2024.06.20
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6月からの介護職員等処遇改善加算の算定ポイント

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.13

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第13回は、6月からの介護職員等処遇改善加算の算定ポイントについてです。

新たに創設された介護職員等処遇改善加算はどのようなものなのか小濱道博さんに解説いただきます。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

                                

1. 介護職員等処遇改善加算が創設された

令和6年5月をもって、現行の介護職員処遇改善3加算が廃止される。6月からは、新たに介護職員等処遇改善加算が創設される。新加算の報酬区分はⅠからⅣの4区分である。移行期間の特例として、令和6年度末(令和7年3月)までは区分Ⅴが設けられている。この区分は、これまでの処遇改善加算の区分Ⅲを算定しているなどで、すぐには新加算の要件を満たすことが出来ない場合の措置である。

 

区分Ⅴは、サービス毎に(1)―(14)まで細分化されており、現在の3加算の算定状況に応じた区分での算定となる。令和7年3月末までの特例のため、それまでに新加算区分Ⅰ〜Ⅳの何れかの算定要件を満たすことが求められる。

 

図表:現行制度から一本化後の介護職員等処遇改善加算への移行

出典:令和6年度介護報酬改定 制度概要・全体説明資料

 

         

2. 2期分の賃上げを前倒しで支給される

新加算のポイントは、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%の2期分のベースアップを可能としたことである。この新加算の算定率は、2年分の賃上げ分を含んでいる。そのため、6月に移行した段階で算定率は、現行の3加算と2月からの支援補助金を合計した加算率より高く設定されている。この増加分は、6月から前倒しで支給しても良いし、令和7年度に繰り延べて7年度に支給しても良いとした。

  

ただし、繰り延べる方法は2つの問題を抱える。1つ目は、繰り延べて令和7年度に支給を繰り越した部分については、令和8年度以降の加算では補填されないこと。すなわち、8年度以降は自腹となる。2つ目は、繰り延べした部分の収益は令和6年度の収入であることだ。加算収入に相対する賃金の支給が令和7年度となるため、令和6年度は法人税の課税対象となることだ。

 

厚生労働省は、この税金対策として、賃上げ促進税制の活用を挙げているが、一般的でない。それらを勘案すると、6月から前倒しでの支給がベストの選択といえる。ただし、例外として、毎年に定期昇給を実施している場合は、繰り延べて増額した部分で定期昇給の相当額を補填する場合は有効である。8年度以降は、自腹での支給は想定内であるため、少なくても令和7年度の昇給分を加算で補填できるメリットは大きい。しかし、毎年の定期昇給を実現している介護施設は限定的である。

  

図表:令和6・7年度の処遇改善加算の配分方法

出典:令和6年度介護報酬改定 制度概要・全体説明資料

         

  

3. 旧特定処遇改善加算の算定要件が簡素化

その算定要件は、かなり簡素化されている。特に現行の特定処遇改善加算Ⅱの算定要件である、全職員をA-B-Cに振り分ける。Cグループ(その他の職種)への支給は、Bグループ(その他の介護職員)の賃金改善額の二分の一以下とする、いわゆる二分の一ルールは廃止された。また、Cグループの支給対象者は、年収が440万円以下のものとする所得制限が撤廃されている。引き継がれる、特定処遇改善加算Ⅱの算定要件は、経験10年以上で介護福祉士を持つ介護職員の中から、1名以上、年収440万円以上の者を求める要件である。これも、すでに該当者が配置されている場合はそれで足りる。

しかし、令和7年度からは、同要件で認められている特例措置、月額8万円の昇給の要件が廃止される。そのため、新区分のⅠまたはⅡを算定している場合には、年収440万円以上の者を設定出来ないと算定区分が3以下にランクダウンするので注意が必要である。

 

図表:処遇改善加算の一本化及び加算率の引き上げ(令和6年6月~) 

出典:令和6年度介護報酬改定 制度概要・全体説明資料

 

4. 月給改善額の要件の変更

月給改善として求められる部分は、現在のベースアップ等支援加算での算定要件である受給総額の三分の二以上とする算定要件とは異なり、

 

 

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