2018.10.26
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アレルゲン免疫療法における「アレルギー病態の自然史を修飾する」とは?

メディカルサポネット 編集部からのコメント

「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」に悩まされるアレルギー性鼻炎。症状の抑制だけでなく、職場や生活環境をふまえQOLを考慮した治療が求められています。アレルギー病態の自然史の修飾について、東北医科薬科大学・太田伸男先生が解説されてます。

 

舌下免疫療法がわが国でも普及してきましたが,アレルゲン免疫療法によって期待されている「アレルギー病態の自然史を修飾する」ことについて,具体的に教えて下さい。東北医科薬科大学・太田伸男先生にお聞きしたいと思います。

【質問者】

後藤 穣 日本医科大学耳鼻咽喉科准教授

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【回答】

【新規アレルゲン感作などの予防作用によって長期経過において症状を改善】

 

アレルギー性鼻炎は,発症の低年齢化と自然寛解率の低さから,いわゆる働き盛りの世代に患者が多く,日常生活のQOLが著しく低下すると報告されています。したがって,症状の抑制だけでなく,職場や生活環境をふまえQOLを考慮した治療が求められています。様々な薬物も開発され,薬物療法により症状は軽減し,QOLも向上していますが,寛解を含めた自然経過を改善する可能性があるのは,アレルゲン免疫療法のみです。近年スギおよびダニ特異的舌下免疫療法も臨床応用され,治療の選択肢が広がっています。

 

アレルゲン免疫療法は“予防作用”によってアレルギー疾患の自然経過を修飾しえます。予防作用は,①新規アレルゲン感作の予防作用,②喘息など他のアレルギー疾患発症の予防作用,③治療終了後の再燃予防作用,の3点にまとめられます。これまで長年施行されてきた皮下免疫療法によって,喘息発症の予防に関する報告がなされています。舌下免疫療法における新規アレルゲンに対する感作予防について,小児花粉症患者を対象にした検討で,3年後の新規アレルゲンの感作率がアレルゲン免疫療法で有意に低値を示すことが報告されています。また,6~14歳の花粉症患児を対象にした3年間の皮下免疫療法によって,有意な喘息の発症抑制効果が認められただけでなく,その後7年間の経過観察で,長期にわたり喘息の発症と気道過敏性が抑制されていることも示されました。

 

アレルゲン免疫療法は喘息の発症を抑制し,その効果はアレルゲン免疫療法終了後も持続することが期待されます。小児イネ科花粉症患児に対する3年間の皮下アレルゲン免疫療法は,終了6年後および12年後で症状スコアと薬物スコアが有意に抑制されており,治療終了後の効果継続作用が長期的に確認され,再燃の予防効果が高いことが確認されました。

 

以上のことから,アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法は“予防作用”によってアレルギー疾患の自然史を修飾する可能性が示唆されました。

 

【参考】

▶ Okuda M:Ann Allergy Asthma Immunol. 2003;91(3):288-96.

▶ 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症 2016年版. ライフサイエンス, 2016.

▶ 日本鼻科学会:日鼻誌. 2013;52(4):435-88.

▶ Masuyama K, et al:Auris Nasus Larynx. 2016; 43(1):1-9.

▶ Okamoto Y, et al:Int Arch Allergy Immunol. 2015;166(3):177-88.

▶ Bousquet J, et al:J Allergy Clin Immunol. 1998;102(4 Pt 1):558-62.

▶ Dretzke J, et al:J Allergy Clin Immunol. 2013;131(5):1361-6.

▶ Kiel MA, et al:J Allergy Clin Immunol. 2013;132(2):353-60.

 

【回答者】

太田伸男 (東北医科薬科大学耳鼻咽喉科教授)

 

執筆:

後藤 穣 (日本医科大学耳鼻咽喉科准教授)

太田伸男 (東北医科薬科大学耳鼻咽喉科教授)

 

 出典:Web医事新報

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