2024.03.11
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2024年度介護報酬改定と基準改正の概要を見据えて思うこと

~菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営~Vol.3

    

編集部より

介護事業の運営は厳しさを増し、利用者や職員の期待に応えられない事業所は、淘汰される時代に入っています。本コラムでは「masaさん」の名で多くの介護事業経営者たちから慕われる、人気介護事業経営コンサルタント菊地雅洋さんに、「介護経営道場」として、ある時は厳しく、あるときは優しく、経営指南を頂きます。

 

「菊地雅洋の波乱万丈!選ばれる介護経営」、第3回は「2024年度介護報酬改定と基準改正の概要を見据えて思うこと」です。

サービス種別によって大きく差がついた基本報酬、手厚くされた処遇改善、加算配分をどうするかなど、具体的な対策に踏み込んで解説します。 

 

執筆/菊地雅洋(北海道介護福祉道場あかい花 代表 介護事業経営コンサルタント)

編集/メディカルサポネット編集部

   

       

1. 処遇改善を手厚くした報酬改定

 2024年度の介護報酬改定率は+1.59%(介護保険施設等の光熱水費等0.45%プラス分を勘案すると+2.04%相当になる見込み)と過去2番目の大きな引き上げ幅となった。そのうち0.98%は処遇改善の引き上げ分であり、他産業との平均給与より低い介護職員等の給与改善のための対策が講じられたと言える。とはいっても介護事業経営者からすれば、その額は他産業との格差を埋めるまでには至らない中途半端な額でしかないという不満もあろう。しかし処遇改善については2023/12/2の鈴木俊一財務相と武見敬三厚生労働相の折衝で、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップを図ることができるように財源を確保し、なおかつ2026年度についても、賃上げの進捗や他産業の動向などを踏まえて直前の予算編成過程で判断し、2026年度の期中改定も視野に対応を検討することが合意済みである。介護事業経営者は、国のこうした対策を介護職員等に十分に反映できるように、従前の処遇改善3加算と、2月~5月までの処遇改善支援補助金が統合・一本化されて6月に新設される「介護職員等処遇改善加算」については、最上位加算のⅠを算定し配分できるように鋭意努力を行う必要があるだろう。

     

2. 介護事業経営者の悩みの種は加算配分をどうすべきか      

 介護職員等処遇改善加算については、「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとするが、事業所内で柔軟な配分を認める」として介護事業者の裁量権を大幅に拡大し、実質的に配分方法も事業者判断に委ねられている。さらに配分については、算定事業所単位ではなく法人単位で行うことも可能としている。(※ただし加算算定のできない事業所職員への配分は不可)

 

 そのため配分可能とされる事業所の全職種横断的に加算配分を検討している事業者もあるし、主旨に沿って介護職員のみに配分するとしている事業者もある。どの方法が正しいのかという全国共通の答えは存在しない。それぞれの介護事業者が、現在の職場環境・職員待遇や処遇改善以外の事業収益をどの程度給与改善額に回すことができるのかを考慮しながら、その事業者にとって何がベストなのかを模索する必要がある。

 

 その際、現在の加算体系が変更され新たな体系になることについて、職員全員に丁寧な説明を行い、コンセンサスを得ることが重要である。この過程をおざなりにすると、職場の人間関係をはじめとした環境悪化につながり、退職者が続出しかねないので最大限の配慮を求めたい。ただ一つ言えることは、職員の処遇改善を加算のみで対策しようとしないことが大事であるということではないだろうか。

      

3. メリハリのある本体報酬改定~施設サービスも種別による泣き笑いが生じた

訪問介護に行くヘルパー 

 介護事業者の収益につながる本体報酬の改定率は+0.61%であった。この数字は全事業横断で物価高による経費増を補って収益を確保できる報酬体系にできる数字ではないために、

 

 

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