2023.09.22
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医療DXのメリット、電子カルテ未導入施設への対応は?〜内山博之(厚生労働省医薬産業振興・医療情報審議官)【この人に聞きたい】

メディカルサポネット 編集部からのコメント

現在医療分野でも介護分野でも急ピッチで進められているDX(デジタルトランスフォーメーション)。医療・薬機・介護の世界でなぜ電子化が必要となったのか、政府の狙いと今後すすめられて行く施策の方向性はどうか。厚生労働省産業振興・医療情報審議官が解説します。

                                  

間接経費を極力少なくし 本来の医療にリソースを割くことが 医療DXのポイントです

うちやま ひろゆき:1991年東京大学法学部卒、厚生省(現厚生労働省)入省。厚労省年金局総務課長、内閣審議官、デジタル庁統括官付審議官などを経て、2023年7月より厚労省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官。

 

政府は、医療DX推進本部が今年6月に公表した「工程表」(表参照)に沿って医療分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)を急ピッチで進めようとしている。電子カルテ未導入施設が多く、電子処方箋の普及も進まない中、医療DXのメリットについて医療機関・薬局の理解をどのように得ていくのか。7月に担当審議官に就任した厚生労働省の内山博之氏に話を聞いた。

  

─医療DXにはどのようなメリットがあると考えていますか。

  

医療DXの推進には3つの側面があります。

  

1つは医療の質や国民の健康の質を高めるという側面。2つ目は、国民の手続きを簡便にするなど利便性を高めるという側面です。

  

3つ目は、デジタル庁も特に意識をしていることですが、これからの日本は大きな経済成長は見込めず、人口も減少していく。今は医療保険制度で医療の大半が賄われていますが、現在40兆円台の医療費が今後大きく拡大するということはないと思います。一方でどの分野も人材不足が課題になっていて、医療も医師不足などの問題がある。そうした状況の中で医療全体を効率化・重点化していく必要があります。

  

医療技術は進歩し、医療従事者の待遇も上げていかなければいけないので、できる限り本来の医療にリソースを振り向けたい。医療現場には多くの事務作業があり、紙がたくさん行き交っていますが、デジタルを使ってあるべき医療に財源や人材を振り向けたい、というのが医療DXの3つ目の狙いだと考えています。

  

間接経費を極力少なくし、本来の医療にリソースを割くことが医療DXのポイントです。

  

標準型電子カルテを開発し試行的に先行実施

─医療機関には電子カルテの未導入施設が多く、薬局も電子処方箋に対応できないなど医療DXの推進には多くのハードルがある。

  

小規模のクリニックや歯科クリニックは電子カルテ未導入施設が多いのが現状ですが、基本的には必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入は進めないといけない。マイナ保険証を進めて、その次に電子処方箋、その後電子カルテと段階的に広げていくことが大事かと思います。

  

小規模な医療機関向けに標準型電子カルテの開発をデジタル庁と一緒に進める予定になっています。今年度中に要件定義に関する調査研究を行い、2024年度中に開発し、一部のクリニック等で試行的に先行実施ができればと考えています。

  

導入のコストと手間を極力小さくして、2030年には概ねすべての医療機関で医療情報が共有できるような電子カルテの導入を目指したいと思っています。

  

オンライン資格確認の顔認証端末などは補助等もあって多くの医療機関で導入されています。標準型電子カルテも取り組みやすいものをつくっていきたいと思います。

  

薬局も、電子処方箋があれば手で打ち込む作業が基本的になくなりますので、間違いは少なくなるし手間や人的コストの削減につながります。そうしたメリットを実感していただきながら進めていきたいと思います。

医療DXで「面で支える医療」を拡げていく

─医療機関は地域で情報が共有されることのメリットを実感しにくいのが現状かと思います。

  

例えば、糖尿病と眼疾患、糖尿病と歯周病なども関係が深いといわれています。糖尿病を診る内科と歯科の情報などを連携すれば患者の健康維持に役立つと思います。

  

地域によっては中核的な医療機関と周囲の医療機関が電子処方箋を含めて面的につながりつつあるところがありますので、そうした取り組みを増やしていきたいと思います。その過程で医療機関の事務負担の軽減、リソースの見直しが進められれば、メリットを実感していただけると思います。

  

人口が減少し経済成長もそれほど見込めない日本では、地方に限らず都市部でも、1つの医療機関だけでなく面で支える医療が必要になってきます。その中でDXの果たす役割はますます大きくなると考えています。

  

(聞き手・山崎隆志)

                            

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 出典:Web医事新報

     

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