2022.05.06
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看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメント

vol.1 現場管理編 ~産業医から看護管理者へのメッセージ~

看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメント

 

 

編集部より

皆さんの職場に仲間入りした新卒・中途採用看護師の方たちは研修を終えて各配属先で生き生きと看護実践できていますか?昨今、働く人たちのメンタルヘルスが重視され、さまざまな取り組みが行われていますが、医療現場に目を向けるとその実態はどうでしょうか?厚生労働省の調査によると、保健師・助産師・看護師は令和2年度(2020年度)における精神障害による労災請求件数の多い職種の第3位となっていることがわかります。中小規模病院やクリニックでは、医療従事者のメンタルヘルスサポート体制が十分とはいえません。メンタル不調による休職や退職は、本人だけでなく組織にとっても大きな影響を及ぼします。スタッフのメンタル不調に気付いた時、最も近い看護管理者は何をすべきなのでしょうか?

 

本特集では、看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメントと題して、産業医・社会保険労務士・看護管理者、それぞれの視点からお話しいただきます。第1回「現場管理編」は、看護師がメンタル不調を来す背景や経営者や現場の看護管理者として知っておくべき「4つのケア」について、産業医・労働衛生コンサルタント・精神科医の室井慧さんによる解説です。

 

執筆/室井 慧(産業医・労働衛生コンサルタント・精神科医)

編集/メディカルサポネット編集部

 

医療者特有のメンタルヘルス不調の要因

看護師という職業はメンタルヘルス不調のハイリスクといわれています。看護師は、緊急入院の患者、手術を受ける患者、終末期を迎える患者など多様な患者に対して適切なケアを提供することが求められます。加えて、長時間労働や交代制勤務、感染性物質・危険物への曝露、慢性的な人員不足、職場内の対人関係困難など多くのストレス要因も存在します[1]。

 

また、医療者は自身が大変なストレスを抱えながらも、自身のケアよりも患者のケアを優先する傾向にあります。自己犠牲の精神が強い看護師はメンタルヘルス不調の傾向が強い可能性があると報告されています[2]。

 

さらに、医療者自体が精神疾患について偏見を持っているケースもあるために、医療者が周囲に助けを求めることには消極的といわれています[3]。

 

看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメント 画像 

 

本人はもちろん、経営・医療安全にも影響しかねない看護師の高ストレス状態

高いストレスを抱えた状態が続くと、燃え尽き症候群やうつ状態につながります。両者を明確に線引きすることはできませんが、気分の落ち込み、仕事への意欲の減退、睡眠・食欲の減退などが主に症状として現れます。症状が続けば休職につながり、さらには離職意思・退職となることもあります。安定した人員を確保し、持続した病院運営を行う上で、看護師のメンタルヘルス対策は欠かせません。

 

また、看護師のメンタルヘルス不調は医療過誤・インシデント増加、入院患者満足度の低下、入院患者死亡率の増加につながると言われています[4]。医療安全、医療の質という観点からも看護師のメンタルヘルスは重要なのです。

 

看護師がメンタル不調を訴えた時の人事・労務マネジメント 画像

 

 

看護管理者が知っておきたいメンタルヘルスマネジメント「4つのケア」とは?

では、看護師のメンタルヘルスについてどのように管理すればよいでしょうか。ここでは「4つのケア」という考え方とその方法について紹介します。

 

「4つのケア」とは、

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