2025.06.19
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骨太の方針2025に明記された介護報酬引き上げ方針を読み解く

~菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営~Vol.7

    

編集部より

2024年に行われた介護報酬改定を通して、介護業界には多くの課題が生まれました。経営課題はもちろん、人材不足の解決、介護DXをどのように進めるか、事業所経営者は様々な問題と直面することでしょう。

そこで、本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「菊地雅洋の一心精進・激動時代の介護経営」として、介護の現場に重要なノウハウやマインドを解説頂きます。

  

第7回は、「骨太の方針2025に明記された介護報酬引き上げ方針を読み解く」です。 

6/13に閣議決定された骨太の方針2025について「介護報酬の期中改定が実施されるのではないか」と期待の声があがっています。

しかしここには、安心してばかりはいられない懸念点が複数見受けられます。

では、具体的にどのような点に着目し、声をあげていかねばならないのでしょうか?

留意すべきポイントを指摘し、紹介していきます。

介護報酬改定にまつわる問題点と課題の現在地について、理解の一助としてご活用ください。

 

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

      

  

1. 高まる期中改定への期待

 

社会保障審議会・介護保険部会では現在、2027年4月~介護保険制度改正議論が行われているが、その結論が今年中に示され、制度改正内容の諮問・答申が行われる予定になっている。

その後、議論の場は介護給付費分科会に移され2027年4月~介護報酬改定・基準改正内容について検討されることになっている。

  

介護報酬については3年ごとに見直されることになっているが、これは介護保険制度創設時に関係者合意によって決められたルールであるとされ、法律に改定時期が明記されているわけではない。

このことから関係者の間には、諸般の物価高・人件費高騰などに対応した期中改定(次回の改定時期を待たずに介護報酬を見直すこと)を求める声が日増しに高まっていた。

  

そうした声を受ける形で6/13に政府が閣議決定した、「経済財政運営と改革の基本方針2025について(骨太の方針2025)」には、「医療・介護・保育・福祉の人材確保に向けて、保険料負担の抑制努力を継続しつつ、公定価格の引き上げを始めとする処遇改善を進める」(7頁)と明記。

「医療・介護・障害福祉など公定価格分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る」(38頁)との考え示されるとともに、公定価格(医療・介護・保育・福祉等)の引上げ(50頁)が明記されている。

そして「令和8年度予算は、本方針及び骨太方針2024に基づき、中期的な経済財政の枠組みに沿った編成を行う。」(51頁)とされていることから、にわかに令和8年度における介護報酬の期中改定が実施されるのではないかと期待の声が挙がっている。

  

参考:経済財政運営と改革の基本方針2025について(骨太の方針2025)※PDFに遷移します

    

2. 処遇改善加算の令和8年度財源措置は確実か

 

  

処遇改善加算については令和6年度(2024年度)に2.5%、令和7年度(2025年度)に2.0%のベースアップができる財源措置がすでにとられているが、令和8年度(2026年度)については、賃上げの進捗や他産業の動向などを踏まえて直前の予算編成過程で判断し、2026年度の期中改定も視野に対応を検討するとされていた。

(※2023/12/20当時の鈴木俊一財務相と武見敬三厚生労働相が折衝で合意済み)

  

その為、骨太の方針2025によって令和8年度にこの加算率の引き上げが行われるのは確実だと思われる。

だが単に加算率がアップしさえすればめでたいということにはならない。

問題は医療・介護・保育・福祉等以外の各産業で、2024年度以降5%前後の給与ベースアップがされていることだ。

その為、全産業平均給与月額と介護職等の平均給与月額の格差が広がっている。

それをどれだけ縮小できる予算措置がとられるのかが問われる。介護関係者はそこに注目していかねばならない。

  

なぜなら2023年10月10日現在の介護事業者に所属する介護職員数が約212.6万人となり、前年比で2.9万人減少しているなど、介護事業の求人に応募が少ない状況はさらに深刻化しているだけではなく、介護事業者から他産業へ転職するケースが目立っているからである。

賃金格差が縮まらない限り、この状況に変化は見られないと思われ、更なる処遇改善がいつ・どの程度実施できるのかということが介護人材対策の最重要課題であると言って過言ではない。

  

 

3. ケアマネ対象の処遇改善加算は新設されるのか

  

 

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