編集部より

一般的な企業でも新人研修で習う接遇マナーですが、医療機関や介護施設での接遇マナーは事業会社・小売店や飲食店などとは異なる側面を持ちます。足が痛くて治療に来ている患者さんに席次が良いからと遠い奥の席をすすめたり、体調が悪い利用者さんのところに強い柔軟剤の香りをさせて行くなどの行動は、医療機関職員や介護事業所職員なら避けたいものです。基本的な接遇マナーとその考え方を学びながら、本当に相手のためを思った行動ができるように工夫していきましょう。

講師は病院、薬局などで20年を超える患者対応経験があり、薬剤師資格を持った医療接遇コミュニケーションコンサルタント、村尾孝子さんです。

第2回は、医療接遇で配慮したいポイント一覧の、身だしなみ、挨拶、言葉遣い、姿勢・態度、席次、電話応対についてを解説します。まずは最低限覚えておきたいポイントです。

 

執筆/村尾 孝子(医療接遇コミュニケーションコンサルタント スマイル・ガーデン代表)

編集/メディカルサポネット編集部

   

目次

 

 前回は、医療機関に接遇が必要な理由等についてお伝えしました。今回は、医療介護施設の接遇で気を付けたいポイントをまとめてご紹介します。

 接遇とは「おもてなしの心を持って相手に接すること」。そして、「おもてなしの心」「思いやりの心」を見えるようにする=可視化する方法が礼儀(マナー)です。接遇マナーとは、「相手を思いやる気持ち(思いやりの心)」を持って「その気持ちを相手に伝わるように表現する(形)」ことです。マナーとは、人間関係や社会生活の秩序を維持するために守るべき行動様式であり、特に、相手に対して敬意や謝意を表す作法とも言えます。

 思いやりの心を表すマナーの種類として代表的なものは、身だしなみ、挨拶、言葉遣い、姿勢・態度、順番・順序(席次、上座・下座)があります。また、仕事をする上で忘れてはならないのが電話応対のマナーでしょう。

 次回以降、各項目について詳しくお伝えしますが、今回はそれぞれの気を付けたいポイントについてまとめてみます。

  

電話をする医療機関職員

     

1. 身だしなみ

 身だしなみは、社会人に求められる基本的ビジネスマナーのひとつです。きちんとした身だしなみは、仕事に取り組む姿勢、清潔さや誠実さ、品格にもつながります。一緒に仕事をする相手に好印象を持ってもらうための必須マナーでもあります。

 上記に加えて、医療介護施設で欠かせないのが清潔感です。患者さん・利用者さんは最初に会った職員の第一印象でその施設全体のイメージを決定づけると言われます。職員一人ひとりが施設を代表し、施設の顔であるという自覚を持って身だしなみに心を配りましょう。

 

身だしなみのポイント

  • 患者さんや地域住民の方が清潔と感じる服装や髪型を整える
  • 通勤や休憩時間など施設外でも医療・介護者として信頼される服装を心がける
  • 柔軟剤や整髪料など香りの強いものは控える

        

2. 挨拶

 「挨拶」の「挨」は「心を開く」、「拶」には「相手に近づく」という意味があります。たとえば朝一番、患者さんに「おはようございます」と声をかけながら、頭では午後の会議のことを考えているとき。患者さんは「他のことを考えて、自分の方に気持ちが向いていない」とピンとくるものです。また、目が合っても忙しいからと声をかけずに通り過ぎると、利用者さんは「隠しごとがあるのかも」「嫌われているのかも」などと勝手に悪い方に解釈してしまう可能性もあります。心を開いて相手に気持ちを集中し自分から先に積極的に声をかけるのが、患者さん・利用者さんが安心する挨拶のポイントです。聞き取りやすい声の大きさやトーン、やさしい微笑みや明るい表情を意識して、患者さん・利用者さんを快く送迎する挨拶を実践しましょう。

 

挨拶のポイント

  • 自分から先に挨拶する
  • 言葉・表情・態度を一致させる
  • 状況に応じて声のトーン(高低、抑揚)や大きさ(強弱)を変える

 

3. 言葉遣い

  接遇といえば言葉づかい、言葉づかいと言えば敬語をイメージされる方も多いと思います。敬語は相手に敬意や気遣いを伝える言葉ですが、患者さん・利用者さんとのコミュニケーションが成り立つことが大前提です。尊敬語、謙譲語、丁寧語などをしっかり身につけ、状況にあわせて柔軟に使い分けましょう。言葉遣いのポイントは、患者さん・利用者さんの話す言葉をしっかり聞いて、その言葉を少し丁寧にした言葉を選ぶこと。誰に対しても同じように尊敬語・謙譲語を使うのではなく、患者さんや利用者さんの年齢・職業・生活環境などを考慮して、相手にとってわかりやすい言葉を選びましょう。

 

言葉遣いのポイント  

  • 患者さん・利用者さんが心地よい・理解しやすいと感じる言葉で話す
  • 患者さん・利用者さんの話し方を少し丁寧にした言葉遣いを意識する
  • 話すスピード・声の大きさやトーンも患者さん・利用者さんに合わせる。

  

4. 姿勢・態度

 患者さん・利用者さんのお役に立ちたいという気持ちは、表情や態度にあらわれます。患者さん・利用者さんと接するときの姿勢や態度に十分注意を払いましょう。医療介護者のやさしい笑顔や親身になって真剣に話を聞く姿勢は人間的な魅力を高め、施設に対する信頼の基礎となります。信頼関係を深めるために、どんなときでも患者さん・利用者さんが安心できる姿勢・態度を身につけましょう。

 医療介護施設で患者さん・利用者さんに接する際に欠かせないのが笑顔です。笑顔は相手に対して好意や信頼、安心、リラックス等をもたらしますが、医療や介護の現場ではさらに大きな役割を持っています。たとえば、初めて訪れる患者さん・利用者さんの警戒心を解く、緊張をほぐす、励ましや勇気を伝える、医療介護者の自信を伝える等の効果があります。

 

姿勢・態度のポイント 

 

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP