2024.10.07
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今年度から義務化された介護サービス事業者経営情報の提供

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.16

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第16回は、「今年度から義務化された介護サービス事業者経営情報の提供」です。

今年度から、介護サービス事業者の経営情報を提出することが求められることになります。提出は原則オンライン上で行うこととなり、システムや仕組みなどが大きく変わってきています。今回は、どのような経営情報をまとめて提出すればよいのか、ただ単に会計事務所に丸投げにしていたり、事業所スタッフが経理を担当していたりするだけでよいのか、などのポイントを解説いただきました。今回の仕組みの変更を理解し、自身の経営情報を分析して経営改善に役立てられるようにしましょう。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

             

  

                    

1. 介護サービス経営情報提供の義務化

介護事業所の経営

 

令和6年度介護保険法改正においては、介護サービス事業者経営情報を所轄する都道府県知事に報告することが義務化された。そして、提出をしない、又は虚偽の報告を行った場合は、期間を定めて報告もしくは内容を是正することを命令することが出来るとされている。命令とは、軽微な行政処分である。さらに命令に従わない時は、指定の取消もしくは業務停止の処分が出来るとされた。「財務諸表の未提出程度で指定取り消しは無い」という意見も聞くが、この認識は誤りだ。これは、命令という行政処分を受けても従わない悪質な事業者への罰則だからである。

 

これまでは、社会福祉法人や障害福祉事業者には財務諸表の提出と公表を義務化している。今回の制度改正で、介護サービス事業者についても同様に財務状況を公表することとされた。先に義務化されている障害福祉事業者では、その提出状況が芳しくないという事実も指摘されている。その理由は、義務化に伴う罰則規定が無い事が挙げられ、介護サービスに於ける義務化で、罰則規定が有るか否かも注目されていた。今回の改正に於いての罰則規定は、未提出に対しての命令処分である。今回、障害福祉報酬改定では、未提出の場合は障害福祉報酬を減算される。介護報酬に於いても、近い将来に減算規定が盛り込まれる可能性も捨てきれない。

 

これまで厚生労働省は、介護事業所の決算データ収集については、3年毎に実施される経営実態調査の中で行ってきた。しかし、一部の事業所へのサンプル調査であるため、介護業界全体の財務状況を的確に示しているとは言いがたい。介護事業者の財務データをデータベース化することで、介護報酬改定や処遇改善の実施に於いてのエビデンスが高まり、より的確な政策をとることが出来る。

  

2. 提出方法は、介護事業財務情報データベースシステムへの提供

財務諸表等の経営情報を定期的に都道府県知事に届け出るための提出方法としては、介護事業財務情報データベースシステムとなる。ここに手入力するか、会計ソフトでCSVファイルを作成して電子データとして送信する形になる。

 

提出不要のケースは2つ示された。一つは、年間の介護報酬が百万円以下の場合、もう一つは、自然災害などに被災して提出が困難な場合である。それ以外は提出が必須となる。提出する財務諸表は法人単位では無く、事業所、施設毎となる。事業所毎の名称や所在地などの基本情報、収益と費用の内容、職種別の配置職員数などである。

 

提出期限は決算期終了後、3月以内とされた。初年度である令和5年度決算のおける財務情報データの提出は、令和7年1月から3月の間に行うことになる。また、報告にあたってGビズID(GビズIDプライム)のアカウント取得が必要となる。詳細は、秋口に提供されるマニュアル(介護保険最新情報のVol.1315)などで確認されたい。

 

令和6年度の報告の流れ

出典 厚生労働省 介護保険法第115条の44の2の規定に基づく介護サービス事業者経営情報の調査及び分析等に関する制度に係る実施上の留意事項について

(厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課長、高齢者支援課長、老人保険課長通知) より抜粋

  

3. 提出する財務情報データは税務署に提出した決算書ではない

問題は、提出する財務情報データが税務署に提出した決算書そのものでは無いということだ。運営基準において介護事業者は「会計の区分」に沿った会計処理をしなければならないとされている。「会計の区分」は、厚生省令第37号などの解釈通知に規定されている。同一法人で複数のサービス拠点を運営している場合は、その拠点毎に会計を分けなければならない。これを会計用語では「本支店会計」と言う。

 

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