2023.10.23
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通所介護(デイサービス)の経営改善

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.6

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

  

第6回は通所介護(デイサービス)でよくある課題と経営改善法です。

  

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部 

                 

通所介護中の男性介護職           

1. デイサービスの現状

2月に公表された令和4年度介護事業経営概況調査によると、デイサービスの収支差率が令和2年の3.8%から、令和3年は1.0%と、2.8%の急落となっている。収支差率とは利益率のことで、100万円の収入があった場合、令和2年は38,000円だった利益が、令和3年には10,000円になった事を示している。これだけ収支差率が下がると、令和6年介護報酬改定の審議において、報酬引き上げの論点が議題となってくるであろう。

 

しかし、デイサービスにおいては、それ以上に経営的な問題が浮上してきている。それは、デイサービスなどの稼働率が中々戻らないという問題である。特にデイサービスは、コロナ禍の影響を強く受けた。休業を余儀なくされたり、利用者もサービスの利用を長期にわたって自粛するケースも多く見受けられた。法人規模の大小に関わらず、この傾向はレスパイト中心の長時間デイサービスに顕著である。

 

短時間型のいわゆるリハビリテーション型のデイサービスは、比較的早めに利用者が戻り、稼働率が安定していることが多い。コロナ禍が長期化し、利用者がデイサービスを利用しない期間が一定期間においてあった結果、利用者が必ずしもデイサービスに通わなくても良いことが分かってしまったということである。しかし、コロナ禍が長期化したことで自宅に引きこもる高齢者が増えた結果、体力や筋力の低下と共にフレイル・サイクルのリスクが高まり、健康状態の悪化が懸念される。その為、ケアマネジャーの判断でリハビリテーションを提供するデイサービス等をケアプランに位置づけるケースが増加している。

  

コロナ禍が収束する中で、明らかに利用者やケアマネジャーのニーズに変化が起こっている。その結果、デイサービスにおいて二極化が進み、明暗が分かれ始めている。これは、コロナが五類となってもコロナ禍以前の時間に戻るのでは無いと言うことを示している。コロナ禍の3年弱の時間を経て、新たな時間に移行していると考えるべきだ。利用者のニーズに変化が生じて、コロナ禍以前のやり方が通じないケースが出始めている。

  

そもそもデイサービスは、全介護サービス中で最も事業所数の多いサービスである。厚生労働省資料における令和2年度事業所数では、地域密着型を含めると43,336件であり、居宅介護支援38,318件、訪問介護の33,750件を大きく上回っている。令和2年度末におけるコンビニエンスストアの店舗数で見ると、セブンイレブンとファミリーマートで37,774店であったことを見ても、その事業所数の多さが際立っている。そのことは、他事業所との競争が厳しいことを意味する。それは利用者の獲得であり、職員の確保においてである。

   

図表1:各介護サービスにおける収支差率

各介護サービスにおける収支差率

 出典:厚生労働省 令和4年度介護事業経営概況調査の概要

           

2. 制度改正における環境変化の可能性

令和6年度制度改正において、大きな変化をもたらす動きが見えてきた。それは、デイサービスと訪問介護の組み合わせと予想される複合型サービスであり、この夏には結論が出される自己負担2割の対象者の拡大方向である。

 

特に新型の複合型サービスは、現在のデイサービスの市場に変化をもたらす可能性がある。令和6年度介護保険法において、看護小規模多機能型の役割に「機能訓練」が明記された。今後は、多機能型においても機能訓練の場としての役割が強化される。リハビリ特化型多機能型も、今後の差別化の中で生まれてくるだろう。今後は、機能訓練を提供しない預かり中心のデイサービスは、更なる苦戦を強いられる

 

すでに、コロナ禍の影響で利用者のニーズやケアマネジャーの価値観が大きく変化しており、機能訓練を提供しないデイサービスが選ばれなくなってきている。来年度に創設予定の新しい複合型サービスが、大方の予想通り、デイサービスと訪問介護の組み合わせで有った場合、デイサービスとの競合関係となることは避けられない。さらに、年末までに結論を出すとされた自己負担2割の対象拡大(全体の20%から30%へ)が確定した場合には、確実に利用控えが生じて、使われなくなる事業所が出て来る。自己負担が倍額となっても、使いたいサービス、使わなければならないサービスで有ることが求められる 

           

3. 機能訓練とLIFEへの取組の重要性

令和6年度介護保険制度改正は、預かり中心のデイサービスにとっては大きな逆風となる。早急に機能訓練への取組を進めないと手遅れとなる。同時に、LIFEの活用は必須である。

 

機能訓練の取組は、パワリハの導入だけでは無い。機能訓練には、椅子やボールなど、身近な備品を使ってできるプログラムが多数ある。重要なのは、利用者の身体能力を分析し目標を立てるアセスメント課程である。しっかりと利用者一人ひとりの状態を把握し、利用者に寄り添った機能訓練を提供できるかが問われる。そして、機能訓練やLIFEへの取組で業務量が増えることから、業務改善や効率化への取組も同時並行で行う必要があり、ICT化も必須である。LIFEについては、

  

  

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