編集部より

一般的な企業でも新人研修で習う接遇マナーですが、医療機関や介護施設での接遇マナーは事業会社・小売店や飲食店などとは異なる側面を持ちます。足が痛くて治療に来ている患者さんに席次が良いからと遠い奥の席をすすめたり、体調が悪い利用者さんのところに強い柔軟剤の香りをさせて行くなどの行動は、医療機関職員や介護事業所職員なら避けたいものです。基本的な接遇マナーとその考え方を学びながら、本当に相手のためを思った行動ができるように工夫していきましょう。

講師は病院、薬局などで20年を超える患者対応経験があり、薬剤師資格を持った医療接遇コミュニケーションコンサルタント、村尾孝子さんです。

   

第7回は、姿勢・態度・ボディランゲージを取り上げます。どれも患者さん・利用者さんの安心や施設への信頼につながる大切なスキルとなっています。ふだん無意識で行っているクセがないか注目しながらご覧ください。

   

執筆/村尾 孝子(医療接遇コミュニケーションコンサルタント スマイル・ガーデン代表)

編集/メディカルサポネット編集部

手振りで話す医師

 

新入職員が身につけたい接遇マナーとして、これまで3回にわたり挨拶、電話応対、言葉遣いについて説明してきました。最終回は、姿勢・態度・ボディランゲージを取り上げます。

  

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1. 信頼や敬意を伝える姿勢・態度 ~無意識で行っているクセに注意~

 姿勢や態度は、言葉と同じように相手に対する自分の思いや考えをあらわします。姿勢や態度の中に相手を信頼したり敬ったりする思いが含まれるのです。患者さんや利用者さんに対して礼儀正しい姿勢や態度で接することで、相手への信頼や敬意を伝えることが可能になります。

 

 姿勢・態度で注意したいポイントについて具体的に考えてみましょう。

 患者さん・利用者さんと接するとき、無意識のうちに顔や髪を触ったり、足を組んで座ったりしていませんか。顔や髪を触るのは不潔だと感じる患者さん・利用者さんがいます。クセになっている人は、業務中だけでなく休憩や通勤時間も意識して、無意識の癖を修正しましょう。足組みや腕組みは、たとえ机やパソコンに隠れていても相手には分かってしまうもの。防御や敵意をあらわすと言われる腕組みは特に注意してください。

 

 患者さん・利用者さんの話を聴くときも姿勢・態度に気を付けます。相手の話に集中して目を見て話をする、うなずきながら聴くなど、患者さん・利用者さんの話に真剣に耳を傾けていることを態度で示します。患者さん・利用者さんのお役に立ちたいという気持ちは、姿勢や態度にあらわれます。経験や実績や肩書きなどはあとから付いてくるものです。背筋を伸ばして親身になって真剣に話を聞く姿勢は人間的な魅力を高め、医療介護者としての信頼の基礎となります。

 

 また、患者さん・利用者さんのプライバシーを尊重し、必要に応じて個室での会話やカーテンを閉めるなど配慮を持って行動しましょう。患者さんの立場に立った行動は、信頼関係を築くうえで非常に重要です。信頼関係を深めるために、どんなときでも患者さん・利用者さんの立場になって考える習慣を身につけましょう。

   

2. 笑顔がもたらす効果 ~笑顔は最強の医療コミュニケーションスキル~

 

笑顔でコミュニケーションをとる女性と介護士

 

 姿勢・態度の一つとして、医療介護施設で気を付けたいのが表情です。表情は言葉以上に自分の思いや考えを伝えるコミュニケーションスキルです。患者さんの感情に寄り添うような表情を意識しましょう。

 

 痛みや不安を抱える患者さん・利用者さんに対して、医療介護者は基本的にやさしい笑顔で接します。表情は常に同じではなく、状況によって使い分けます。患者さん・利用者さんの話を真剣に聴くときは真摯な表情、共感を示すときはぬくもりが感じられるやさしい表情、といった具合です。どんな状況であっても、患者さん・利用者さんが安心して話ができたり、信頼を感じてもらえたりする表情を意識します。

 

 患者さん・利用者さん応対で笑顔は欠かせません。医療介護施設において、笑顔で対応するとどのような影響があるのか考えてみましょう。笑顔は基本的に、相手に対して好意や信頼、安心、リラックス等をもたらしますが、医療介護の現場ではそれ以上に大きな役割を持っています。たとえば、医療介護者の笑顔は、警戒心を解く、緊張をほぐす、励ましや勇気を伝える、医療介護者の自信を伝える等の効果があります。

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