メディカルサポネット 編集部からのコメント国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授の和田耕治氏が、ワクチンが開発された場合の接種希望について行った調査結果(2014年)を元に、新型コロナウイルスのワクチン接種に向けて、必要な政府の信頼感について考えを述べています。新しいワクチンであること、筋肉注射であること、一定の確率で副反応とも考えられる症状も起こりえることから、きちんと評価して国民に説明する政府の役割は大きく、そこには高度なコミュニケーションが求められるとしています。 |
新型コロナウイルスのワクチン接種が諸外国で始まり、我が国でも来年の上半期には接種が始まる可能性が見えつつある。接種の優先順位も検討されており、現在の案では、まずは医療従事者、次いで高齢者となっている。
少し古いが、筆者らが20〜69歳の市民を対象として2014年に行った調査(Wada K, et al:BMC Public Health. 2015;15:426.)では、政府のワクチンに関する推奨や判断への信頼感について、「信頼していない」4%、「あまり信頼していない」23%という結果であった。また、「自覚的健康感がよい」という人と比較して、男性、女性ともに「自覚的健康感があまりよくない」、さらに女性では「よくない」と回答した人において、有意にこうした不信感が高かったことが示された。この結果からの解釈であるが、基礎疾患のある人は自覚的健康感が比較的よくないと考えているとすると、接種を優先されたとしても、実は心の中ではそうした不信感もあるかもしれないことを念頭に置いて、丁寧な説明が必要であると考えている。
この調査では「新型インフルエンザ」のワクチンが開発されたという仮定で、接種希望について問うたところ、「ある程度の人が接種し、安全を確認した後に接種したい」と回答した人が31.5%であった。男女別では、女性の方が37%と高率であった。また、自覚的健康感のよくない人も、この回答が多かった。
ワクチン接種の推進では、効果と安全性という軸が重要である。欧米での流行規模は日本とは桁違いであり、日本人の接種への意識とはかなり異なることも予想される。また、新しいワクチンであること、筋肉注射であること、一定の確率で副反応とも考えられる症状も起こりえることから、きちんと評価して国民に説明する政府の役割は大きい。今後は、接種する便益とリスクについてきちんと説明がなされるべきであるが、そこには高度なコミュニケーションが求められる。
今、Go Toトラベルなどへの対応を巡って政府への批判が高まり、政府への信頼感が損なわれていることを個人的に危惧している。ワクチン接種に向けて、政府の信頼感をぜひとも高めていただきたい場面だと考えている。また、衆議院議員総選挙の噂もあるが、ある国のようにワクチン接種が変な形で争点とならないようにとも願っている。
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス対策]
出典:Web医事新報