2023.06.12
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令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その2)

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.2

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

  

  

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第2回は通所介護サービス、訪問介護サービス、小規模多機能型居宅介護、定期巡回随時対応型訪問介護看護といった、介護サービスの流れのまとめです。

   

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

 

  

  

グラフ:サービス種類別介護費用額の推移

   

出典:社会保障審議会介護保険部会(第92回)資料 令和4年3月24日

     

5. 通所介護サービスの動き

通所介護は平成20年代にその事業所数が最も急拡大した介護サービスである。地域密着型を含めると44000事業所となり、その数は、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートの店舗数にほぼ匹敵する。その先鋒となったのが、民家を活用した定員10人程度の小規模デイサービスであった。

  

民家を賃貸することで設備投資が大幅に抑えられ、定員が10人までは看護職員の配置が不要であるために、人件費も低く抑えられた。さらには介護報酬単位も、非常に高く設定されていたために費用対効果の投資効率が非常に高い。これらが、新規参入者にとっての最大の魅力であったのだ。

  

この民家型の小規模デイサービスにお泊まりサービスを組み合わせる事で、開業後の稼働率が短期間で高まり経営が安定した。お泊まりデイサービスは、フランチャイズ展開が加速して、多くのFC会社が立ち上がり、事業所数の拡大を後押した。しかし、市場の急成長によって一部の悪質な運営をする事業所の存在が問題視されるようになり、お泊まりサービスのイメージ悪化に繋がった。その急拡大は、行政の目にも触れるようになり、規制強化に向かうこととなる。

  

平成27年の制度改正で、お泊まりサービスを提供する場合は届出が必要となり、同時にガイドラインも公表された。これによって、それまでグレーゾーンのサービスであったお泊まりサービスが正式に認められたと共に、行政の規制が入る結果となる。

さらに、平成27年介護報酬改定で時間区分か変更され、介護報酬が大きく減額された。

  

平成28年からは、定員が18人以下のデイサービスは地域密着型通所介護となり、市町村の管理下に置かれることとなる。そして、お泊まりサービスを直撃したのが、消防法の改正であった。民家を使った事業でもスプリンクラーの設置が義務化されたのだ。

  

民家へのスプリンクラーの設置には、400万円程度の設備投資が必要で、介護報酬が大きく減額された影響もあり、資金的な余裕が無いケースが多く見受けられ、お泊まりサービスは減少に向かうこととなる。

          

6. 訪問介護サービスの動き

訪問介護サービスは介護保険の創世記に於いては、間違いなく花形のサービスであった。ホームヘルパー資格は主に主婦層で注目の資格となり、専門学校には多くの受講者で一杯の状態となる。しかし、今、訪問介護の有効求人倍率は15倍を超え、介護福祉の倒産件数でも断トツのトップである。その原因が慢性的な人手不足だ。

   

訪問介護職員の平均年齢は、他のサービスに比べて高くなっている。これは、介護保険創世記にヘルパー資格を取ったスタッフが、これまでの訪問介護を支えてきたことを意味する。言い換えると、新しい資格者が増えていない現状がある。

  

訪問サービスを担当する職員は初任者研修修了者以上の資格が必要だ。そのためには、時間と費用を掛けることが求められる。しかし、デイサービスや介護施設の介護職員は資格が求められることはない。

これから介護の仕事をしようとする者は、通常は資格が無くても仕事が出来る介護施設などへの就職を第一に考える。その結果、初任者研修修了者以上の有資格者が中々誕生しないという現状となった。

  

介護施設などに就職した者は、実務者研修を経て介護福祉士を取るコースを辿ることが出来るため、そのまま定着することも多い。その結果、なかなか訪問介護に人材が廻ってこない。訪問介護サービスは、他のサービスに比べて小規模零細の事業所が多いのが現状だ。

  

経営者の高齢化に伴って、後継者の問題も浮上している。それらの諸問題を、訪問介護業界として、どう乗り切っていくのか。大きな課題が表面化している。 

     

7. 小規模多機能型居宅介護の創設

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