 

2027年度介護保険制度改正は、かつてない大改正になることが容易に予測可能な状況です。変化に対応できず、事業撤退に追い込まれる事業者が出てくることも予見されます。

 

介護関係者はそうしたマイナス改定も頭に入れつつ、「希望のない介護事業にしないために声を挙げ続ける必要がある!」と筆者は説きます。

では、なぜ、そうした覚悟と意思表示が必要なのでしょうか。

 

その理解のために、制度改正の最重要テーマである「地域3分類」「配置基準緩和」の解説を中心に、制度改正に潜む展望と課題を浮き彫りにしていきます。

来るべき制度改正に向けての心構えとして、お役立てください。

  

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

      

  

1. 異例の速さで始まった介護保険制度改正論議

介護保険

 

次期介護保険制度改正は2027年4/1~が予定されており、今現在、社保審・介護保険部会で議論が行われている。

この議論は今年の年末まで続き、クリスマスの直前に諮問・答申が行われ、そのうち必要なものは来年1月の通常国会に法案として挙げられるわけである。

介護保険部会に答申がされた後は、介護給付費分科会に審議の場が移って、介護報酬改定・基準改正に関する議論がされることになる。

その諮問・答申は来年12月に行われ、必要なものは国会審議を経て、2027年4月からの法改正・基準改正・報酬改定とつながっていく。 

 

ここで注目しておくべきは、介護保険部会の本格審議が、昨年12/23の第116回社会保障審議会介護保険部会から始まっていることである。

これは過去にない異例の速さだ。過去の制度改正議論は、12月諮問・答申というスケジュールに沿って、その年の4月から本格化するのが通例だった。

ところが今回の議論開始時期は、通例より4か月も早い時期に始まっている。これは何を意味するのかははっきりしている。

それだけ議論すべき領域が多岐にわたっているということであり、2027年度介護保険制度改正は今までにない大改正になることが容易に予測できる。

   

   

2. 2040年問題にスポットを当てる制度改正

 

少子化 

我が国の年齢層には2つの山がある。最大の山とは、いうまでもなく団塊の世代の山である。

第1次ベビーブームと云われた当時に生まれた「団塊の世代」とは1947年(昭和22年)~1949年(昭和24年)生まれの世代を総称する言葉である。

そしてその次の山とは「団塊ジュニア世代」の山である。それは団塊世代の人々の子供が数多く誕生した第2次ベビーブームと言われた当時に生まれた世代で1971年(昭和46年)から1974年(昭和49年)生まれの世代を指す言葉だ。

我が国の社会保障政策上の一番の問題点は、第2次ベビーブーム以降はベビーブームが存在せず、出生率は低下の一途をたどっているということである。

 

 

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