2023.08.17
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服薬情報等提供料の算定を増やすには?算定例やトレーシングレポートの記載事項

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営~Vol.2

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営

 

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

    

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

  

第2回は、服薬情報等提供料やトレーシングレポートについて説明します。地域の要となる薬局として、対物中心の業務から、対人中心の業務を重視するよう変化していくことが必要です。

    

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

  

     

男性患者に女性医療従事者がアンケートを取っている

     

近年、薬剤師の働き方は「対物業務から対人業務へ」の変化が求められています。そのため、対人業務のアピールにもなる「服薬情報等提供料」や「トレーシングレポート」といった用語を耳にする機会が増えました。服薬情報等提供料の算定は、利益アップにもつながります。そのため、積極的な算定に取り組みたいと考える経営者も多いのではないでしょうか。この記事では、服薬情報等提供料の算定要件や算定点数の解説とともに、利益アップにつながる具体的な算定例やトレーシングレポート例をお伝えします。

   

1. 服薬情報等提供料とは

白衣を着た女性がファイルを持って悩んでいる   

服薬情報等提供料は、地域医療に貢献する薬局を評価するために2018年度に新設された「地域支援体制加算」の実績要件にもなっており、積極的に算定することで、薬局経営へのメリットもあります。まずは、服薬情報等提供料の概要からおさらいしておきましょう。

   

服薬情報等提供料の概要

服薬情報等提供料とは、医療機関と薬局の連携のもと、患者さんに対して医薬品の適正使用を推進することを目的としている薬学管理料です。薬局薬剤師が調剤後も患者さんの服用している薬や服薬状況に関する情報を把握し、患者さんやその家族、必要に応じて医療機関に対して、情報提供したときに算定できます。

2022年に日本保険薬局協会が認定薬局を対象に行った調査によると、服薬情報等提供料1と服薬情報等提供料2の算定件数は、前年と比べて122.1%、106.0%と増加傾向であると報告されています。国の方針として、薬剤師の対人業務の強化が求められているため、今後も算定件数は増加傾向にあるでしょう。

     

なぜ服薬情報等提供料を算定できないのか

薬局全体で見ると算定件数は増加しているものの、服薬情報等提供料の算定が進んでいない薬局も見られます。令和3年に保険薬局を対象に行われた調査によると、1年間のうち服薬情報等提供料を一度も算定しなかった薬局は、全体の44.4%でした。算定ができない理由として、以下の理由が考えられます。

   

薬剤師不足や処方せんの応需枚数が多く、算定に取り組む時間がない

算定要件を理解していない

具体的な算定例がわからない

情報提供の重要性を理解できていない

  

薬局や薬剤師によって算定できない理由は異なるため、算定が難しい理由を確認し対策を考える必要があります。

   

2. 服薬情報等提供料の算定要件・点数と算定できない事例

書類を読みながら悩んでいる女性医療従事者     

服薬情報等提供料には算定要件の異なる服薬情報等提供料1~3があり、算定できる点数も異なります。それぞれの算定要件や点数と、算定できない事例について解説します。

          

服薬情報等提供料1

服薬情報等提供料1は、医療機関の求めがあった場合に、患者さんの同意を得たうえで、薬剤の適正使用のために調剤後も当該患者さんの服用薬の情報などを把握し、医療機関に必要な情報について文書などを用いて提供した場合に、月1回に限り30点(2023年4月1日施行の調剤報酬)を算定できます。具体例として、医療機関が残薬の報告を求めている場合に薬局から患者さんの残薬状況を報告した場合などが挙げられます。

また医師の指示による分割調剤において、2回目以降の調剤の際、患者さんの服薬状況や服用中の体調変化などを確認し、医療機関へ情報提供した場合も算定が可能です。情報提供する内容は以下のものが挙げられます。

  

残薬の有無

残薬が生じている場合はその量と理由

副作用の有無

副作用が生じている場合はその原因の可能性がある薬剤の推定

     

服薬情報等提供料2

服薬情報等提供料2は、情報提供する相手によって算定要件が異なります。以下の要件を満たすことで、20点(2023年4月1日施行の調剤報酬)を算定できます。

患者さんやその家族に対して情報提供を行う場合、患者さんの同意を得たうえで、患者さんやその家族から求めのあった以下の情報を速やかに提供し、次回患者さんが来局したときに確認、必要な指導を行った場合に服薬情報等提供料2を算定します。患者さんに確認した服薬情報や指導内容は薬剤服用歴に記録する必要があります。

   

緊急安全性情報、安全性速報など、処方せんを受け付けたときに提供した薬剤情報以外の情報で、患者さんの服薬期間中に新たに知り得た情報

患者さんの服薬期間中に服薬状況の確認と必要な指導

  

患者情報について、薬剤師が必要と判断し医療機関へ情報提供した場合にも服薬情報等提供料2を算定できます。同意を得たうえで、患者情報について文書などを用いて以下の内容を情報提供することが算定要件です。

  

患者さんの服用薬及び服薬状況

患者さんに対する服薬指導の要点、患者さんの状態など

患患者さんが容易に、または継続的に服用するための技術工夫などの調剤情報

  

服薬情報等提供料3

服薬情報等提供料3は、薬局における対人業務の評価の充実のために、2022年度の調剤報酬改定で新設されました。2023年4月1日施行の調剤報酬では、50点を算定できます。医療機関からの求めに応じて、入院予定の患者さんの服用薬に関する情報などを一元的に把握し、以下の内容について文書により医療機関へ情報提供するのが算定要件です。

  

受診中の医療機関・診療科などに関する情報

服用中の薬剤の一覧

患者さんの服薬状況

併用薬剤などの情報

   

ここまで解説した服薬情報等提供料について、それぞれの要点や違いを表にまとめました。

  

服薬情報等提供料1 服薬情報等提供料2 服薬情報等提供料3
算定点数 30 20 50
医療機関の求めの必要性 必要 不要 必要
情報提供する相手 医療機関 患者さんまたはその家族 医療機関 医療機関
情報提供内容 残薬の量や生じた理由など 服薬期間中に行った確認・指導内容など 服用状況や服薬指導の要点、患者の状態など 入院予定の患者さんの服薬状況など
算定回数 1回まで 上限なし 医療機関または診療科ごとに月1回まで 3月に1

服薬情報等提供料1,2,3の算定要件や点数、対象等の比較

参考:「保険調剤の理解のために(令和5年度)」「保険調剤の理解のために(令和3年度)」「調剤報酬点数表(令和5年4月1日施行)」に基づき、筆者が作成

    

服薬情報等提供料を算定できない事例

「かかりつけ薬剤師指導料」や「かかりつけ薬剤師包括管理料」、「在宅患者訪問薬剤管理指導料」を算定している患者さんには算定できません。また、特別調剤基本料を算定している薬局では、薬局と不動産取引等その他特別な関係を有している医療機関へ情報提供を行った場合は算定できないため注意が必要です。

また、以下の加算を算定するために、医療機関へ情報提供を行った場合は服薬情報等提供料を併算定できないため、複数の加算を同時に算定しないようにしましょう。

   

特定薬剤管理指導加算2

吸入薬指導加算

調剤後薬剤管理指導加算

服用薬剤調整支援料2

      

3. 【算定事例】服薬情報等提供料の算定を増やすには

処方薬を説明する女性医師と男性患者     

算定要件を理解しても、実際どのように取り組めば算定につながるのかわからない場合もあるでしょう。算定を増やしたいと思ったら、過去事例が参考になります。ここからは服薬情報等提供料の算定例を紹介します。

   

患者さんに残薬を確認し医療機関へ情報提供する

患者さんのなかには、飲み忘れなどが原因で残薬を抱えている人もいます。薬剤師が患者さんから残薬があることを聞き取り、医療機関に情報提供することで服薬情報等提供料を算定できます。特に、処方せん下部の「保険薬局が調剤時に残薬を確認した場合の対応」

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