2024.01.11
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生き残る介護事業者~利用者から選択されるためにどんな介護を目指すか~

菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営~Vol.1

    

編集部より

介護事業の運営は厳しさを増し、利用者や職員の期待に応えられない事業所は、淘汰される時代に入っています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」として、ある時は厳しく、あるときは優しく、経営指南を頂きます。

 

新しく始まる本連載、「菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営」、第1回は「生き残る介護事業者~利用者から選択されるためにどんな介護を目指すか~」です。

そもそも介護事業とはどういうものか、介護経営に必要な状況分析とは、人材不足や介護DXについてなどを解説します。

 

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場・あかい花 代表 介護事業経営コンサルタント)

編集/メディカルサポネット編集部

   

       

1. 介護事業の根幹と経営の視点

介護保険法第1条はこの法律の目的が、「国民の福祉の増進を図る」ことであることを明記している。介護事業はその法律を根拠に、そこに定められたルールに則ってサービスを提供しているのだから、介護事業の目的も国民の福祉の増進を図るものでなければならない。

 

そもそも介護事業の主たる収入源は、国民の税金と保険料を財源とした介護給付費であり、そうした国民負担の上に成り立つ事業であるという使命をもって、公的責任が生ずる事業であることを意識して事業経営に当たる責任がある。利用者が今いる場所で、できる限り豊かな暮らしを送る日常介護が行われ、そこで安心して、安楽な状態で人生の最終ステージまでを過ごすことができるように支えるのが介護事業である。

 

このように制度や報酬体系がどのようになろうとも、私たちが護るべきは利用者の暮らしであるという根本を忘れずに事業経営を行う必要がある。

 

しかしその責任を果たすためには、安定した事業経営を続けなければならない。

 

きちんと収益を上げて、事業とそこで働く従業員を護る経営が、利用者を護ることにもつながるのであり、安定経営を無視して利用者対応やサービス提供の具体策を考えることはあり得ない。

 

経営方針を誤って廃業ということになれば、サービスを利用するお客様が不利益を被ることになり、その結果日常の暮らしに支障が生ずるかもしれないのである。そうであるからこそ制度の向かう方向性を的確につかみ、報酬体系の変化に応じた経営戦略を練っていく必要がある。

        

2. 介護事業経営戦略に必要となる状況分析

タブレットを見る介護職員      

 

例えば昨今の介護報酬体系と、そこにつながる議論の方向性から読み取れることは、自立支援も重要であるが、利用者の満足度を無視した自立の強要は否定されているということだ。そこでは利用者の尊厳を護るサービスの在り方を創造する方向性が打ち出されており、「できる限りおいしく口から御飯を食べるために支援する」「排せつは最初からおむつを想定せずトイレ排泄を目指す」「多床室でのポータブルトイレは利用者の尊厳の保持を著しく損なうために使用しない」「入浴は気持ちよく肩までお湯につかる支援を重視し、機械浴、リフト浴はやむを得ない手段とする」という考え方が示されている。

 

介護事業者はそのメッセージを的確に受け取って、その方向性から事業戦略を練り、サービスの在り方を考えていくことが重要となる。国が求める方向にサービス提供の流れを創り上げていくことは、結果的に加算算定が容易になり、収益の増加=安定経営に繋がっていくからだ。

 

2024年度の介護報酬改定の流れも、諸悪の根源である寝たきりを撲滅するという根底に揺るぎはなく、寝たきりによる廃用性機能低下は十分回復する余地があるとして対策する方向に加算が付けられていくことになる。

 

その為、アウトカム評価の推進が図られて、排泄支援や褥瘡予防などADL改善の結果がより評価されることになる。トイレで排泄できるように支援すること、サービス利用前に形成されていた褥瘡を治癒させることによって高い報酬加算が得られるのである。

 

また歯科医療、口腔ケアを必要とする利用者が多い一方で、適切な介入を受けている利用者は少ないという観点から、歯科医療機関と連携して利用者ごとに口腔アセスメントを実施し、その情報をケアマネジャーや歯科医療機関へ提供する事業所を評価するなど、リハビリと口腔ケアと栄養状態の維持・改善を一体的に評価する加算が居宅サービスと施設サービスを横断して新設される。

 

増大する認知症対策としては、

 

 

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