編集部より

病院の事務長藤井将志さんが、実務者目線で病院経営を時に辛口解説する今シリーズ。

今回は、「副業」と「本業」の境界線をどのように引くか?についてご紹介します。

藤井さんの病院では、かつて「規定として副業が可能」という方針を盛り込むことができませんでしたが、「医師の副業は黙認されている一方で、他の職種が禁止されるというダブルスタンダードは適切なのか?」という疑問から、副業とは別に「院外学術活動支援制度」という仕組みを設け、柔軟な働き方の確立に向けて動き出しているそうです。そこに至る経緯や、多様な働き方の具体例にもぜひご注目ください。

 

執筆/藤井将志(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志)

編集/メディカルサポネット編集部

  

  

1. 病院で副業はありなのか

今回は副業についてどう扱っているか、をテーマにします。

2019 年から政府が主導してきた働き方改革の一環で、世の中的には副業が浸透しつつあります。

各種調査によると、企業の 6割がすでに副業を許可しているという報告もあります。

筆者の病院でも当時、副業についてどう考えるかを協議したことがあります。

結果としてはあまりポジティブな意見が集まらず、規定として副業が可能ということを盛り込むことができませんでした。

 

声として大きかったのは、所属長から「副業によって本業に支障を来すのではないか」という懸念です。

例えば、日勤後に別の病院で当直するとか、時間外に飲食店などで働くことで翌日の勤務中に疲れてしまうのではないか、といった事例が想定されたからです。

 

その一方で、業界として医師が外部で働くこと自体にはあまり違和感がありません。

例えば、週4日勤務で週1日は研究日というケースは珍しくないでしょう。

研究日は他の医療機関で報酬を得て働くことが許されています。

 

週5日勤務でも、土曜日にアルバイトをする医師もいるでしょう。

さらに細かいことでは、勤務先とは別に産業医契約を結んで報酬をもらったり、学校医の報酬をもらったり、医師会や学会などの院外活動で謝金を受け取ったりと、何らかの副業をしている医師は多いのではないでしょうか。

 

では、医師は黙認されていて、他の職種がダメだというダブルスタンダードで良いのでしょうか。

 

2. 院外活動に手当を支給

こうした経緯から当院では、副業とは別に「院外学術活動支援制度」という仕組みを作りました。

端的に言うと、学会発表などを行った場合に手当がもらえる制度です。

院外で発表する際に病院から手当を支給し、病院名を宣伝してくれたことに対するフィーを支払っています。

 

しかしこれには条件が付いており、もし依頼側から謝金をもらえる場合には手当の支給はありません。

もし謝金をもらう場合は病院ではなく直接個人が受け取ることを認めますが、その際は勤務時間外でしてください、となっています。

つまり、自分の休みである時間を使って外で活動する場合に、対価として報酬を得ることを可とする、ということになります。

 

図表:院外学術支援制度

 

この制度が一定の基準となり、院外で活躍して報酬を得るケースが生まれています。

講演や執筆、学校の講師、介護認定審査会等の謝金など、医師以外にも外部報酬を得る人がいます。

さすがに就業時間中に外部の仕事をすることはおかしいので認められませんが、自分の自由な時間についてはどう使おうが構わない、としています。

 

逆のケースもあり、

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