2023.08.18
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第183回:オンライン診療で,うまく診察・診断するコツ─患者と一緒に見せ方・映り方を工夫しよう!

メディカルサポネット 編集部からのコメント

堀越健 堀内内科クリニック副院長が、現在広まりつつあるオンライン診療のコツをまとめています。実際に触診できない、匂いを確認できないなど、限られた状況の中で、具体的な情報収集が求められます。また、視診がポイントとなりますが、確認の際の丁寧な指示が重要と堀越さんは解説します。

 

 

 

 

SUMMARY

オンライン診療のコツは,事前問診を活用した具体的な情報収集から始まる。さらに視診を重視した患者の状況把握,デバイスを活用したバイタルサイン確認を行うが,いずれも丁寧な指示を行うことが重要である。

 

KEYWORD

視診

オンライン診療では直接触れられないため,視診が基本。患者の様子や表情から症状を読み取り,適切な角度・距離で画面越しに確認する。

 

堀越 健(堀越内科クリニック副院長)

 

PROFILE

川崎市立多摩病院を経て多摩ファミリークリニックで家庭医療を学び,2022年から地元,群馬県高崎市で堀越内科クリニック副院長として従事。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。

 

POLICY・座右の銘

人間五十年 下天の内をくらぶれば,夢幻のごとくなり

 

 

近年,オンライン診療が急速に普及し,医療のアクセス性と効率性が向上しているが,オンライン診療に自信を持てない医療者も決して少なくない。オンライン診療は,単に対面診療や電話応対をリアルタイムのビデオ通話に置き換えたものではなく,独自の環境と可能性を持った新しい診療形態と言える。今回は,明日の日常診療で活用できることを目標に,オンライン診療での具体的な診察と診断を行うためのポイントを解説していく。

 

1 受付から事前問診まで

現状のデジタル環境では,オンライン診療が適していない症状・症候がまだ多く存在する(図1)1)。まずは主訴や受診理由を確認し,オンライン診療に適切な状況かどうか判断することが重要である。対面診療や緊急受診が望ましいと判断された場合は,速やかにその旨を伝え,受診を促すことになる。その場合に自施設への受診がよいのか,他の医療機関を紹介すべきかなど,受付段階から,事務や看護師など医師以外の職種の役割が重要であり,事前に不適切な相談があった場合の対応方法を相談しておくことが望ましい。

 

 

事前問診でオンライン診療の適応を判断するためには,できるだけ具体的な情報が必要となる。たとえば,「咳があるか」「喉が痛むか」「だるさはあるか」といった質問では,緊急性の有無を判断することは難しい。いつもの対面診療であればそのまま直接本人の様子を確認することができるため,直感的に重症度・緊急度を把握することにつながるが,オンライン診療ではまだ難しい。そこで,「息が苦しいと感じるか」「水分が飲み込めないほどの咽頭痛があるか」「直接医療機関への受診が困難なほどだるくなっていないか」といった,重篤な疾患や緊急性の高い疾患が隠れている可能性を考慮した事前問診が求められる。

 

2 問診・身体診察のコツ

対面診療と同様で,診察の導入には患者から広く話を聞く姿勢が重要である。その後,事前問診で得た情報や不足していた内容を具体的に確認していく。事前問診でオンライン診療が適切であると判断していた場合でも,実際の問診と診察を行いながら,常にオンライン診療を行うことが適切かを意識する必要がある。

 

オンライン診療では,直接患者に触れることができないため,「視診」が基本となる。患者の様子や表情,言動から症状や状態を読み取り,適切な角度や距離で画面越しに身体の状況を確認していく。ここでは感冒症状を疑う主訴を想定して解説していく。

 

3 バイタルサインの確認方法

体温計やパルスオキシメーターなど家庭にあるデバイスを最大限に活用する。ただし,デバイスが自宅にあっても使い慣れていないと情報を得られない。たとえば,パルスオキシメーターが正しく使用できないと,低いSpO2が表示され,それを理由に不必要な救急受診を求めてしまうことにもつながる。「爪を上に,指を奥まで差し込む」「動くと測定できないので,じっとする」「手先が冷たいと測定できないので,温めておく」「数値が低くてもじっと待てば上がるので焦らない」といったように,ここでも具体性のある指示が必要である。

 

4 呼吸状態・咽頭所見の確認

患者に首や鎖骨を見せるように襟元を開かせ,自然なペースで呼吸を続けさせる。鎖骨周囲の上下動を観察することで,呼吸回数や速度,呼吸補助筋の動きを確認していく。

 

カメラ操作や指示に習熟が必要だが,広角カメラ・照明機能を持つスマートフォンを活用することで,咽頭所見を確認することは可能となる。試しに自分のデバイスのカメラを自分に向け,30cmほど話した位置から撮影してみるとよい。手持ちのデバイスでどのような写り方をするのか,実際に体験してみることをお勧めする。

 

ほかにも,指示のもと患者に歩行させる,顔面や四肢の動きから神経症状の有無を確認するなど,目的を持った指示により情報を集めることが可能である。ただし,皮疹や外見上の変化については,患者側のデバイスの画質に左右されてしまうため,オンライン診療を行う上では,必要に応じてより高画質の画像の提出を依頼するなど,工夫を必要とする。

 

医師と患者が1対1で行うことが多いが,在宅療養中の高齢者など自力でオンライン診療を行う環境を構築できない場合に,医療スタッフが訪問してオンライン診療をサポートしてもらう場面も存在する。この場合は医師が現地の医療者へ直接指示を伝え,情報を集め処置を実施させることが可能となる。

 

5 まとめ

オンライン診療の独自の環境へ対応するための実践的なポイントを提案した。具体的で丁寧な説明と指示によって,現在はオンライン診療では確認が難しい身体所見も,デジタルデバイスの進歩によって状況は変わっていくものと思われる。今後もオンライン診療の進化に対応した診察技法を編み出し,皆さんと研鑽を続けていきたい。

 

◀文献▶

1) Schmidt JM:NEJM Catalyst. 2020;March 25.

 

【参考】

▶プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド.

https://www.pc-covid19.jp/files/guidance/online_guidance-2.pdf.pdf

▶オンライン診療診断学ことはじめ.※実際に診療する様子を紹介している。ぜひ参考にして頂きたい。

https://www.pc-covid19.jp/telemedicine-diagnosis.htm

▶黒木春郎:オンライン診療を始める前に読む本. 中外医学社, 2021.

   

   

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 出典:Web医事新報

  

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