2024.12.02
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介護のプロとして求められる思考回路

~菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営~Vol.12

    

編集部より

介護事業の運営は厳しさを増し、利用者や職員の期待に応えられない事業所は、淘汰される時代に入っています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」として、ある時は厳しく、あるときは優しく、経営指南を頂きます。

 

「菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営」第12回は「介護のプロとして求められる思考回路」です。

福祉や介護というと、「自己犠牲」のイメージを持つ人も少なくないかもしれませんが、そうではないと菊地さんは語ります。介護事業に関わる人たちにとって重要なのは、良いサービスを提供するための技術や知識と矜持を持つことです。また、職員一人ひとりが自身の幸福も満たせるような働き方をできる、介護経営と職場作りが必要となります。そして、今後在宅医療が広がっていくことを考え、医療と介護の連携の場が増える際に、医療の知識を身につけることが大切となってくるでしょう。これからの介護の現場で求められるプロとしての思考回路とは何か、把握しておきましょう。

  

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

      

  

1. 介護支援は施しではなく、自己犠牲が求められるわけでもない

 

笑顔でこちらを見る介護スタッフ

 

福祉や介護という言葉からイメージする言葉の一つに、自己犠牲というものがあるとすれば、それは間違ったイメージであると云いたい。

 

困っている人が居るときに、自分が手を差し伸べることができるのであれば、手助けするのは当たり前のことだ。だからと言って手助けする者に犠牲が強いられるわけではない。できる範囲で、できることをすればよいのである。

福祉援助や介護支援によって対価を得ることを心苦しく感ずる必要もない。ずっと昔、福祉が貧困を救うこと(救貧)を中心に考えられていた時代であれば、お金に余裕がある人が自分の財産をなげうって貧困者に手を差し伸べればよかっただろう。

そこに心身の障害がある人も存在したとすれば、ボランティア精神で対価を求めず手を差し伸べることが求められた。

 

しかし現代社会の福祉ニーズは多様化している。特に高齢者が増える社会では、自然現象である「老い」に向かい合って様々なニーズが生じ、それに対して多様なサービスが求められる。

 

そこでは義務や責任が伴わない奉仕の精神で行われるボランティア活動ではなく、知識と技術を提供して対価を得ると同時に、義務と責任が伴うプロフェッショナルが求められるのである。

プロは金銭で出力するのだから、より高品質なサービスに対しては、より多くの対価が支払われるべきであるという考えは決して間違っていない。その為の専門知識と専門技術を常に磨くという矜持が必要とされるだけである。

  

一方で、国家はすべての国民の福祉を考える義務があるのだから、サービスを買う対価を持たない人、支払う対価に乏しい人に、国としてどう手当てするのかを考えなければならない。

 

社会福祉の光は、そのようにして社会の隅々まで届けられるべきである。つまりお金のない人に対しても、あまねく福祉援助・介護支援の手が差し伸べられるようにするのは、国家の責任なのである。

その中で国の定めた水準より、さらに高品質な福祉援助・介護支援を選ぶこともできるという選択肢を広げることはあってよいことだ。

   

2. 良心を道標として、自らの幸福も追求しよう

 

笑顔で働く男女の介護士

 

対人援助の場面では、ひとり一人の人間やその暮らしに向かい合って、その時々で自分自身が判断して行わねばならないことが多々ある。その判断に迷ったときに道標にすべきは、「良心」である。

 

しかし良心といっても、それは自分をないがしろにした思いのことではない。良心…一つにそれは、人のためにいいことをしたいと願う心であり、もう一つには、自分が幸福になりたいと願う心でもある。そのような考えに疑問を持つ人がいるかもしれない。

例えば、もし誰もかれもが自分が幸福になることばかり考えていたら、世の中はどんどん悪くなるのではないかという風に…もしも自分の幸福だけを考えるなら、そういう事態も起こってくるかもしれない。

 

しかし一方で、自分が不幸に打ちひしがれているとしたら、他人に何かをしてやろうとは思えないだろう。自分が幸福だと感じられたときに、人は優しい気持ちになることができて、自分の幸福を他人に分けてやることができるだけのゆとりを持つことができるのではないか。

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