2023.07.06
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【小濱道博】LIFEフィードバック開始で介護事業所が負う責務 今後に向けて今から始めるべきこと

メディカルサポネット 編集部からのコメント

2023年6月30日から、科学的介護情報システムのLIFEで、事業所別と利用者別のフィードバックが開始されました。

小濱介護経営事務所の小濱道博さんは、本文中でLIFEのフィードバック開始によってデータから何が読み取れるようになるかを解説しています。また、LIFEデータをケアマネジャーが活用することが大変重要で、逆にそれができない事業所は介護業界の流れから取り残されてしまうことを警告しています。

           

《 小濱介護経営事務所:小濱道博代表 》

       

LIFE(科学的介護情報システム)について、6月30日から事業所別フィードバック、利用者別フィードバックの提供がスタートした。【小濱道博】

    

これにより、LIFE関連の加算を算定する介護施設・事業所でフィードバックの活用が求められる。その活用方法は、個々の介護施設・事業所のノウハウにひとまず委ねられる。ひいては事業者間の格差を拡大し、差別化が加速する要因となるだろう。

    

来年度からは、居宅介護支援事業所などにも“LIFE加算”が創設される見通しだ。サービス担当者会議などでのフィードバックの活用も想定される。今まさに、フィードバックを活用する取り組みが重要な経営課題になったと言える。

    

◆ 取り残される事業所も

   

LIFEが始まって2年弱、フィードバック票がまだ暫定版であったことを理由として、データを提出するだけで単に加算を算定するケースが大部分だった。ここでの問題は、加算の算定に伴う費用を利用者に負担して頂いている一方で、何も還元してこなかったことにある。

   

利用者別フィードバック票の提供が始まった今、もはや言い訳は通じなくなった。利用者にその成果をしっかりと還元することが求められる。

   

来年度にはケアマネジャーの法定研修が改正される。新しいカリキュラムでは、ケアマネジメントにおいて根拠のある支援の組み立てが求められ、その基盤として適切なケアマネジメント手法、科学的介護(LIFE)などが重視される。

   

居宅介護支援に“LIFE加算”が創設される今後、ケアマネジャーに求められるのはLIFEへのケアプランデータの提供だけではない。サービス担当者会議の場で、関係する事業所がそれぞれのフィードバック票を持ち寄り、参加者間で共有・検討したうえで、必要に応じてケアプランに反映させることなども必要になるだろう。これにより、LIFEを活用していない事業所が取り残される可能性も出てくる。

    

サービス担当者会議などで情報を共有することで、LIFEをエビデンスとしたケース検討が可能になる。例えば、その利用者がデイサービスとデイケアの双方を使っている場合、それぞれの検討結果と対応を共有すれば連携したケアが可能になる。フィードバック票を上手く活用することで、目標の達成に向けて事業所間連携も加速すると期待できる。

    

◆ LIFE活用・差別化のポイント

    

利用者別フィードバック票は現在、前回提出分との比較での提供となっている。加算の種類によって、グラフの場合と比較表の場合がある。

     

例えばADLの数値について、今回の結果と過去の結果を比較したとする。評価点数が横ばい、または減少となっている場合、ADLに絞って検討すると、リハビリテーションの結果が出ていないのだからそのプログラムを見直す、という結論になる。

    

しかし、BMIの数値を見ると全国値よりかなり点数が低く、低栄養状態であることも分かった。さらに食事摂取量のデータを見ると、こちらも全国値よりかなり低いことが読み取れた。

    

これらをリハ職、介護職、看護職、栄養士などの多職種で検討した結果、「この利用者は日頃から食事量が少なくて低栄養状態にあり、体力や筋力が衰えている」との結論に達した。そのためにリハビリテーションの成果が出ていない、と総合的に判断された。

     

この対策として、食事量を増やして栄養状態を改善することが優先される。その後もADLの点数が上がらない場合、今度はリハビリテーション・プログラムを見直せばよい。このように、多職種協働で評価項目を総合的に見ていくことがLIFE活用のポイントである。

    

ただ、フィードバック票が提供されるのは、LIFEにデータを提出してから数ヵ月後だ。それを待っていてはブランクが生じてしまい、リアルタイムな対応ができない。

    

利用者のデータは素早く活用することで更なる成果が期待できる。また、職員のスキルも向上していく。

    

このような方法で、個人別のLIFE活用がフィードバック票を待たなくても実践できることに気付くべきだ。これにより、他の介護施設に先行して活用ノウハウを構築していくことができる。それは差別化にもつながっていく。

    

ただし、利用者別フィードバック票自体はあくまでも資料であって、それ以上でもそれ以下でもない。その評価指標の数字がなぜ変化しているのかを、直接にケアを担当している職員らが多職種で議論・分析し、改善につなげていく必要がある。そこでは、日頃から問題意識を持って、介護のプロとして利用者に如何に接してきたかが問われていく。

    

◆ 在宅でのLIFE活用の行く道

    

来年度からLIFEは、新システムへの移行が予定されている。これは大きなバージョンアップだ。LIFEに訪問サービスと居宅介護支援が組み込まれ、医療DBとの連携も始まる。収集項目も整理され、インターフェイスも大きく変わるだろう。

    

そして、ここからは筆者の妄想である。妄想であるから、根拠を示すことができない。それをご理解されたうえで読み進めて欲しい。

   

4月20日からケアプランデータ連携システムがスタートした。このシステムとLIFEは連携が成されていく。

    

在宅サービスにおけるLIFEのフィードバックの活用は、ケアマネジャーが主宰するサービス担当者会議が中心となる。各サービス事業者は、それぞれのLIFEのフィードバックを分析したうえで対応策をとり、サービス担当者会議でその経過と結果を報告する。ケアマネジャーはそれらの報告を受け、内容を把握したうえでケアプランを作成する。

    

その結果は、次のフィードバック票で検証される。これにより、自立支援介護が促進され、利用者の心身の状況の改善、または維持につながる。それは、ケアマネジャーと在宅サービス事業所のチームプレイだ。これがLIFEの近未来像と考える。

    

これまでの介護報酬改定をめぐる審議で国は、個々の事業所単独の成果としての改善、または維持だと判断できないという理由から、成功報酬の導入に二の足を踏んできた傾向が強い。介護は、医療のような単独プレーではなくチームプレーだからだ。

    

そうであるなら、単独の事業所を評価するのではなく、サービス担当者会議を構成する事業所をトータルで評価すればよい。私はその方向に進んでいると確信している。

   

   

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 出典: JOINT

     

      

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