2024.09.02
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生産性向上への取組強化とDXの推進

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.15

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第15回は、「生産性向上への取組強化とDXの推進」です。

介護職員等処遇改善加算の算定要件の一つである職場環境等要件が令和7年度から大きく変わることとなります。生産性向上が処遇改善加算の算定要件となり、生産性向上委員会の設置も義務化されます。今後は介護ロボットや ICT 等のテクノロジーを活用し、介護DXを推進することも重要な課題となるでしょう。それらの課題を整理しながらポイントを解説いただきます。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

             

  

                    

1. 生産性向上が、処遇改善加算の算定要件に

介護職員等処遇改善加算の算定要件の一つである職場環境等要件が令和7年度から大きく変わる。令和7年度以降に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合は、以下の要件が適用される

 

(1)新加算Ⅰ又はⅡを算定する場合

①区分ごとに2以上の取組を実施。

②「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち3以上の取組(うち⑰又は⑱は必須)を実施。

③職場環境等の改善に係る取組について、ホームページへの掲載等により公表。

 

「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」(下図参照)では、3以上の取組(うち⑰又は⑱は必須)を実施することが求められる。⑰は、国が発出している生産性向上ガイドラインに沿った取り組みに関する委員会などの設置である。⑱は、現場の課題分析である。㉔は、委員会の共同開催などの業務の効率化、簡素化である。それ以外の項目は、介護ロボットや記録ソフトなどのICT化が占めている。LIFEの導入によって、介護記録ソフトは一気に普及した感があるが、それも小規模事業所にはハードルが高いと言える。どのような形で令和7度から算定要件を満たすかも大きな課題となっている。

 

介護サービスの情報公表制度を活用して、新加算の算定状況を報告するとともに、職場環境等要件を満たすために実施した取組項目及びその具体的な取組内容を「事業所の特色」欄に記載する。制度における報告の対象となっていない場合等には、各事業者のホームページを活用する等、外部から見える形で公表する。

(2)新加算Ⅲ又はⅣを算定する場合

①区分ごとに1以上を実施。

②「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」のうち2つ以上の取組を実施。

(3)職場環境等要件の特例措置 

ただし、生産性向上推進体制加算を算定している場合には、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たす。1法人あたり1の施設又は事業所のみを運営するような法人等の小規模事業者は、㉔の取組を実施していれば、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たす。 

 

介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件

 

出典:厚生労働省:介護職員の処遇改善

 

2. 介護施設などに、生産性向上委員会の開催が義務化された

施設系などのサービスには、3年間の経過措置を設けた上で、生産性向上委員会の設置が義務化された。同時に、ICT化に取り組み、その改善効果に関するデータを提出することを評価する生産性向上推進体制加算が創設された。ICTやIT助成金を活用しての計画的なICT化も必要となっている。今後は、業務マニュアルの作成、介護記録ソフト、見守りセンサーやインカムの導入、介護助手の活用など、介護サービス事業における生産性向上に資するガイドラインを参考に進めて行くことが重要な経営課題となる。介護報酬に依存しない経営改善を進めて行かなければならない。

 

生産性向上については、基本的に、厚生労働省から提供されている、介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン、介護分野における生産性向上の取組を支援・促進する手引き、介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き、などを参考に進めて行くこととなる。

 

以下が、生産性向上委員会の開催概要である。

 

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