2021.12.06
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介護職員の給与引き上げ政策を考える
~政府の閣議決定「介護・障害福祉職員を対象に収入を3%引き上げる」を斬る!~

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ Vol.3

菊地雅洋 masa コラム メディカルサポネット 

 

編集部より

来るべき”2040年問題”に向けて、介護事業所の経営はこれからさらに厳しさを増すと予想されています。いかにして生き残るか。経営者たちはその手腕が問われようとしています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」と称して時にピリ辛に、時に激辛に現状と課題、今後の展望を伝えていただきます。第3回は、先日政府が閣議決定した介護職員の賃上げについてです。もともと他の職種と比較して低いと言われている介護職の給与ですが、今回、給与の3%程度である9,000円/月の賃上げが予定されています。しかし、介護事業者の収入の多くは公費であるころから、その財源の出どころによっては、介護サービスを受ける高齢者に影響を及ぼす懸念もあります。今回の賃上げで、介護職の未来に光は差すのでしょうか?!

 

介護人材不足の要因の1つは給与の低さ

 

慢性的な人材不足に陥っている我が国の介護業界。2021年7月に厚生労働省が公表した介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数によると、2040年度には約69万人を追加で確保する必要があるとされていますが、そのめどは立っておらず、このままでは大量の「介護難民」が発生するのではないかという懸念がぬぐえません。

 

公益財団法人・介護労働安定センターが公表している「令和元年度介護労働実態調査の結果」を見ても、人材が不足している理由として90.0%の介護事業者が、「採用が困難であること」を挙げています(以下図参照)。このように人材確保の改善見込みさえないのが現状ですが、その最大要因は少子高齢社会が進行し、後期高齢者を中心に介護を必要とする高齢要介護者が増え続けている中で、生産年齢人口の減少に歯止めがかからないことによるものです。

 

 

不足している理由(複数回答)

菊地雅洋 コラム 介護労働実態調査 メディカルサポネット

 

「令和元年度介護労働実態調査の結果」8ページより

(注)回答事業所数は、「過不足の状況」の全体でみた場合で「大いに不足」、「不足」、「やや不足」のいずれかに回答した事業所 4,602(全体の65.3%)(※メディカルサポネット編集部にて図表を再構成)

 

 

しかしそれとともに、介護職員の賃金が低いことが原因で職員募集に応募がないという考え方も根強く存在します。そのことを裏付けるように公的価格評価検討委員会(第1回)の「資料4公定価格の制度について」の資料4ページ、「職種別平均賃金(役職者除く)(月収換算)」を見ると、職種別の月額平均給与が全産業平均で35万2千円なのに対し、介護職が29万3千円とされています。

 

 

菊地雅洋 masa コラム 介護士 賃上げ

「職種別平均賃金(役職者除く)(月収換算)」 

公的価格評価検討委員会(第1回)「資料4公定価格の制度について」より

 

 

これを見ると、介護福祉士養成校の入学希望者が増えない要因も、賃金の低さから将来性がないと考える若者が多いからであるという指摘にも説得力を感じざるを得ません。

 

 

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