2019.01.31
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“兼務先”データ活用で医師需給分析の精度向上を
日医総研、医師調査で指摘

メディカルサポネット 編集部からのコメント

医師の兼務は珍しくありません。病院やクリニックで「〇曜日の午後は〇〇大学の先生による診察」という案内を見かけることが良くあります。日本医師会総合政策研究機構は1月22日に前田由美子女史によるリサーチエッセイ『医師偏在の解消にむけたデータの活用について―「医師・歯科医師・薬剤師調査」をそのまま活用することの限界-』を公開しました。このリサーチエッセイは厚生労働省が2年に一度公表する医師・歯科医師・薬剤師調査に基づいています。データの抽出定義は状況によって異なります。例えば、2016年調査から兼務先(従たる従業地)も調査されています。データを用いた研究には「どのようなデータなのか」「調査方法に変更はないか」のチェックが欠かせません。

 

 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は2016年の「医師・歯科医師・薬剤師調査」(医師調査)を基に医師の兼務状況を分析した「リサーチエッセイ」を公表した。それによると、主な勤務地以外に大学病院から関連病院への派遣など「従たる従業先」(兼務先)がある医師の割合は14.8%だった。こうした結果から、大学病院のある二次医療圏や市町村などが実態に合った医師を確保するには、兼務先データの活用が必要だと指摘している。【吉木ちひろ】

 

 医師調査は厚生労働行政の基礎資料を得ることを目的として、2年に1度実施されている。16年の医師調査を基にした分析結果では、医師31万7804人のうち兼務先がある医師は4万6978人(14.8%)だった。兼務先の内訳は病院(58.5%)、診療所(30.7%)、介護老人保健施設(4.4%)など。

 

 リサーチエッセイでは、医療需給に関するさまざまな分析において、医師の主な勤務地だけが着目されてきたことを「限界」と表現。特に、大学病院のある二次医療圏などでは、医師の兼務状況を把握する必要があるとして山口大医学部附属病院の所在地である宇部市のデータを例示した。

 

 同市の医師数は835人、このうち市外に兼務先がある医師は118人だった。さらに、118人全員が週5日のうち1日兼務先で働いていると仮定した場合、市外に流出している医師は常勤換算で24人(市内の医師数に対して2.8%)とし、「他の地域でも、大学病院所在地では医師数が多いが、当該地域外への兼務分を割り引いて医師数を把握する必要がある」と指摘している。

 

 このほか、都道府県別の医師の兼務状況も分析。県外で兼務する医師よりも兼務で県内に来る医師の人数が多い埼玉県では、埼玉県を主な勤務地としている医師数より、実際に県内で稼働している医師数がおよそ3%多くなると計算。「二次医療圏別、市区町村別、診療科別に細分化して計算していくと、この乖離はさらに広がる」とコメントしている。

 

 

 出典:医療介護CBニュース

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