2025.06.10
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第4回 組織論 ―ピラミッド型とチーム型の使い分け―

現場で役立つ!看護マネジメント入門

第4回 組織論 ―ピラミッド型とチーム型の使い分け―             

編集部より

看護管理を実践するには、患者さんに安全で安心な看護を提供するための優れたスキルだけでなく、看護師を適切に導くための現場管理、リーダーシップ、組織運営、コミュニケーションなどにまつわる力を身に付けることが求められます。

本連載では、看護師を適切に導くための現場管理、リーダーシップ、組織運営、コミュニケーション能力など、看護マネジメントに関するさまざまなテーマを解説しています。

今回のテーマは「組織論 ―ピラミッド型とチーム型の使い分け―」です。

 

管理者は、さまざまな場面で組織を動かす役割を担います。例えば、患者さんの急変時に多職種が迅速に連携したり、看護部の方針をスタッフに浸透させて質の高い看護をめざしたり――。管理者が正確な判断、的確な調整、明確な指示を実現することが欠かせません。

 

組織の運営方法には多様なかたちがありますが、指揮命令系統が明確な「ピラミッド型」と、リーダーを中心にメンバーが協力し合う「チーム型」が代表的です。それぞれの特徴やメリット/デメリットについて詳しく解説します。

  

執筆株式会社ナレッジリング

編集メディカルサポネット編集部

          


  

  

1.組織の在り方は常に変化するもの

   

どんな組織であっても、設立当初から何も変わらず、同じ状態を維持し続けることは現実的でありません。

看護の領域においても同様で、物資、人材、予算といった組織を構成する要素のいずれかに変化が生じると、全体が影響を受けます。

例えば、医療物資の供給が滞れば、限られた物資を効率よく活用するために運用の仕方を変える必要があるでしょう。

 

医療の進歩や社会の変化に伴い、看護師の役割や在り方も大きく変化しています。

高齢化の進行により在宅医療や地域包括ケアの重要性が高まっている、電子カルテや遠隔医療の普及により業務のデジタル化が進んでいる、といったことがその一例です。

看護師の働き方も多様化しており、契約職員、派遣、パート、夜勤専従といった勤務形態が増えています。

看護師の業務内容やチームの構成、働き方などを柔軟に調整する必要があるでしょう。

このように、看護を構成するあらゆる要素が組織に影響を与える中で、管理者には柔軟な対応力と、スタッフを適切に導く力が求められているのです。

 

2.ピラミッド型のメリット/デメリット

階層型組織とも呼ばれるピラミッド型は、トップに管理者がいて、その下に看護スタッフが階層的に配置される構造です(図1)。指揮命令系統が明確で、上から下へ指示が伝えられ、実行されます。

 

ピラミッド型組織のメリット

ピラミッド型には、次のような3つのメリットがあります。

 

1)意思決定を統一しやすい

指揮命令系統が明確であるため、判断の一貫性が保ちやすくなります。

例えば、患者さんが急変し、心肺蘇生や気管切開といった迅速かつ的確な対応が求められる場面では、リーダーが看護スタッフに明確な指示を出すことが重要です。

医師への連絡、処置するための環境整備、必要物品の準備、記録といった複数の役割に分かれる必要がありますが、互いに譲り合っているとすぐに動き出すことができません。状況に応じた役割を瞬時に把握し、一人ひとりに明確な指示を出せる管理者が必要不可欠と言えるでしょう。

 

2)責任の所在が明確

誰が何を担当するのかが明確になれば、進捗を把握しやすくなります。例えば、災害時には非常用電源の確保、患者さんの状況確認、スタッフの安全確認など、それぞれの担当者を決めて対応すれば、混乱しやすい環境の中でも状況を把握しやすくなります。

また、担当者が明確であれば、スタッフにとっても報告・連絡・相談すべき相手が分かりやすくなるので、やり取りが円滑になります。

 

3)組織の規模が大きくなっても管理しやすい

病院の規模が大きくなるほど、より多くの人員をまとめながら組織を導く必要が出てきます。

トップダウン型の指揮命令系統がうまく機能していれば、組織が大規模であっても全体を統制しやすくなり、管理の効率も向上するでしょう。

 

図1 ピラミッド型の構図

 

ピラミッド型組織のデメリット

一方で、次のようなデメリットもあります。

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