2021.11.08
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科学的介護と経営の実践

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ Vol.2

 

 

編集部より

来るべき”2040年問題”に向けて、介護事業所の経営はこれからさらに厳しさを増すと予想されています。いかにして生き残るか。経営者たちはその手腕が問われようとしています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」と称して時にピリ辛に、時に激辛に現状と課題、今後の展望を伝えていただきます。第2回は、2021年4月から始まった科学的介護情報システム(LIFE)に関する激アツ考察です。そもそも「科学的介護」とは何を意味するのでしょうか?IT化?ロボットの導入?みなさんはどう考えますか?また、初年度でありまだまだエビデンスが生まれにくい状況の中、事業所内で何をやるべきか、菊地さんの具体的な提案はすぐに現場で活かせるものです。選ばれる介護事業所になるためにもLIFEを活用しない手はないのです。

 

科学的介護元年スタート

 

国の介護データベースは、本年4月からVISITとCHASEを統合したうえで科学的介護情報システム(通称LIFE)と改称されました。また新報酬体系では、訪問リハビリ以外の訪問サービスを除いた全サービス横断的に、「科学的介護推進加算」を新設しました。

 

そこではLIFEへの定期的な情報提出を求めるとともに、LIFEからのフィードバックをPDCA活用することを算定要件にしています。(以下LIFE要件とします)そのほか各サービスのさまざまな加算にLIFE要件を課して、たくさんのデータをLIFEに集積するようにしています。このデータを解析し、科学的介護を生み出そうとしているわけです。

 

科学的介護という言葉自体は、かなり以前から存在していました。しかしそれは明確な定義づけがされているものではありませんでしたし、その方法論も確立していませんでした。そこで今年度からは国を挙げてデータを収集・解析したうえで、科学的介護を確立させようと動き始めたのです。だからこそ今年度は「科学的介護元年」といってよいのだと思います。

 

 

 

 

 

科学的介護とは何か?その目的は?

 

テレビアニメ「ドラえもん」を見て育った世代の人々は、科学という言葉から「どこでもドア」のような便利な道具を想像し、科学的介護もAI搭載ロボットやICTといった最先端機器を活用した介護と考えがちですが、それは間違った考え方です。

 

科学とは、客観性や論理的な推論の過程を重視するもので、いかなる状態で、どのような現象が起きているのかを探求することです。さすれば科学的介護とは、根拠と結果が問われる方法論であり、「こうすればこうなる」という因果関係を見つけ出して、その因果関係を生み出す方法を実践する介護のことを言うのです。

 

つまり科学とは、「科学的根拠」を意味すると考えられます。よって再現性があるのが科学的介護です。行き当たりばったりで、結果オーライの方法論は非科学的介護として否定されていくのです。

 

国が科学的介護の実現を目指す最大の理由は、サービスの質の差をなくすというものです。ある程度予測された結果に結び付ける方法論を作り上げることによって、利用者の自立支援とQOLの向上といった結果に結び付く、一定水準以上のサービスの質を担保することが求められるのです。

 

そのためLIFEに集積した情報を解析し、それを介護事業者にフィードバックします。介護事業者はフィードバックされた内容を運営方針やケアプランに反映することで、常にサービスの質の向上を目指していかねばならないことになります。

 

 

 

 

 

PDCA活用の具体的方法

 

LIFE で作成されるフィードバック票は、事業所票と利用者票の 2 種類から構成されています。これを介護事業者ではPDCA活用することが求められます。そのことについて国の資料、『個別化された自立支援・科学的介護の推進例(イメージ)』では、事業者フィードバックの例としては、「入所者の要介護度は全国平均より低くADLも良好であり、食事摂取場所も全国平均と同様に居室外が多いのだから、排せつは全国平均よりオムツにする人が多いので、更なる改善が必要」としています

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