2019.01.28
5

高齢者の医薬品適正使用指針、各論編は年度内にも
厚労省公表へ、「患者向け」も検討課題に

メディカルサポネット 編集部からのコメント

1月25日に第9回高齢者医薬品適正使用検討会が開催され、高齢者の医薬品適正使用の指針(追補)(案)について意見が交わされました。医療用医薬品の正しい理解と、重大な副作用の早期発見などに役立ててることを目的とした指針で、高齢者の薬物療法の適正化(薬物有害事象の回避、服薬アドヒアランスの改善、過少医療の回避)を目指し、高齢者の特徴に配慮したより良い薬物療法を実践するための基本的留意事項をまとめたガイダンスです。服用する薬剤数が多いことに伴い、薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態の回避が求められます。医療機関・薬局の横のつながりだけでなく、患者も「言われたから飲む」のではなく「理解して飲む」という姿勢が必要になってきます。

 

 厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会(座長=印南一路・慶大教授)は25日の会合で、ポリファーマシーを解消するため、高齢者の療養環境ごとに薬物療法の留意点などを盛り込んだ指針・追補案をおおむね了承した。この日の意見を踏まえて案を修正した上で、座長一任で指針の各論編をまとめる。厚労省は年度内の公表を目指す。【松村秀士】

  

高齢者医薬品適正使用検討会(25日、東京都内)

  

 追補案は、同検討会の下部組織であるガイドライン作成ワーキンググループがまとめたもので、厚労省が2018年5月に公表した「高齢者の医薬品適正使用の指針・総論編」を補う各論編の骨子だ。

 

 それによると、各論編は医師や歯科医師、薬剤師を主な利用対象としている。また、高齢患者の療養環境について、▽外来・在宅医療・常勤医が配置されていない特別養護老人ホームなど▽急性期後の回復期・慢性期の入院医療▽常勤医が配置されている介護施設など―の3つに分類。それぞれの療養環境での処方内容の確認や見直しの考え方、別の療養環境への移行時・移行後の留意点などを記載している。

 

 例えば外来などの場面では、定期的に通院する患者でも他院での治療や処方の経過をその都度報告するとは限らないことから、医師らはそれらを定期的に確認する必要があると指摘。在宅医療の開始に当たっては、お薬手帳などを活用して全ての処方薬を把握する必要性も強調している。

 

 また、高齢患者に歩行障害や認知機能障害がある場合、予防のために使用している薬剤によるリスクが大きくなることがあるとし、「薬剤によるリスク・ベネフィットバランスを考えながら治療方針を見直すことが重要」としている。

 

 さらに、外来・在宅医療への移行時での留意点として、退院前カンファランスなどを活用して高齢患者の治療状況や処方の理由を病院の専門医から的確に引き継いだ上で、疾患と療養の状況を総合的に評価して退院後の生活に合わせた薬剤の処方を検討するよう、かかりつけ医に求めている。

 

 このほか、各療養環境で共通する留意事項として、▽アドバンス・ケア・プランニング(ACP)が実践されている場合での薬物療法の適正化▽薬物療法以外の対応の重要性▽多職種の役割、連携―などを挙げている。

 

■名称は「各論編(療養環境別)」に

 

 追補案に対して特に反対意見は出なかったが、一部の委員から、患者を利用対象とした指針も作成すべきだといった意見が出た。今後の検討会での課題となる見通しだ。この日の会合では、総論編を補う指針の名称を「各論編(療養環境別)」とすることも決めた。

 

 

 出典:医療介護CBニュース

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP