2024.07.11
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科学的介護情報システム(LIFE)の現状と課題

~菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営~Vol.6

    

編集部より

介護事業の運営は厳しさを増し、利用者や職員の期待に応えられない事業所は、淘汰される時代に入っています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」として、ある時は厳しく、あるときは優しく、経営指南を頂きます。

 

「菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営」第6回は「科学的介護情報システム(LIFE)の現状と課題」です。

新システムとなり、8月1日から、令和6年度報酬改定に対応した様式の情報の登録が可能となるLIFE。改善が行われ「科学的介護」は生まれるのか。辛口で解説いただきます。

 

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

      

 

1. 新システムに変更されたLIFEの改善事項

入力をする介護職員

 

科学的介護情報システム(LIFE)は、4月22日より新システム変わり一部機能が稼働しているが、令和6年度報酬改定に対応した様式の情報は令和6年8月1日より登録が可能となる予定とされている。新年度からLIFE関連加算のデータ提出頻度を3月に1度以上に統一しているのに、それに合わせた改修が行われていないことは、このシステムの相変わらずの難点を表わすものであると思えるが、そのほかにも問題は山積みである。

 

2024年度の介護報酬改定に関連して、LIFEの改善について次の3点が改善事項として示されている。 

  • 入力項目について、複数の加算で重複項目は整理し、フィードバックを充実させるための項目は追加する
  • LIFEへのデータ提出頻度について、少なくとも3か月に1回に統一する(※初回のデータ提出時期について、他のLIFE関連加算と揃えることを可能とする。)
  • フィードバックにおいては同じ要介護度の方との比較、全国集計値だけでなく地域別等のより詳細な層別化、複数の項目をクロス集計すること等の見直しを行う

 

加算ごとに同じデータを重複して打ち込まなくてよくなることは歓迎できるが、他の加算とデータ提出の頻度を統一するためという理由で、科学的介護推進体制加算など6か月に1回以上とされていたデータ提出を3か月に1回以上に変更されていることはデータ提出担当者にとっては大きな負担増である。そうであるにもかかわらず算定単位が変わらないことを憤る関係者は少なくない。それどころか算定単位が下げられている加算もある。例えば特養の自立支援促進加算は20単位/月マイナスとなっている。データ提出頻度が増えているのに伴い、医師の医学的評価も「6か月に1回」から「3か月に1回」に増えて、手間が倍になっているのに算定単位が下げられるというのは一体どういうことだろう。しかも老健の同加算は下げられていないのである。この差は何故生じているのだろう。

      

2. フィードバックの改善で科学的介護は生まれるのか

さらに問題なのはフィードバックである。「詳細な層別化、複数の項目をクロス集計」といっても、所詮それは全国平均値と、データ提出事業者の数値比較でしかない。地域性も属性も異なる比較に何の意味があるのか。そのようなもので介護の実践法と結果の因果関係など導き出すことできると思えず、科学とは縁遠いものであると言って過言ではない。

 

過去にさかのぼると2020年12月18日の介護給付費分科会【参考資料3】 審議報告案にかかる参考資料の136頁と137頁には「個別化された自立支援・科学的介護の推進例(イメージ)」が掲載されているが、その図はLIFEのフィードバックの将来像であると説明されていた。

 

 この参考資料では、栄養状態と歩行状態改善、ADLと排泄自立の因果関係を示して、計画見直し等のPDCA活用に結びつけるフィードバックを行うとしていたが、今回のシステム改修の結果は、そのような介護の方法と結果の因果関係を導き出すようなフィードバックは不可能だということが結論付けられたといってよい。

 

そもそもフィードバックとは、LIFEが各事業所の提出情報を解析して読み取った、

 

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