2022.06.30
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中小規模薬局の人材育成 ~薬剤師と管理栄養士~

“超”地域密着調剤薬局の経営戦略 ~地域と共に生き続ける~ vol.3

“超”地域密着調剤薬局の経営戦略  ~地域と共に生き続ける~

 

編集部より

「物」から「人」へ。2025年の実現を目指す地域包括ケアシステムの構築に向けて、薬局のあり方は変革期の真っ只中です。厳しい薬局経営が続く中、地域に根差す調剤薬局の強みを活かせる時代がようやく来たと考えている薬局経営者・管理者の方たちも多いことと思います。しかし、街の小さな薬局が地域と共に生きるとは具体的にどういうことなのでしょうか?本コラムでは、東京都練馬区江古田で地域密着調剤薬局経営をされている、たむら薬局の田村憲胤(のりつぐ)さんに、採用・税務・地域連携など薬局経営に関わる実践についてお話しいただきます。

第3回は中小規模薬局における人材育成について考えます。毎年採用していない、採用しても1人~2人という中小規模薬局において、大手薬局の採用手法・育成手法を活用することは難しく、自社のビジョンに沿った採用や育成を進めることが必要です。薬剤師の採用が「数年に1回」だというたむら薬局ではどのような採用・育成方法を採っているのでしょうか?また、非薬剤師職として近年注目を集める管理栄養士の採用・育成についても触れていただきます。国の助成金を活用した育成プログラムは参考になる薬局経営者の方も多いのではないでしょうか。将来、薬局での管理栄養士の活動が、調剤報酬算定に加えられる日を見据えて地域の健康課題に沿った実績を積み重ねる田村さんの経営者手腕は見逃せません。

 

地域に根差す薬剤師をどう確保し育成するか

皆さまこんにちは。

 

前回のコラムでお伝えしましたが、当社は会社として目指すビジョンを決めてそれを軸に採用活動を進め、結果として現在は6年制卒の薬剤師社員が半数以上を占めるようになり、年齢的なバランスも考慮して徐々に新卒・第2新卒中心の採用へとシフトしています。今回は薬剤師の採用・育成の詳細やビジョンについて、また、当社では管理栄養士の採用・育成もしていますので、そこについても現状と今後の展望をお伝えしたいと思います。

 

毎年100人規模で採用する大手薬局と異なり、当社では「江古田にこだわり、 cureからcareまで貢献する」というビジョンの元、積極的に店舗数を増やすこともしていませんので薬剤師の採用は数年に1回です。

 

私が新卒でドラッグストアに入社した時の新入社員研修は、1週間本社でマナー研修等を受けその後現場に配属という流れでしたが、中小薬局では大手のように同期入社を集めての一括研修などはなかなかできません。当社では、新卒の薬剤師社員には外部の新人研修を2日程受講してもらい、その後は薬局でのOJTを中心とした育成へと移っていく方法を取り入れています。

そもそも、新卒ベースの採用にかじを取れたのも、10年前に会社の目指すビジョンを決め、地域に根ざす薬剤師の思いや、「cureからcareまで」薬局の本来の役割(目的)を、実務実習で来た学生に伝えていたことがきっかけとなりました。

 

 

 

―――実務実習は学生に自薬局を伝える大切な場

時を同じくして私はOTCの研修団体に入会し、そこで得た知識を社員や学生に共有していきました。また、量販店では手に入らないその研修団体オリジナルの商品を少しずつ揃え、並行して相談時間を捻出するために調剤業務の機械化・IT化を進めました。

 

こうして環境を整えながら、処方箋調剤目的の来局者にプラスアルファの提案を自ら繰り返したことで、少しずつ処方箋のない相談目的の来局者が増え、その結果面での処方応需も増えていったことも学生には魅力に映ったのかもしれません。そんな私の思いに共感し「社長の薬局で働いてみたい」と、実務実習終了後に本人の申し出で当社にアルバイトとして勤務し、その後正社員として入社し、現在は管理薬剤師として、地域の学校薬剤師活動など能動的に地域と関わるまでに成長し活躍してくれています。

 

学生アルバイトの時は、今で言う調剤補助業務や医療事務業務などの対物業務を中心に、その後薬剤師として入社してからは、服薬指導中心やセルフケアに関するプラスアルファの提案などの対人業務を身につけていくという、自然な流れで業務を習得できるメリットがあります。実習に来た学生たちが、薬局でcureからcareまで活躍する身近な先輩薬剤師の姿を見てロールモデルと感じ未来をイメージできたのか「たむら薬局で働きたい」と言ってくれるようになりました。結果として、現在までに4名の社員が当社での実務実習をきっかけに就職しています。

 

 

―――中途薬剤師の採用もビジョンに共感しているかが重要

また、当社では中途薬剤師も採用していますが、ビジョンに共感することを前提として入社してもらっています。彼らが入社してから、まずは私のいつもいる店舗で叩き上げ社員と一緒に勤務してもらいます。そうすることで双方が同じベクトルで成長していくようになります。その後適性や状況に合わせて他の店舗に入ってもらうようにしています。同じ方向を向いた社員が増えたことで薬局の魅力も高まってきたように感じ、来局者数や応需医療機関数の増加に結びついてきました。そして、それに応えようと社員自ら勉強しようという好循環が生まれており、調剤や在宅業務に関しては特段教育体制を作っている意識がなくても自分たちで業務内容を考え遂行してくれています。

 

 

薬剤師が苦戦する中小薬局での業務とは?

―――ハードルが高い?OTCの相談販売

教育体制で苦労したのはOTCの相談販売でした。今の薬剤師さん達はなかなか販売経験の機会が少ないこともあり、自分が提案した商品を試して効果を実感した顧客が「ありがとう」と再び薬局に買いに来てくれるという、相談販売の成功体験をさせてあげられないことが課題でした。

 

また、コロナ禍以前のOTCの研修は日曜日や薬局の閉店後の勤務時間外の開催だったことも多く、なかなかスタッフを参加させられず、私が参加して学んできたことをテーマに勉強会を開催していました。さらに、新しいOTC商品を仕入れた時はまずスタッフに使ってもらい効能を確認し、処方箋を通した相談の中でプラスアルファの提案をするように根気良く教えていました。ただ、OTCの相談販売になると自信がないのか、結局「社長〜」と呼ばれ、私が相談対応する状況が最近まで続いていました。

 

しかし、コロナ禍で良い変化も感じています。当社でもデジタルシフトが一気に進み、

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