2023.07.20
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看護管理者が知っておきたいハラスメント対策

ハラスメント対策最前線

 

編集部より

「ナーシングビジネス」2020年4月号「ハラスメント対策 最前線」より抜粋。「看護管理者が知っておきたいハラスメント対策」をご紹介します。

 

株式会社コンクレティオ 

代表取締役 三塚浩二(みつづかこうじ)

    

成立した女性活躍・ハラスメント規制法により看護現場を取り巻く環境はどのように変わるのでしょうか?看護管理者が知っておきたい点を取り上げ解説します。

目次

  1. 「パワハラ」と「業務上の指導」の線引きは?
  2. パワハラの定義と相談窓口の設置
  3. パワハラ相談窓口を機能させるポイントは?
  4. 現場管理者に求められるラインケア
  5. 職員に対する周知方法~職員教育・研修~
  6. 現場管理者が知っておくべきハラスメントのリスク

 

「パワハラ」と「業務上の指導」の線引きは?

近年、問題になっている職場のハラスメント問題(参考〔図-01〕)に対し、対策の強化を柱とした「女性活躍・ハラスメント規制法」が2019年5月の参院本会議で可決、成立しました。パワーハラスメント(以下、パワハラ)やセクシャルハラスメント、妊娠出産を巡るマタニティハラスメントに関し「行ってはならない」と明記、パワハラの要件を設け、事業主に相談体制の整備など防止対策を取るよう初めて法律で義務付けました。本法律は労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法など5本の法律を一括改正する内容になっており、3つのハラスメントの対策として国・事業主・職員に対し、他の職員の言動に注意を払う責務を規定し、事業主には被害を相談した職員の解雇など不利益な取り扱いを禁止しています。

 

 

 

従来の「パワハラ」と「業務上の指導」の線引きが難しいとの指摘に対しては、パワハラに当たる“アウト”の例や、指導といえる“セーフ”の例を示しています〔表-02〕(次ページ)。そこには判断基準をわかりやすくして企業の取り組みを後押しする狙いがあり、医療機関も例外なく本法律施行により体制強化を図ることが急務となります。

 

表-02 

パワハラの定義と相談窓口の設置

職場におけるパワハラの状況は多様ですが、代表的な言動の類型としては、前掲の表-02に示したようなものがあります。ただし、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、また、表-02の例は限定列挙ではないことに留意が必要です。なお、職場におけるパワハラに該当すると考えられるこれらの例については、行為者と当該言動を受ける職員の関係性を個別に記載していませんが、優越的な関係を背景として行われたものであることが前提です。

既に他法でも義務化されている相談窓口の設置については、多くの事業所で以前から設けられているかと思います。女性活躍・ハラスメント規制法でも表-03のような項目があります。

 

表-03

 

管理者からすると、「ハラスメントの被害を受けている」という相談はできればきてほしくないものです。窓口の設置後、何カ月経っても、何年経ってもまったく反応がなければ、何事も起こっていないと考えてしまうのも当然です。しかし、実際にハラスメントが起こっていないのならばそれでいいのですが、何らかの理由で相談窓口が利用されていないということも往々にしてあります。ハラスメント相談窓口が機能していない理由は、主に次の2点です。

 

1つ目は職員が「ハラスメント相談窓口の存在自体を知らない、どこに連絡したらよいかわからない」ということがあります。職員にとっては、ハラスメント相談窓口の存在を一度は耳にしていても、そのときにとくに問題がなければ、そのうち忘れてしまいます。自分に被害が及んだときに初めて「院内に相談窓口があったはず……」と思い出すのですが、どこに連絡したらよいかわからず、かといって誰かに尋ねると、相談しようとしていることがバレてしまうのでそれもできないのです。

 

2つ目に「窓口担当者を信用できない」などの理由から、ハラスメントのことを他人に話しにくいということがあります。「毎日顔を合わせている間柄なのに、こんな話をしたら翌日からどのような顔をすればいいのか」「本当に秘密を守ってくれるのだろうか」「担当者は基本的に病院側の人だから、まともに対応してくれるわけがない」というような考えを職員が持っている可能性もあります。

 

職場でハラスメント事案が起こっており、人事担当者が「どうやら、あの人がパワハラしているらしい」と薄々知っていても、被害者からの申し出がない状態では、なかなか動きづらいものです。このような状態を長年放置していると、次第に職員のモチベーションが低下し退職してしまいます。そして労働局からのあっせん通知や、退職した職員から訴えられて裁判所から訴状が届いたりしてしまうという事態にもなりかねません。

したがって、ハラスメント相談窓口に相談がないことを喜ぶのは安易な対応であり、被害者が自分から相談窓口に申し出てくれるのは、実は事態が悪化する前に収拾する機会が病院に与えられるという意味でとてもありがたいことなのです。

 

図1

 

 

パワハラ相談窓口を機能させるポイントは?

では、ハラスメント相談窓口を機能させるには、どのようにしたらよいのでしょうか。

 

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