編集部より

「ナーシングビジネス」2020年4月号「ハラスメント対策 最前線」より抜粋。『Q&Aで理解する「パワハラ」と「指導」の境界線」』をご紹介します。

 

株式会社コンクレティオ 

代表取締役 三塚浩二(みつづかこうじ)

    

「これはパワハラ?それとも指導?」と現場管理者が陥りがちな問題事例を通し、何が、どう異なるのか?Q&A形式で解説します。

目次

  1. A1「目的と結果:誰の利益か」と「行為者の態度・感情」
  2. A2「業務上の必要性」と「指導の内容や量」
  3. A3「継続性」と「タイミング」
  4. 「昔はなかった」という気持ちを捨て新たな意識の醸成が重要

 

Q質問

後輩のOJTを任されることになりました。早く一人前になってもらいたいと思ったのと、失敗が許されない仕事だったので、熱心に仕事を教えたつもりでいました。しかし、それが後輩には「厳しい」と思われたようです。後日、上司から「パワハラだと(後輩から)泣きつかれた」と言われ、話し方だけでも気をつけるよう注意されました。パワハラと指導の境界線はどのようになっているのでしょうか。

 

A1「目的と結果:誰の利益か」と「行為者の態度・感情」

パワハラは主に相手を「見下す」「排除する」「自分の思い通りにする」などのために行われます。そのときの行為者は一般的に「イライラ」「怒り」「嘲笑」「冷徹」「不安」「嫌悪感」などを抱いていて、行動が「威圧的」「攻撃的」「否定的」「批判的」です。組織や自分の都合や気持ちを優先することで、相手が萎縮したり、職場の空気が悪くなったりして、退職者の増加にもつながってしまいます。

 

他方、指導は主に相手の成長や発展を促すことなどのために行われます。そのときの行為者は一般的に「好意」「穏やかさ」「整った心持ち」を抱いていて、「肯定的」「受容的」「自然体」で見守っています。ときに厳しさを伴うとしても、組織や相手の都合や気持ちに配慮することで、相手は責任を持った言動を行えるようになり、職場の活気も維持・増幅します。

 

とはいえ指導する側にとって、その経過や成果が見通し通りでない場合は、当初は問題なかったはずの目的や感情が変化していくことも多いです。だからこそ、指導前から指導中、指導後までの各過程で、目的や結果を意識し、自らの態度や感情を確認し続け、相手の利益となるような言動を常に心がけたいものです。

 

 

A2「業務上の必要性」と「指導の内容や量」

パワハラは定義として説明した通り、まずは「業務上の必要性」がないときに、個人の性格や人格を否定することなどにより問題となるものです。ただし、「業務上の必要性」があるときであっても、抽象的、画一的などの不適切な内容や、過度な量の指導を行えば、同様に問題となります。言い換えれば、指導は「業務上の必要性」があることを前提として、それに見合った適切な内容や量の行為を行うことです。仕事内容に直接関わるものに限らず、広い意味で健全な職場を維持するために必要なことも含まれます。

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