2022.08.22
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「地域住民」と「健康」をつなぐ薬剤師の力
 ~薬剤師が地域に飛び出すワケ~
―――薬局ERUMINA(エルミナ)マルシェ開催レポート

「地域住民」と「健康」をつなぐ薬剤師の力 ~薬剤師が地域に飛び出すワケ~




薬剤師発の地域イベント開催!

  

地域包括ケアシステムの実現に向け、薬局は地域住民・地域の医療機関との連携がより求められています。しかし、いざ地域に出るように言われても、具体的にどのように動けばいいのか戸惑う薬剤師の方も少なくないことでしょう。そんな中、地域で薬剤師ができることはないかと立ち上がり動き出した薬剤師たちがいます。

 

去る6月25日(土)、荒川区の有志の薬剤師・保健師等が集まって結成された「りんごプロジェクト」(代表:OGP薬局薬剤師 鈴木怜那氏)が主催し、ワークショップや展示販売等をメインとした「ERUMINAマルシェ」がARAKAWA ii VILLAGE(荒川区)で開かれました。同プロジェクトでは2021年10月からこれまでに7回のイベントを企画運営しており、今後一般社団法人化を目指して今回のイベントはその集大成と位置付けられたものです。
 
 

会場となったARAKAWA ii VILLAGE
多くの人でにぎわった、会場のARAKAWA ii VILLAGE

 
 

女性ヘルスケア講座を通して「わたしのからだを知る」をサポート

 

同プロジェクトの中心メンバーである、OGP薬局荒川店薬剤師の鈴木怜那さんは、2021年10月に開催された第5回薬局アワードで「地域の女性と子どもの健康と未来をサポートしたい」という考えをベースにした活動についてプレゼンテーションし、最優秀賞を受賞された薬剤師界の注目株。
 

  

OGP薬局荒川店薬剤師の鈴木怜那さん

  

 
鈴木さんは、女性のヘルスケアに着目し薬局内や地域内でこれまでさまざまなイベントを実施してきました。今回は「更年期」をテーマに「自分のために知っておきたい更年期のこと~わたしのからだはわたしのもの~」と題して6名の参加者に向けて更年期症状のポイントや、更年期に伴う心の変化などについて解説しました。
 
 

「更年期女性ヘルスケア講座」で講演する薬剤師の鈴木怜那さん
「更年期女性ヘルスケア講座」で講演する薬剤師の鈴木怜那さん
思春期保健相談士・スポーツファーマシスト・女性の健康アドバイザーの資格も保有している
 

講座を通じて、これまでポジティブに語ることが避けられがちな更年期や性と生殖に関することを、共に考え理解していく社会を目指していくと話しました。

 

 

「日本酒」に「クラフトコーラ」?意外なキーワードで健康への関心を呼び寄せる

 

また、ワークショップでは「薬剤師×日本酒」「薬剤師×クラフトコーラ」「薬剤師×こども」といった、これまでの健康イベントでは聞かれることのなかった個性的なキーワードが並び、思わず「行ってみようか」となるような仕掛けがあることが特徴です。

 

薬剤師のひじきさん・sainokuniさんは、日本酒好きを活かし「薬剤師×日本酒」のワークショップ講師を担当。早々に定員に達したという同ワークショップは、アルコール依存症に関する講義の後、6種類の日本酒を紹介しながら味わいの違いや、化学式を用いたうま味の解説が展開され、参加者は興味深く聞き入り味わっていました。

 

特段健康に関心を持っていなかったとしても、日本酒やクラフトコーラをきっかけに健康について考えるのもありじゃないか、そんな思いから企画されました。日本酒をきっかけに地域住民と関わることで、その人が潜在的に持っている健康課題が見つかるかもしれないし、話を聞いてみたら実は医療につなげた方がいいケースかもしれない。「地域住民と医療機関とのハードルを下げたい」というメンバーの思いがそこには込められています。これまで健康情報が届きにくいとされていた若い世代にも足を運んでもらいやすく設計され、いい意味で医療のイベントの雰囲気を感じさせない空間づくりが施されていました。

 


 「薬剤師×日本酒」講座で試飲前にアルコール依存について講義する ひじきさんとsainokuniさん
「薬剤師×日本酒」講座で試飲前にアルコール依存について講義する
ひじきさんとsainokuniさん(いずれもTwitter名/写真中央)

   

 

子どもから大人まで楽しめる”マルシェ”

  

また「こども薬剤師体験」では、単に白衣を着て薬剤師体験をするだけにとどまらず、そこから「薬育」へとつなげることで、子どもたちの健康への関心・感度を高めることにも結び付けていると、講師を務めたNPO日本薬育研究会代表の薬剤師の小路(しょうじ)晃平さんは話しました。

 

他にもハンドマッサージ(写真左上)や漢方茶の試飲・販売(同右上)、手作りマスクチャームの販売(同左下)、生理用品の展示(同右下)など、「マルシェ」の名にふさわしく、健康に関連したバラエティーに富んだ展示・販売がされていました。
 
 

子どもから大人まで楽しめるマルシェ 
 

さまざまな種類のものが展示・販売され、訪れた人たちが交流する雰囲気は「カフェにくるような感覚で足を運んでもらう場」という意味の「ERUMINA(エルミナ)」にふさわしい場となっており、6月とは思えない暑い1日でしたが、会場も熱気にあふれ盛り上がりをみせました。
 

また、会場の外では「調剤喫茶」という名前で練馬区を拠点に自作の喫茶屋台を引きながら、住民に漢方茶をふるまい健康相談に応じているという、ユニークな活動をしている石丸勝之さんも漢方喫茶を出店。
 
 

オリジナルブレンドの漢方茶の試飲販売を実施した薬剤師の石丸勝之さん

 オリジナルブレンドの漢方茶の試飲販売を実施した薬剤師の石丸勝之さん

 

これまでの地域健康イベントとは違った切り口で開催されたこのようなイベントが続いていくことで、薬剤師や保健師の活動が少しずつ地域に根を張り、地域住民の身近な相談先としてその価値を高めていくのではないでしょうか。今後もりんごプロジェクトの模索と挑戦は続きます。
 
 

主催した「りんごプロジェクト」メンバーの皆さん主催した「りんごプロジェクト」メンバーの皆さん

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