2022.07.05
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外国人介護人材の受け入れに関する課題を考察する

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ Vol.10

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ 

 

編集部より

来るべき”2040年問題”に向けて、介護事業所の経営はこれからさらに厳しさを増すと予想されています。いかにして生き残るか。経営者たちはその手腕が問われようとしています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」と称して時にピリ辛に、時に激辛に現状と課題、今後の展望を伝えていただきます。第10回は外国人介護士の受け入れに関する考察です。労働人口の減少が進む一方、超高齢社会に対応すべく高まる介護人材の需要。それを解決する施策の1つが外国人介護人材の受け入れです。コロナ禍で入国が難しい時期もありましたが、今後も日本での就労を目指して介護福祉士養成校に留学する人数は増加が予想されます。言語はもちろん、文化も宗教も異なる彼らが介護人材の1人として定着するために経営者としてやるべきこととはどのようなことなのでしょうか?

 

必要な介護人材確保は非常に困難な状況

 

我が国では2042年まで後期高齢者数が増加し続けると予測されています。そのため介護を必要とする人も今以上に増えることになるため、高齢者の暮らしを支えるために介護人材を2040年度までに、2019年度時点と比べて約69万人を追加で確保しなければならないとされています。しかし少子化が進行する我が国では、国内人材だけでその数を確保することは非常に厳しい状況にあります。

 

しかも、2039年に団塊の世代がすべて90歳に達し、団塊の世代を支えてきた次の塊である団塊ジュニア世代がすべて65歳以上に達します。しかし第3次ベビーブームがなかった我が国では、団塊ジュニア世代に続く次の塊の世代がありません。そのため2042年以降、後期高齢者や要介護者の数は減って、必要とされる介護サービス資源の量は、今より少なくて済むことになりますが、それ以上に生産年齢人口が減ってしまうために、今よりさらに財源と人材が不足するのです。このような介護人材不足は自然には解消されないために、何らかの対策が必要です。

 

 

そのためこの問題の解決策として国は、さまざまな医療・介護データを活用した重症化予防科学的介護に注目するとともに、テクノロジーを活用した介護業務の効率化を促進しようとしています。しかし人に替わって介護ができるロボットが存在しない以上、身体介護の大部分は人の手によって行われる必要があります。そのため何らかの手段で介護人材を増やしていく必要があり、外国人労働者の数を今以上に増やし、介護の場の戦力として定着させることが重要な課題です。

 

 

   

入管法改正後の外国人の介護人材の動向

 

外国人の介護人材を増やすために、国は入管法を改正して、在留資格に「介護」を加えることによって、外国人が介護福祉士として在留資格を得られるようにしました。さらに在留期間の5年を回数制限なく更新できるようにし、実質永住できるようにしています。(2017/9/1日施行)

 

これによって介護福祉士養成校に入学する外国人の数も増えています。日本介護福祉士養成施設協会調査によると、2020年4月に介護福祉士養成施設へ入学した外国人留学生(介護留学生)は2,395人と過去最高人数となり、入学者全体の34%を占めています。コロナ禍の入国制限の影響で、2021年はその数が2.189人と減っていますが、減少は最小限にとどまっているとも言え、今後は入国制限緩和に伴い、さらに外国人留学生が増えることが期待されています。

 

 

もちろん、すべての外国人留学生が日本への永住を望んでいるわけではなく、どれだけの外国人が固定化できるのかという課題は残されてはいますが、それらの留学生をはじめとした外国人が、介護サービスの場に張り付いていかないと、顧客がいてもサービス提供する人材がいないことで廃業につながりかねません。よって外国人が張り付いて定着するシステムを作り出すことは、介護事業経営上の重大な課題の1つです。

 

また日本人の人材だけで必要な介護サービスの量を確保できないということは確実な状況ですから、外国人の介護人材が確保できなければ、「制度あってサービスなし」という状態となり、大量の介護難民を生み出す懸念が生じますので、外国人が定着できるようにすることは、介護政策としても求められていくでしょう。

文化を尊重しながら、ルールを遵守させる

 

同時に文化や生活習慣が違う異国で働く人々への配慮が必要だといっても、職場には職場としてのルールがありますから、労働契約上の「労働義務」・「職務専念義務」・「安全配慮義務」等もきちんと遵守するように説明・理解に努めなければなりません。例えば、信仰上から特定の時間にお祈りをする習慣のある人には、勤務時間中にその時間を取ることを認める必要があるでしょう。場所づくりの配慮も必要になると思います。

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