編集部より

一般的な企業でも新人研修で習う接遇マナーですが、医療機関や介護施設での接遇マナーは事業会社・小売店や飲食店などとは異なる側面を持ちます。足が痛くて治療に来ている患者さんに席次が良いからと遠い奥の席をすすめたり、体調が悪い利用者さんのところに強い柔軟剤の香りをさせて行くなどの行動は、医療機関職員や介護事業所職員なら避けたいものです。基本的な接遇マナーとその考え方を学びながら、本当に相手のためを思った行動ができるように工夫していきましょう。

講師は病院、薬局などで20年を超える患者対応経験があり、薬剤師資格を持った医療接遇コミュニケーションコンサルタント、村尾孝子さんです。

 

第6回は、新入社員が身に着けたいマナーの一つである言葉遣いです。よく使う言い回しを例にあげて紹介していきます。

  

執筆/村尾 孝子(医療接遇コミュニケーションコンサルタント スマイル・ガーデン代表)

編集/メディカルサポネット編集部

 
患者さんに丁寧に接する医療事務の女性

 

新入職員が身につけたい接遇マナーとして、第1回は挨拶、第2回は電話応対のマナーについて説明してきました。第3回は言葉遣いについて取り上げます。医療介護の現場でよく使う特別な言い回しや、誤った表現と正しい表現などを紹介していきます。

  

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1. 言葉遣いのポイント

接遇といえば言葉づかい、言葉づかいと言えば敬語をイメージされる方も多いと思います。敬語は相手に敬意や気遣いを伝える重要なマナーの一つですが、実際には敬語を使いさえすればいいというものでもありません。医療介護の現場では、患者さん・利用者さんとのコミュニケーションが成り立つことが大前提だからです。たとえば、丁寧な言葉遣いを意識し過ぎて、患者さんが「何を言っているのか分からない」とかえって不安や不満を感じることがあります。尊敬語や謙譲語を多用すると、医療の専門用語を使うのと同じように、理解されずに敬遠されてしまう可能性もあります。

 

また、馴染みの利用者さんに友達に話すような普段遣いの言葉で話したり、高齢患者さんに赤ちゃん言葉で話しかけたりするようなケースも見受けられます。このような言葉遣いは、患者さん・利用者さん本人に限らず、それぞれのご家族や周囲で見聞きしている患者さん・利用者さんも不快・不信に思うかもしれません。さらに、初めて訪れた患者さん・利用者さんにいきなり親しげに話しかけると、患者さん・利用者さんは「馴れ馴れしい」「知り合いでもないのに失礼だ」と不信感を抱いてしまう可能性もあります。大切なのはそれぞれの患者さん・利用者さんに合った言葉を選ぶこと。目の前の患者さん・利用者さんが理解しやすい言葉を使うことを意識しましょう。

 

言葉遣いのポイントは、相手の話す言葉をしっかり聞いて、その言葉を少し丁寧にした言葉を選ぶことです。丁寧な言葉で話す患者さん・利用者さんには、より丁寧な敬語を。ざっくばらんに話しかけてくる患者さん・利用者さんには、話し言葉を少し丁寧にした丁寧語を使うことで、患者さん・利用者さんの安心感が増します。この際、話すスピードや声の大きさやトーンも患者さん・利用者さんに合わせると、患者さん・利用者さんは自分と似た話し方の相手に安心や親しみを感じやすくなるため、さらに効果的です。

  

2. 敬語の基本

敬語は、大きく分けると「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」に分けられます。これらを相手や自分の立場によって使い分けましょう。

  

尊敬語

患者さん・利用者さん、そのご家族、先輩や上司など目上の人を敬って使う言葉です。「お〜なる」「ご〜なる」「〜れる/られる」といった一般的な言い回しのほか、「おっしゃる」「いらっしゃる」など特別な言い回しもあります。

 

謙譲語

へりくだって話すときに使う言葉です。「〜いたす」「お〜する」「〜させていただく」といった一般的な言い回しのほか、「拝見する」「伺う」などの特別な言い回しもあります。

 

丁寧語

丁寧な表現で相手に敬意を払います。「〜です/ます/ございます」のほか、「ご家族」「お手荷物」など名詞に「お」や「ご」をつける場合もあります。

 

3. 特別な敬語の言い回し

特別な言い回しをする敬語は、覚えていなくては使うことができません。医療介護の現場でよく使う特別な言い回しをしっかり覚えて、相手や状況に合わせて臨機応変に使いこなせるようになりましょう。

 

  

4. 医療介護現場で気をつけたい言葉遣い

 医療介護現場では、日常的によく使う言い回しがあります。ふだん遣いの言葉やバイト言葉に代表されるような誤った言い回しなどの医療介護の現場には好ましくない表現については、好ましい表現を覚えて使えるようになりましょう。

 

 

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