2022.02.03
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介護事業所で活用される ICT
~その期待と懸念~

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ Vol.5

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ 

 

編集部より

来るべき”2040年問題”に向けて、介護事業所の経営はこれからさらに厳しさを増すと予想されています。いかにして生き残るか。経営者たちはその手腕が問われようとしています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」と称して時にピリ辛に、時に激辛に現状と課題、今後の展望を伝えていただきます。第5回は、介護事業所が活用すべきICTについてです。さまざまなICT機器の活用によって、介護職者の働き方改革が進んでいます。パソコンやタブレットはもちろんのこと、他にも多くの機器の活用が期待されています。一方で、ICT活用による配置基準緩和を進めようとする政府の考え方に対して菊地さんは強い懸念を抱いています。ICTを充実させれば人手は最小限でいい、果たして本当にそうなのでしょうか?

 

ICTを活用しなければ円滑に進まなくなる時代の到来

 

後期高齢者の数が増え続ける中で、生産年齢人口の減少が止まらない我が国では、介護人材不足問題は解消の手立てがないばかりか、その状況は一層悪化することが予測されます。そのため介護業務のあらゆる部分に、人に代わる機器を活用することが必然となってきます。もちろん人に代わって介護ができるロボットは存在しないのが現状ですから、介護業務そのものを機器に置き換えることはできません。しかし、今使える技術は積極的に介護事業に取り入れて省力化を図っていかねば、介護業務負担から介護職員がバーンアウトし、事業経営自体が難しくなる恐れがあります。

 

一方で、業者の宣伝文句に踊らされて使いこなすことが難しい機器を購入し、介護職員に活用を強制することがストレスとなり、退職につながるケースもあります。その結果、購入した機器が倉庫の肥やしになってしまっている現実もあり、安易に機器導入さえ進めればよいということにはなりません。使える機器とはどのようなものなのかを、現場目線で考えなければならないのです。

 

 

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使いこなしてほしいガジェット記録

 

例えば介護記録などをICT化して、パソコン・タブレット・スマートフォンなどで作成することにより、介護スタッフが手書きの書類作成に取られていた事務仕事の時間が短縮できます。もちろん、心理的な機器アレルギーで、手書きの方が早いと思っている人も多い現状があることは承知していますが、記録のデータベース化も必要になることを考えると、業務上必然とされる記録については、ICTを活用する方向で検討することが、将来的には確実に業務負担軽減につながります。

 

居宅介護支援事業所をはじめとした訪問サービスの場合、タブレットやスマホといったガジェットに記録することで、書類作成のために帰社する必要がなくなります。それによって無駄な移動時間が省けるだけではなく、ガジェットで利用者情報のデータベース化が可能になり、いつでもどこでも必要な利用者情報を引き出すことができ、訪問と訪問の間の車中でオンラインによるサービス担当者会議に参加することも可能となるのです。

 

 

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見守りセンサーとインカムの利便性

 

夜勤業務が伴う居住系サービスでは、見守り機器の導入が必然となっています。それにより、定時巡回に充てていた時間に記録が行えるなど業務の効率化が図れます。定時巡回をなくすことで可能になる業務は多々あります。それぞれの施設の事情に応じて必要な業務や職員の休憩を組み入れるなどして、サービスの品質向上もしくは、職員の仕事のパフォーマンス向上につなげられるのです。

 

さらに事業所内で介護業務が完結するサービスでは、

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