2020.10.20
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部下の成長と数値目標の達成が誇り
~ディサービス・訪看副社長兼事業部長~

実践者に聞く!
デキる介護管理職のモチベーションアップ術 vol.1

 

編集部より

ますます需要が高まる介護現場において、施設管理やスタッフ勤怠管理など管理職の方たちに求められるマネジメントスキルも高まっています。しかし、必ずしも「管理職になりたくてなった」とは限らず、また、十分な管理職教育を受けられるとも限らず、孤独になりがちな介護管理職に向けたマネジメントに関する情報はこれまで多くは語られてきていません。

本連載では、看護師・保健師を経て現在は人材育成・組織開発コンサルタントとして活躍されている久保さやかさんが、「介護管理職のモチベーション」をテーマに、医療介護業界で活躍する管理職や経営者に実際にお話を伺いながら、そのありかを探っていきます。介護業界の管理職の楽しさがわかる、明日からのモチベーションが上がる、そんな気持ちにさせてくれる全6回のコラムです。

 

執筆/久保 さやか(thoughts代表/看護師・保健師)

編集/メディカルサポネット編集部

「介護業界の管理職のモチベって、なんだ?」

のっけから失礼します。

大学病院看護師→産業保健師→ビジネスパーソン→人材育成・組織コンサルタントという異色の経歴を持ち、現在はフリーランスとして働いている久保と申します。(気になる経歴はこちらから→「+αで活躍する医療従事者」)ケアマネジャーさんや介護に携わる方への研修なども行っている関係で、様々な介護現場のお悩みを聞く機会も多々あります。

 

 

 

「モチベーションが上がらない」

 

働く人に関わり続けていると、どこからか必ず聞こえてくる言葉です。企業研修の中でもよく取り扱われるテーマでもあり、経営学でも古くから扱われているテッパンの内容でもあります。

 

私が看護師だった〇十年前、そのモチベーションは患者さんにありました。当時はどんなに荒れ狂う病棟の中で残業をしても、22時に重い足取りで夜勤に向かうのも、支えてくれていたのは患者さんからの「ありがとう」や「助かったわ」のひとことでした。看護師、介護福祉士、理学療法士etc様々な専門職が働く、医療介護業界。イチ担当としての専門職のモチベーションは、対患者さんや対利用者との1対1の関係性に付随するものが多いとイメージすることができます。

 

反面、組織や人を動かし、あれやこれやの苦労をする管理職はどうか。

「管理職って大変そう」「管理職になりたくない」といった、管理職に対するマイナスの言葉も多く聞かれるのも事実です。定着や離職防止のために、スタッフや部下に関するモチベーションを高める特集は多いのに、管理職そのものの姿や内面はなかなか出てきません。

 

介護業界管理職のモチベーションを探れ!

 

管理職のモチベーションは、一体どこにあるのでしょうか。

今回の連載では、モチベーションについて、医療介護業界で活躍する管理職や経営者に、実際にお話しを伺いながら、そのありかを探っていきます。

 

ディサービス副社長兼事業部長 ナオヤさんの場合

 

今回お話を聞かせてくれたのは、機能訓練型ディサービスの理学療法士から、管理職を経て、今年の春に副社長になったナオヤさん。爽やかな風貌の中に、実直さと芯の強さを感じさせる若きリーダーは、どこにモチベーションをもって、日々働いているのでしょうか。


「偉くなりたかった」 理学療法士から管理職、そして役員へ

ディサービスで理学療法士として働いていた頃、自分は何人の利用者に関われるのか計算しました。30分で1人担当するとしたら、1日8時間で担当できる数は、16人。これってとても少ない。ディサービスの利用者は、ひと施設で100人。今は20施設の管理もやっているので、間接的にはなるけれど、2000人の利用者に係ることが出来ます。

 

そう考えたのは、3つ理由があって。まずは、今後高齢者の人数が増えて、専門職の数が足りなくなること。自分の価値や給料を考えた時に、生産性は高い方が良いこと。多くの人に関わって、影響を与えるには、それなりの名声や地位が必要だということ。

担当者だった時、偉くなりたかった。偉くなったら、みんなが話を聞いてくれて物事が進む、やりたいことも出来るようになるって思いました。だから、管理職を目指しました。管理職になった今は、偉くなったからといって、必ずしも言うことを聞いてくれるわけじゃないと分かったんですけど(笑)


自分の仕事に誇りを感じる瞬間 

今の施設のディサービスの利用者は約2000人。全従業員数は260人。利用者に健康を提供するということも勿論ですが、「従業員を支えていること」に誇りを感じます。

新型コロナの時も、雇用を守るという強いメッセージを従業員に伝えました。管理職・役員として、従業員に姿勢を示すことやビジョン・将来を見せることはとても大切だと思っています。

インフルエンザの予防接種の補助も、最近見直しました。役員になって、従業員のためにヒト・モノ・カネをどう使うか。その判断が出来ることや、ジャッジのスピードが速くなったことは、仕事のやりがいに繋がっています。


モチベの維持・立て直し

そうは言っても、おちる時はあります。特にトラブルや、従業員から退職を申し出られた時。そういう時は、後任体制や、やらなきゃいけないことをやっていくうちに、落ち込みが薄れて、時間が解決するというか。誰かに相談して共有出来ているのが良いのかも。

昔もっとヤバい状況を経験しているんですよね。その時と比べれば、まだ大丈夫、まだいけると自分の中で、分かっているのも大きい。

モチベーションの維持としては、色々な人に会うようにしています。社外では、理学療法士の繋がりとかもあるし、理念がある人や何かを成し遂げたいと思っている人にも、積極的に繋がろうともしています。社内でも、人と話をして、不満を聞きます。不満を聞くのは課題を見つけることだと思っているので、苦になりません。


「働いていて毎日楽しい」 そう言い切れる強さの裏側

今、幸せです。毎日楽しく働いています。

従業員との面談も、結構頻回です。相談があるとか言われると、自分、頼られているなーって思うんですよね。部下の成長は、とても嬉しいです。送迎の手伝いをしている時に、利用者から部下の良い評判を聞くことがあった時とか、もう最高。

あとは、目に見える数値の成果ですかね。利用者の数とか、売上とか。

「はじめは偉くなりたかった」そんな過去の自分も、肯定できていて、後悔はしていない。経験って、大事だなと思います。

こんなに部下に楽しそうに向き合う管理職がいるなんて!

部下育成は、管理職の主要な業務の1つではありますが、苦手としている人がとても多い印象にあります。マネジメントの定義の1つに、「人を通じてことを成す」という言葉があります。「自分」が主役ではなく、「他人」を主役にすることができ、そこに喜びを見出すことができるかどうか。まずここが、デキる管理職になるためのポイントなのかもしれません。

 

また、過去からの経験を肯定的にとらえ、失敗経験や苦い思い出も今の“糧”としていること。ナオヤさんは、自分を励まし、やる気を調整するために、どんな時に自分はアガるのかを知り、楽しく仕事をするために役立てていました。

 

モチベーション研究は数多ある中で、かの経営学大家である金井先生は、その著書の中で言っておられます。

 

汝、自分のモチベーションに持論を持ち、今後の役に立てるべし (超意訳です)

参考:金井壽宏 働くみんなのモティベーション論 日経ビジネス人文庫  

 

まさに、モチベーションの持論を持つことの強さを目の前に見た気がしました。 新型コロナしかり、慢性的な人手不足や定着率の低さなど、とかく、介護業界は暗い側面がピックアップされがち。ナオヤさんのモチベーションアップ術からは、この先の明るい未来を見たように思いました。

プロフィール

久保さやか(くぼ・さやか)
THOUGHTS代表。看護師・保健師、人材育成・組織開発コンサルタント。
慶應義塾看護短期大学卒業後、慶應義塾大学病院混合病棟勤務を経て、慶應義塾大学看護医療学部に編入学し保健師免許取得。大学卒業後は、大手小売業にて人事部所属の産業保健師として産業保健体制の立ち上げに携わる。その後、弁当チェーン運営会社の総合職として役員秘書、人事部、経営戦略部などで勤務する。現在は中小企業の産業保健師として勤務すると同時に、医療職やビジネスパーソン向けの人材育成・組織開発コンサルタントとして活躍している。


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