2024.11.07
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多職種連携を機能させるチームワークの在り方を考える

~菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営~Vol.11

    

編集部より

介護事業の運営は厳しさを増し、利用者や職員の期待に応えられない事業所は、淘汰される時代に入っています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」として、ある時は厳しく、あるときは優しく、経営指南を頂きます。

 

「菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営」第11回は「多職種連携を機能させるチームワークの在り方を考える」です。

今後、入院治療は本当に必要な人のみとし、医療から介護への付け替えを進める社会になっていく流れができています。そのため、療養の場は暮らしの場へ移り、介護サービスと医療サービスが深く関係する必要性が生じます。つまり介護・医療制度が目指すものは両者のハイブリット化であり、医療・福祉・看護・介護等のそれぞれの専門職が、多職種で連携して支援チームを作るケースが増えていくでしょう。その際に、多職種でスムーズに連携を取り、高めあいながらよい効果を発揮していくためのポイントを解説します。

  

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

      

 

1. 求められる医療と介護のハイブリッド化を支える多職種連携

話し合う介護師と医師

 

我が国の医療・介護制度の今後の動向を読むと、入院治療は本当に必要な人のみとし、医療から介護への付け替えを進める社会を目指していくことが見て取れる。そこでは療養の場は暮らしの場へ移り、介護サービスに医療サービスが深く食い込んでくる必要が生ずる。つまり介護・医療制度が目指すものは両者のハイブリット化であり、介護・医療連携が必然となるのである

  

だからこそ介護支援を必要とする高齢者の暮らしを支えるためには、医療・福祉・看護・介護等のそれぞれの専門職が、多職種で連携して支援チームを作るケースがさらに増える。

訪問介護員単独で利用者宅に訪問する場合も、利用者支援の全体像を見ると、訪問診療や訪問看護などとの組み合わせでサービス提供されているケースが多く、それぞれの専門家は連携を密にして協力し合わねばならない。このように施設サービスは、同一事業者に所属する多職種による連携が必要であるし、居宅サービスの場合は所属事業者を横断しての多職種連携が求められることになる。

  

2. 重要となる意思統一の場~会議の利点と欠点を理解する

多職種連携と一口に言っても、関係者がチームを組んで集まるだけで目標が達成され利用者の課題が解決するとは限らない。そもそも人を集めただけではチームは機能しない。

仮にチームメンバー全員が善意をもってチームケアに関わろうとも、そのことだけで利用者の生活課題の解決に向けた良い機能を発揮するとは限らず、意思の統一に時間がかかったり、守秘義務の漏れが出たり、利用者支援に支障をきたす場合がある。3人寄れば文殊の知恵というが、そういう現象に期待を寄せてはならないのである。

単に人が集まるだけのチームでは、手抜きや足の引っ張り合いが起きて、人数に見合った能力を得ることにはならないのだ。そのためにチームを組む人々は、チームを組む利点と欠点をよく理解しておくことが大事だ

 

チームを組む利点としては、次の3点が考えられる。

 

  • 様々な情報と知恵が集まり、それによって情報が多角的に分析できること
  • 多領域の人材が集まることにより、使える資源が増えること
  • チームメンバー間の協力や競争意識によって、メンバーそれぞれのスキルアップを図ることができること

 

一方で欠点としては、次の3点を挙げておく。

 

  • 意見調整に手間ひまがかかり非効率的になりやすいこと
  • 役割混乱のために葛藤が生じやすいこと
  • 多数決の論理に支配され、少数派の反対意見が出にくいこと、無視されること

 

以上のような利点・欠点を意識してチームを組んで運営する必要がある。

 

そこで必要となるのはチームリーダーである。メンバー全員を公平に見つめて、小数意見も取り上げるスキルがあるリーダーによる運営が求められるのである。そこでは意見の集約、意思の統一は、会議によって行うという原則を徹底的に守る意識が求められる

阿吽(あうん)の呼吸とか、オフの飲み会などの雑談での決め事をチームの意思として動くことは、チームが機能しなくなる一番の原因となる。

 

事実を共有するだけの会議は、ICTを利用して連絡できるし、儀式的に毎月・毎週決まった時間に連絡するだけの会議に忙しいメンバーを招集する必要はないが、重要な方針や意識を向上させるために一同を集める必要はあるし、質疑やディスカッションに重きを置く会議は重要であるという意識を持つ必要があるだろう。

 

3. 多職種連携の際の「協力」の意味合い

チームを組む介護師、看護師

 

多職種連携は協働作業のための連携なので、チーム内での協力が必要になる。

しかし協力とは、誰かの力を借りる前に自分の担当領域を自分自身の力でしっかりカバーするという前提によって成り立つ。その上で自分と異なる専門性をもった人に、自分がカバーしきれない領域のコンサルテーションを受けるという意味として協力を仰ぐのである。

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