2023.06.14
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訪問薬剤管理指導と服薬管理(ポリファーマシーを含む)[私の治療]

メディカルサポネット 編集部からのコメント

超高齢社会となった日本では訪問薬剤の重要性が増しています。

「在宅患者訪問薬剤管理指導(訪問薬剤管理指導)」では、通院困難な患者さんに、薬剤師が医師と患者の同意を得て、住居を訪問して服薬管理を行います。

薬を持っていってあげることができるほか、残薬を直接確認できるので、服薬アドヒアランスを向上させる可能性も高いと言えるでしょう。

単一建物診療患者一人の場合は650点など、診療報酬も算定できます。(詳しくは本文参照)

                  

「在宅患者訪問薬剤管理指導(訪問薬剤管理指導)」とは,在宅で療養している患者が通院困難な場合に,保険医療機関の薬剤師が,医師および患者の同意を得て患者宅を訪問して,薬剤管理指導記録に基づいた服薬指導や服薬支援などの服薬管理を行うことである。高齢化に伴い在宅医療を受けている患者が増えてくる中で,訪問診療や訪問看護と並んで,在宅患者をサポートする訪問薬剤の重要性が増している。

                          

▶医療者としての対応

【具体的な指導内容】

  

処方箋に基づき医薬品や衛生材料を供給し,服薬指導を行うことが主な役割である。特に外出が困難な場合には,直接薬剤を供給し,現場で服薬指導や残薬の把握ができることは患者や家族にとって大きなサポートになる。また,緊急時の調剤や夜間・休日などの処方について相談を受けることもある。上記の指導以外に,重複投薬や相互作用に関する薬剤調整や残薬調整を行った場合にも,診療報酬を算定できる。

   

薬剤師が直接患者宅に訪問することで,在宅医療に携わる医療・介護の多職種と連携をとることができるようになり,在宅患者や家族を見守る在宅チームの一員として役割を果たすことにも期待が集まる。

   

【服薬アドヒアランスへのアプローチ】

  

薬剤師が患者宅に訪問することによって,患者の服薬アドヒアランスを確認することができる。患者に服薬状況を確認するだけでなく,実際の服用方法や薬剤保管場所を確認し,直接残薬を確認することもできる。また,家族からの情報などを通して,病院や薬局受診の際には気づけなかった服薬アドヒアランスの状況を把握することが可能になる。一般的に,高齢者や慢性疾患患者の服薬アドヒアランスは低いことが知られており,必要なアプローチを考えることにつながる。患者宅への訪問は,服薬アドヒアランスや患者の薬剤知識の向上には一定の効果があるとされているが,入院や救急外来受診などの医療資源使用についての効果は不明である1)。具体的な介入方法としては,毎回の訪問時に服薬状況や残薬を確認する,お薬カレンダーによって管理方法を確認する方法がよく用いられている。

   

【ポリファーマシーへのアプローチ】

   

服薬アドヒアランスへのアプローチだけでなく,ポリファーマシー(多剤服用)へのアプローチにも期待が集まる。特に在宅医療を受けている患者では,処方医が1箇所の訪問診療医に集約されていることが多く,多疾患併存で複数医療機関に通院していた患者の薬剤を一括管理できるチャンスである。この際に,重複薬剤や薬物相互作用,潜在的不適切処方(potentially inappropriate medications:PIMs)や処方カスケードの有無等を適切に評価し,患者や家族,処方医師と十分相談しながら薬物調整を行うことができる。服薬アドヒアランスが低いこと自体が,薬剤中止を検討する契機になりうる。

   

【訪問指導に至る具体的な経緯】2)

   

訪問指導のきっかけとしては,①訪問医師や訪問歯科医師からの依頼,②ケアマネジャーや訪問看護などの他職種からの依頼,③施設や病院からの依頼,④薬局で必要性を把握し依頼,等が挙げられるが,いずれの場合においても,医師や歯科医師の指示と患者の同意が必要である。

           

▶制度面の知識

類似した項目に「居宅療養管理指導」があるが,これは介護保険のサービス給付対象であり,指導内容自体は同様である。介護認定されている場合には,「居宅療養管理指導」が優先される。実際には,医療保険による在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定は横ばいだが,介護保険による居宅療養管理指導費は年々算定回数が増えている。

    

また,「在宅患者訪問薬剤管理指導」は,保険医療機関からの距離が16kmを超える場合には,保険給付の対象とならないとされている。ただし,患者宅から16km以内に指導ができる薬局が存在しない場合には,実施可能である。

   

【診療報酬】

  

在宅患者訪問薬剤管理指導料は,単一建物診療患者1人の場合650点,2~9人の場合320点,10人以上の場合290点である。医師の指示に基づき,薬剤師が薬学的管理指導計画を策定し,患家を訪問して,薬学的管理および指導を行った場合に算定される。月に算定できる回数は以下の通り。

   

・薬剤師1人週40回まで,患者1人につき月4回まで。

・末期の悪性腫瘍の患者等の場合は週2回かつ月8回まで。

・そのほか麻薬について指導を行った場合,乳幼児に対する薬学的管理指導を行った場合,緊急訪問などは適宜加算される。

   

【文献】

1) Flanagan PS, et al:Integr Pharm Res Pract. 2018;7:141-59.

2) 七海陽子, 他:薬誌. 2012;132(3):387-93.

  

矢吹 拓(国立病院機構栃木医療センター内科副部長)

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 出典:Web医事新報

  

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