2022.05.22
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介護業界における外国人採用のリアルとは?
施設に聞いた「外国人介護士の活躍」と「定着のコツ」

外国人採用のリアル

 

少子高齢化で「拡大する需要への対応」と「労働力不足の解消」というふたつの課題に直面している介護業界では、外国人材採用に活路を見出そうという動きが着実に広がりつつあります。

今回は、2年前から複数の施設で海外からの技能実習生を受け入れている社会福祉法人「昭徳会」の法人本部事務局の纐纈(こうけつ)純司さんと、技能実習生受け入れのきっかけをつくった同法人「特別養護老人ホーム 安立荘」施設長の中村範親さんにお話をうかがいました。

昭徳会では現在、特別養護老人ホーム3施設、ケアハウス1施設の他、デイサービスセンター1事業所で、ベトナムとインドネシアから来日した技能実習生が活躍しているとのこと。外国人材を受け入れるまでの経緯から、具体的に取り組んだ受け入れの準備、そして定着のコツなど、様々な疑問について、纐纈さんと中村さんのおふたりにお答えいただきました。

【話し手】

 

纐纈 純司 さん
社会福祉法人「昭徳会」 法人本部事務局 人事課長

同法人における「外国人雇用推進委員」のメンバーを務める。高浜地区における技能実習生受け入れでは、受け入れ準備や書類作成など担当。ベトナム人技能実習生の採用時には現地へ行き、採用試験を実施した。

 

中村 範親 さん

特別養護老人ホーム 安立荘 施設長

昭徳会で初めて技能実習生の受け入れた特養 高浜安立荘で、施設長として現地での採用活動を含む受け入れ準備全般に関わったのち、2021年4月に特養 安立荘に異動。ベトナム人技能実習生、インドネシア技能実習生の採用にあたり、施設内の体制整備や実習生の住居確保、生活支援などに取り組んでいる。

現場からの声が、外国人材受け入れの最初のきっかけに

― 昭徳会様では特別養護老人ホームやデイサービスセンターなど、様々な施設で技能実習生を受け入れていらっしゃいますが、その最初のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

 

中村:私が以前に在籍していた特別養護老人ホーム「高浜安立荘」に、施設全体で取り組んでいた「自立支援介護(おむつ外し)」 の取り組みに特化した海外の人材を現場に迎えたらどうかという提案があったんです。

 

今後は日本人スタッフの採用がますます難しくなるという危機感は現場にもありますが、その時の提案はどちらかといえば海外の人材との交流や、ネットワークの構築を通じて、それぞれにとってメリットのある仕組みをつくりたいという、国際貢献色の強いものでした。私自身も共感できる内容でしたので、法人本部にもかけ合ってみることにしたのが最初のきっかけです。

  

※「自立支援介護」で水分、栄養、運動、排便の4つの基本ケアを繰り返し実践することにより、身体的自立、精神的自立、社会的自立の回復を図る取り組みのこと。特徴的な取り組みに「おむつ外し」、「歩行・排泄の自立再獲得」、「自力摂取の再獲得」などがある。

 

― 外国人材を介護の現場に迎えることに不安はありましたか。

 

纐纈:それはやはりありました。様々なご利用者様と接する介護職では、きめ細かく、そして根気強いコミュニケーションが欠かせません。当初は技能実習生の日本語能力でその対応ができるのかが不安でしたね。

 

中村:言葉の壁の他にも、宗教や文化、生活様式の違いも心配でした。それらが現場にどんな影響をもたらすかについては、全く予測できていませんでしたね。

 

― それでも技能実習生を迎えた理由は?

 

纐纈:将来、介護業界の人手不足がさらに深刻化することは明らかですので、何か新しいことをやらねばという危機感があったのは間違いありません。今、技能実習生を受け入れることは、いずれ介護のあらゆる現場で外国人材の力が必要になる時などにも役立つ経験や知見を得ることにも繋がると考えていました。

当初の期待を大きく上回る活躍をみせる技能実習生たち

当初の期待を大きく上回る活躍をみせる技能実習生たち

 

― 現在、昭徳会様には何名の技能実習生がいらっしゃるのでしょうか。

 

纐纈:昭徳会の全施設合わせて、ベトナム出身者が7名、インドネシア出身者7名の計14名が活躍しています。

 

― 最初に技能実習生を受け入れてみての感想はどのようなものでしたか?

 

中村:結論からいえば、技能実習生の活躍ぶりは当初の期待以上でした。非常に優秀なメンバーが集まってくれたので、日本語でのコミュニケーションにも全く支障はありませんでした。最初は心細さなどもあったでしょうが、業務や環境にもしっかり馴染んでくれ、今では技能実習生全員が現場にとって欠かせないメンバーになっています。

 

纐纈:一期生は皆さんベトナムからの実習生だったのですが、まだ新型コロナウイルスの感染拡大前でしたので、私も中村さんとともにベトナムを訪問し、直接面談を行いました。メンバーの選抜やテスト自体は現地の送り出し機関や監理団体が担当してくれたのですが、非常に厳しい基準で選ばれているようで、本当にレベルの高い人材ばかりで驚きました。私たちとの面接も、オール日本語で問題なく行うことができたんです。

 

中村:技能実習生は日本で働くという目標を持って、しっかり準備していますので、来日してからも業務や日本語学習などあらゆることに真剣に向き合う人が多いですね。挨拶などもきちんとしていたり、その生活態度や仕事ぶりには、日本人スタッフのほうが学んだり、刺激を受けることも少なくありませんでした。

 

― 現在は技能実習生にどんな業務を任せているんですか。

 

中村:基本的には日本人スタッフとほとんど同じ仕事を担当してもらっています。ただし、あくまでも実習生という立場ですので、何かあればすぐにかけつけることができるような体制づくりには配慮しています。

 

― 入浴介助など、具体的な介護方法などの指導はどのように行っていますか。

 

纐纈:環境や設備に違いがあるため、基本的には施設ごとに行っています。介護の仕事は実際に現場でやってみて覚えるのが基本ですので、研修もOJTが中心です。

 

中村:研修の内容も、日本人の未経験者の場合とほとんど変わりません。むしろ技能実習生の場合は、送り出し機関や監理団体などで介護についても基本を学んでいるので、成長が早い印象があります。

 

― 懸念されていた、施設の利用者と技能実習生のコミュニケーションに関してはいかがですか。

 

中村:全く問題はありません。多少、会話にたどたどしいところがあっても、丁寧に相手の意を汲みながら話をしてくれるので、ご利用者にもきちんと伝わっているようですね。

纐纈:一方、日報などの作成には苦労しているという声は、技能実習生本人たちからもあがってきています。細かい書式やルールを理解するのは、やはり難しいようですね。そのため各施設では、日報は日本人スタッフが書くといったそれぞれの役割分担が、自然とできてきています。

  

 

 

 

 

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