2025.06.04
5

選定療養制度は薬局経営に影響がある?関連する加算や患者さんへ説明する際のポイントを解説

薬局経営コラム

    

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

 

2024年度の調剤報酬改定で導入された「長期収載品の選定療養」は、長期収載品を選択する際に特別料金が発生する仕組みです。この制度の本制度を活用することで、収益向上を目指したいと考える薬局もあるでしょう。

 

本記事では、そのために必要な、選定療養制度やジェネリック医薬品についての情報提供の行い方や、スムーズな切り替えを促進していくためのポイントなどをご紹介します。

 

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

  

スーツ姿の女性  

2024年度の調剤報酬改定では、長期収載品の選定療養制度が新たに導入されました。本制度を活用して、ジェネリック医薬品への切り替えを進めて加算を算定し、収益向上を目指している薬局もあるでしょう。

 

本記事では、選定療養制度が薬局経営に与える影響や関連する加算、患者さんへ説明する際のポイントを解説します。

 

  

   

1.2024年度調剤報酬改定で導入された「選定療養制度」とは

 

電卓とボールペンを片手に持ってノートパソコンを見ている人

  

選定療養制度とは、特定の医療サービスを受ける際に、通常の一部負担金(1~3割)とは別に「特別の料金」を支払う仕組みです。

2024年度の調剤報酬改定において、新たに「長期収載品の選定療養制度」が導入されました。

長期収載品とは、ジェネリック医薬品が発売されている先発医薬品のことを指します。

2024年10月からジェネリック医薬品が存在する先発医薬品(長期収載品)を調剤する場合、医療上の必要がある場合などの例外を除き、患者さんは追加の料金を支払う必要があります。 

 

なお、本制度は、国の公費負担医療制度やこども医療費助成などの地方の公費負担医療を利用する患者さんも算定対象となります

 

選定療養制度が導入された理由

選定療養制度が導入された理由は、ジェネリック医薬品の利用を推進することで、将来にわたって国民皆保険を維持するためです。

 

現在、日本の医療保険制度は、国民の保険料や税金によって支えられています。

しかし、高齢化の進行や医療技術の発展によって医療費が年々増加しており、このままでは皆保険制度の維持が困難です。

 

医療費を抑制するためには、先発医薬品よりも安価なジェネリック医薬品への置き換えが欠かせません。

選定療養制度の導入によって、さらなるジェネリック医薬品の普及が期待されています。

 

「特別の料金」の計算方法

「特別の料金」は、先発医薬品とジェネリック医薬品の価格差の4分の1に相当する金額を算定します。

例えば、先発医薬品の薬価が1錠100円、ジェネリック医薬品の薬価が1錠60円の場合、40円の価格差があるため、その4分の1にあたる10円が「特別の料金」です。 

 

ただし、特別の料金は消費税の課税対象であるため、実際に請求するときは消費税率をかけて計算します。

また、ジェネリック医薬品が複数存在する場合は、最も薬価が高いジェネリック医薬品との価格差が基準になります。

 

定療養制度における「特別の料金」の解説図

資料:選定療養制度における「特別の料金」について

出典:厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」

 

選定療養制度の対象薬剤

選定療養制度の対象となるのは、一定の条件を満たした「長期収載品」です。

すべての長期収載品が選定療養制度の対象となるわけではなく、以下の条件をすべて満たすものに限られます。

 

◆ジェネリック医薬品のある先発医薬品であること(バイオ医薬品を除く)

ジェネリック医薬品の収載年数や置き換え率が一定基準を満たしていること(ジェネリック医薬品が薬価基準に収載されてから5年以上経過している(置き換え率が1%未満のものを除く)」もしくは「収載5年未満でジェネリック医薬品置き換え率が50%以上」)

長期収載品の薬価が、最も高いジェネリック医薬品の薬価を超えていること(組成・規格・剤形ごとに判断)

 

なお、具体的な対象薬剤のリストは厚生労働省のホームページで公開されています。

薬価改定のたびに対象薬剤が見直される可能性があるため、定期的に最新情報を確認しましょう。

  

2.選定療養制度が薬局経営に与える影響

 

資料を見ながら電卓を操作するビジネスパーソン 

選定療養制度の導入は、薬局経営においてプラスの影響がある一方、従業員への業務負担の増加が懸念されます。

選定療養制度が薬局経営に与える影響について解説します。

 

 

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP