2023.06.19
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薬局エリアマネージャー補佐が語る、薬局経営で利益を取りこぼしやすい点の改善ポイントと対策

薬局エリアマネージャー補佐が語る、薬局経営で利益を取りこぼしやすい点の改善ポイントと対策

   

  

編集部より

調剤報酬の改定などで、薬局の利益が出しにくくなっている現在、管理薬剤師で薬局グループのエリアマネージャー補佐、篠原奨規さんが薬局経営課題の背景を解説します。

薬局経営が厳しい理由や、薬局経営において利益を取りこぼしやすいポイントとその対策についてお伝えします。

 

執筆/篠原奨規 (管理薬剤師 薬局グループ エリアマネージャー補佐)

編集/メディカルサポネット編集部

 

  

  

グラフ:サービス種類別介護費用額の推移

   

    

近年、高齢化が進み医療費の増大が社会問題となっています。医療費を抑制するために調剤報酬の引き下げが行われており、薬局経営は以前と比べると利益を出しにくい状況にあります。本記事では、利益を出しにくい現代の薬局経営において、利益を出すための改善ポイントや具体的な対策を紹介します。

    

       

1. なぜ薬局経営で利益を上げるのが難しいのか

    

医薬分業が推進された1997年頃から、医療機関の前に乱立した調剤薬局。2023年現在、薬局はコンビニよりも多く、約6万店舗あると言われています。以前は「儲かるビジネス」とも言われた薬局経営ですが、近年利益が出しにくく経営が難しい業態となっています。その理由について解説します。

   

調剤報酬や薬価が改定され、利益を出しにくい構造になっている

医療費増大の問題から、調剤報酬の変更や薬価引き下げがなされており、薬局経営で利益を出しにくい構造になりつつあります。

例えば、2022年度(令和4年度)の調剤報酬改定では、後発医薬品調剤体制加算1の算定条件である後発品置換率が75%から80%以上に引き上げられました。その結果、これまで後発医薬品調剤体制加算1を算定していた薬局が同加算を算定できず、利益を出しにくくなっています。

また医療費全体の20%強を占める薬剤料の増加が、医療費増大における1つの課題とされ、2年おきに行われていた薬価改定が2021年度(令和3年度)より毎年改定へと変わりました。改定ごとに医療費削減のために薬剤料の引き下げが行われており、薬局経営の利益である薬価差益を得られにくくなっているのが現状です。

利益の源泉である加算や薬価差益を得られにくい構造となっており、薬局経営は難しくなってきています。

  

出典: 厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」             

  

処方せんに対応するための時間が長くなり、人件費が高くなる

利益を上げにくい要因として、人件費の増加も見逃せません。

高齢化によって、処方せんの発行枚数や処方せん1枚にかかる調剤時間が増加しており、薬剤師の業務負担が増えています。実際、厚生労働省のデータでは、2000年と2018年の年間処方せん枚数を比べると、3億枚も増加していることが分かります。また、高齢者は1度に処方される薬剤数が多い傾向にあるため、高齢化に伴い処方せん1枚あたりの調剤時間が長くなりがちです。その結果、薬局運営に必要な薬剤師の勤務時間が長くなることで人件費が高くなり、利益の減少につながってしまうのです。

    

     

2. 薬局経営で利益を上げるには?着目すべきポイント

    

さまざまな課題があるものの、適切な対策を打つことで利益アップを期待できます。具体的な改善方法は後述しますが、まずは、着目すべきチェックポイントを見てみましょう。

    

来局者を増やす取り組みを実施

来局者を増やし、売上高を上げることが利益に直結します。そのためには、地域イベントの開催や医療機関や看護ステーションと連携をとるなど、地域の患者さんとの接点を増やすとよいでしょう。できるだけ地域密着で、かかりつけ薬局として処方せんを持ってきてもらえるように取り組むことが大切です。

    

処方せんの取りこぼしを防ぐ

処方せんの取りこぼしは売上高の減少につながります。その際、注意したいのが、在庫欠品による取りこぼしです。特に国立病院をはじめとする基幹病院では、珍しい医薬品や処方せん単価が100万円を超えるような高額処方せんが処方されることがあります。基幹病院の門前以外の薬局では備蓄していない医薬品が処方されることも多いかもしれません。しかし取りこぼしを防ぐためには、事前に医薬品を備蓄しておくなどの対策が必要です。

    

算定要件を満たし、積極的に加算につながる業務を実施

 

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