2023.11.06
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コロナ後の介護事業所運営指導(旧:実地指導)とは?その対策

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.7

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします

  

第7回は事業所の運営指導についてです。介護事業所の運営指導とは、以前実地指導と言われていたもので、自治体の担当者が介護事業所の現場に通常実際に確認に来て指導するものです。頻度は施設などは3年に1回以上、在宅は6年に1回以上。通常は事前告知の上行われますが、抜き打ちの場合もあります。コロナ禍の間は中止されているところが多かったのですが、今年度は過去最大の指導件数となっています。

   

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部 

                              

1. 実地指導から運営指導へ移行

2022年度から、実地指導の名称を、「運営指導」と変更となった。5月8日にコロナが5類に移行したことにより、令和5年度は、過去最大数の指導件数になる勢いである。

   

運営指導は、①介護サービスの実施状況指導 ②最低基準等運営体制指導 ③報酬請求指導が中核として実施される。

   

①介護サービスの実施状況指導とは、主として利用者に対する個別サービスの質を確認するために行う指導で、実地に確認し必要な指導を行うものである。その中心は、ケアマネジメント・プロセスの確認である。

   

②最低基準等運営体制指導とは、 サービス種別毎の指定基準等に規定する運営体制を確認するために行う指導で、事業所の体制に関する事項について確認し必要な指導が行われる。

   

③報酬請求指導は、主として届出等で実施する各種加算に関する算定及び請求状況について確認する。加算報酬の請求は、その算定要件が満たされていても、取扱いが不十分な場合は、正しい理解に基づく取扱いを改善指導するとした。介護報酬の基本報酬部分については、算定している単位数が実際のサービスに相応したものであることを確認される。

   

また、運営指導となったことにより、オンライン会議システム等を活用することが可能となった。これによって、ZOOMなどを活用した運営指導が行われる。オンライン指導であれば、対面では無いためコロナ禍の感染拡大期でも指導の実施は可能となる。しかし、施設側のICT化、電子データ化の進捗と関連するため、対象となる施設、事業所は限定的である。関係書類をPDFなどの電子データで保管していることが前提となり、事業者側で、システム上で書類を共有することでPCのディスプレイを通しての指導が可能になっている。

             

2. 運営指導の実施頻度

「運営指導」は原則、在宅サービスは、指定等の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上実施し、施設サービス・居住系サービスについては、3年に1回以上の頻度となる。また、新規の許認可指定を行った後、1年前後に最初の運営指導を実施して指定後の運営状況を確認する自治体も増えている。ただし、事業所で高齢者の虐待などが疑われる場合は、抜き打ちの指導も可能とされている。

   

実施の1か月前〜2週間前に文章で事前通知書が郵送される。指導当日は、丸1日か、半日程度で終了する。運営指導は必ず複数の担当者で行われ、施設や事業所の規模によって人数が変わる。

「特別指導」は、前回の運営指導で大きな不正が発覚
した場合や、法令違反などの改善を長期間行わなかった場合に、処分の年から3〜5年の間、毎年定期的に実施される運営指導のことである。「書面指導」は、小規模な事業所に対して人員の配置状況や利用者の状況、事前チェックリストなどを書面で提出させ、その書類上で審査を行う。 

             

施設を説明する女性

    

3. 運営指導と監査の違い

行政指導は、あくまで事業者の任意の協力によってのみ実現されるものであるから、強制力はない。しかし、事業者側に運営基準違反や介護報酬の不正請求等が認められる場合は、監査によって事実関係を明確にした上で指定取消等の行政処分が行われる。ただし、行政指導に従わなかったことのみを理由として行政処分(不利益処分)を行うことはできない。

   

運営指導では、情報を集めるための権限のみが認められていて、立入検査などの強制力は無いのであるが、監査の場合には立入検査などの強制力が認められている。介護報酬の請求指導に於いても、それが単なる手続も誤りなどの場合は、過誤申請の手続による自主返還の形が取られる。監査の結果、不正請求と判断された場合は、返還を徴収金として強制され、40%の過料が上乗せされる

   

また、高齢者虐待防止法に基づき市町村が虐待の認定を行った場合や高齢者虐待等により利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼしている疑いがあると認められる場合は、運営指導ではなく、事前に通告を行うことなく速やかに立入検査等などの監査が実施されて事実関係の確認が行われる

        

4. 運営指導で確認される書類

運営指導は、

 

  

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