2023.07.24
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【新連載】利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営

Vol.1 かかりつけ薬剤師の推進で経営改善! 取り組み内容やおすすめしたい患者さんの特徴を紹介

利益を取りこぼさない 薬局マネジメント経営

 

編集部より

調剤報酬改定のたびにマネジメントの工夫が必要となる薬局や調剤併設ドラッグストア。「物」から「人」へのシフトが鮮明になり、地域の医療情報集積とコミュニケーションを担う役割も求められています。地域社会や患者さんのニーズを満たす新しい試みを続けていくためにも、薬局は安定した経営を続けていくことが必要と言えるでしょう。

この連載では、大手薬局グループのエリアマネジャー補佐 篠原奨規(しのはら しょうき)さんが、薬局で実際は行っているのに請求できていない報酬の把握や、見落とされがちな業務の工夫など、利益を取りこぼさないようにする薬局マネジメントについて解説します。

 

第一回は、かかりつけ薬剤師の役割や施設基準について読み解きます。また具体的な取り組みや、かかりつけ薬剤師をおすすめしたい患者さんの特徴もお伝えします。

 

執筆/篠原奨規 管理薬剤師 薬局グループ エリアマネジャー補佐

編集/メディカルサポネット編集部

   

薬局で薬の説明をする薬剤師

  

経営している薬局で、どのようにかかりつけ薬剤師を推進すればよいかわからず、困っていませんか? 近年、患者さんがよりよい医療を受けるために、かかりつけ薬剤師の役割が重要視されています。薬局経営においても、かかりつけ薬剤師の実績は地域支援体制加算の算定につながるため、推進に取り組むところが多いのではないでしょうか。今回は、かかりつけ薬剤師を推進するための具体的な取り組みや、かかりつけ薬剤師をおすすめしたい患者さんの特徴などについて解説します。

 

1. かかりつけ薬剤師とは

クリップボードとペンを持ち屋外に立つ女性医療従事者   

はじめに、かかりつけ薬剤師の概要や役割について、改めて確認しておきましょう。

 

かかりつけ薬剤師の概要

かかりつけ薬剤師とは、医療が必要なときに適切な薬物治療を提供するほか、健康の悩みに関する相談に応えたり、地域の健康維持・増進に貢献したりする薬剤師のことです。

超高齢社会を迎え、近年は地域での医療や介護の需要が増加しています。そうしたなか、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい生活ができるよう「地域包括ケアシステム」の構築が推進されています。そのなかで、薬の専門家として地域の薬物治療の責任を担うのが「かかりつけ薬剤師」です。

2016年度の調剤報酬改定では、「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」が新設され、かかりつけ薬剤師の取り組みが保険点数として評価される仕組みが整いました。

   

地域包括ケアシステムの姿

地域包括ケアシステムにおいて必要なサービスの図解

出典: 厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける 薬剤師・薬局の役割について」

   

かかりつけ薬剤師の役割

かかりつけ薬剤師は、患者さんの服薬情報の管理や健康の悩みに応える役割を担います。具体的には、以下のような業務を行います。

 

患者さんの服用している薬剤をまとめて管理をしたり、服薬フォローアップを通じて継続的に支援したりする「一元的・継続的管理」を行う。

夜間や休日など薬局の閉局時間でも対応できるように24時間体制を整え、外出が難しい患者さんには自宅まで伺い、薬の管理を行う。

処方内容をチェックし、必要に応じて医療機関と連携し、治療の適正化に関わる。

患者さんのパートナーとして、医療用医薬品だけでなく、OTCや健康食品などの適正使用医療や介護について気軽に相談できる窓口となる。

 

2. かかりつけ薬剤師指導料を算定するには

手にペンを持ち、処方せんをチェックする薬剤師    

かかりつけ薬剤師の取り組みを評価する調剤報酬として、「かかりつけ薬剤師指導料」と「かかりつけ薬剤師包括管理料」があります。

「かかりつけ薬剤師指導料」は、かかりつけ薬剤師が担当する患者さんについて、処方医と連携して服薬状況を一元的・継続的に把握した上で、患者さんに対して服薬指導等を行う業務を評価するものです。医療機関で地域包括診療加算などを算定されている患者さんであれば、「かかりつけ薬剤師指導料」の代わりに「かかりつけ薬剤師包括管理料」を算定できます。2023年4月1日に施行された調剤報酬点数表によると、処方せん受付1回につき「かかりつけ薬剤師指導料」は76点、「かかりつけ薬剤師包括管理料」は291点です。

 

「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」を算定するには、以下の施設基準を満たす必要があります。

 

1. 以下の経験等を全て満たす薬剤師を配置していること。

(ア) 施設基準の届出時点において、保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があること。

(イ) 当該保険薬局に週32時間以上(32時間以上勤務する他の保険薬剤師を届け出た保険薬局において、育児・介護休業法 の規定により労働時間が短縮された場合にあっては、週24時間以上かつ週4日以上である場合を含む。)勤務している。

(ウ) 施設基準の届出時点において、当該保険薬局に1年以上在籍していること。

 

2. 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること。

3. 医療に係る地域活動の取り組みに参画していること。

4. 患者との会話のやりとりが他の患者に聞こえないようパーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、患者のプライバシーに配慮していること。

          

3. かかりつけ薬剤師の推進が薬局経営を改善する理由

テーブルの上に積み上げられたコインに上向きの矢印が書かれた経営改善のイメージ  

先にもお伝えしたとおり、かかりつけ薬剤師指導料を算定するには施設基準が多くあります。そのため、状況によっては簡単に算定できない場合もあるでしょう。しかし、かかりつけ薬剤師の推進は、薬局経営の改善につながるものです。具体的にどのような点で薬局経営の改善に寄与するのか解説します。

 

算定により、直接的な利益アップにつながる

「かかりつけ薬剤師指導料」は、通常の服薬指導で算定される「服薬管理指導料」の代わりに算定されるもので、より高い保険点数が設定されています。「かかりつけ薬剤師指導料」は76点の算定で、これまで取り組んでいなかったのであれば、

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