2021.10.11
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選ばれる介護事業所であるために

菊地雅洋の激アツ!介護経営塾 ~選ばれる介護事業所であり続けよ~ Vol.1 

 

 

編集部より

来るべき”2040年問題”に向けて、介護事業所の経営はこれからさらに厳しさを増すと予想されています。いかにして生き残るか。経営者たちはその手腕が問われようとしています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」と称して時にピリ辛に、時に激辛に現状と課題、今後の展望を伝えていただきます。第1回は今、介護事業経営者が置かれている経営状況と、これから経営者に必要なことをアツく語っていただきました。団塊の世代を中心に、これからピークを迎えると予測される日本の介護市場。皆さんは選ばれる介護事業所であるための準備はできているでしょうか?

 

激アツ!介護経営道場スタート

 

このたび、1年間の連載をすることになりました、北海道介護福祉道場あかい花代表の菊地です。

 

私は現在、介護関連研修講師として全国で講演活動を行う傍ら、介護人材の育成活動や介護事業経営コンサルタントとして活動しています。それ以前は、社会福祉法人が経営する特養や通所介護等の相談援助業務やケアマネ業務の経験を経て、法人理事・施設及び居宅サービス事業所の総合施設長として介護事業経営にも携わってきました。これらの経験を生かして、介護実務・相談援助から介護事業経営まで幅広い視点で現状と課題を論じてみたいと思います。

 

 

 

 

ぬるま湯の運営から、厳しい経営状況に直面する介護事業

 

介護業界は長い間売り手市場が続き、介護事業者は客を選ぶ立場で、顧客から選ばれなくとも事業経営が成り立っていました。この状況は介護保険制度が創設された後も変わりなく続きました。特に制度施行後数年間は、後に”介護バブル”と称される単価の高い介護報酬と、国が国民に対して介護サービス利用を盛んに促す政策によって、経営能力がなくとも介護事業さえ立ち上げれば、自然と顧客が確保でき収益が挙がって介護事業経営は容易でした。

 

しかし一旦介護保険制度が国民に認知され、浸透されていくと、国は掛けたはしごを外しにかかりました。すなわち、介護サービスを介護給付と予防給付に分断し、サービス利用を抑制するシステムを導入するとともに、利用抑制の網は報酬改定ごとに引き絞ることができるようにしました。そして介護事業者が大きな利益をあげているとして介護報酬の引き下げが断行されるようになったのです。

 

そのため、介護事業者は運営コストを削るなどの企業努力を続け、事務経費や人件費を圧縮・効率化しようとしました。しかしその結果、さらに利益が生じていれば容赦なく報酬は切り捨てられるようになりました。

 

しかも介護保険制度の一面とは、介護を市場原理によって自立させ、高齢者福祉をビジネスとして民間営利企業にアウトソーシングすることなのですから、それまで介護事業とは縁のなかった多くの民間営利企業が、介護ビジネスに参入してくるようになりました。そのため一部のサービスは、地域によって過当競争という状況が生まれ、顧客が確保できずに経営困難となり事業廃止に追い込まれる介護事業者が増大しています。

 

 

 

 

また民間企業が参入できない施設サービスにおいても、措置制度の時代のように、営業努力をしなくとも多数の待機者を抱えて満床の状態が続くという状況ではなくなりつつあります。一部の地域では高齢者数増加のピークが過ぎ減少に転じています。その中で介護保険施設以外の居住系施設として、サービス付き高齢者住宅などの選択肢が増え、それらと競合して特養でもベッドが埋まらないという状況が生じ始めており、相談援助職の主要な業務が顧客確保のための営業活動であるという状況も生まれています。

 

このように介護事業は、運営すれば成り立つ時代から、的確な経営を行わないと成り立たない時代に入っているのです。

 

顧客の中心層、団塊の世代をつかめ

 

 

 

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