2024.03.21
5

過去最大の激変。審議が終了した介護報酬改定の注目ポイント

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.11

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第11回は、過去最大の激変。審議が終了した介護報酬改定の注目ポイントについてです。

4月だったり6月だったりと介護サービスごとに違う改定の施行時期、BCPが未作成だと行われる減算など、把握していないと大きな計画修正が必要となる変更があります。

    

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

        

介護報酬の激変に驚く男性                        

1. 令和6年度介護報酬改定率は本体0.61%で前回を下回る

全体の改定率は1.59%で、前回(2021年度)の改定率0.7%を大幅に上回った。施設の光熱費などへの対応分を含めると、実質的には2.04%相当の引き上げとされている。しかし、その数字には、介護職員への処遇改善加算分の0.98%が入っている。つまり、処遇改善加算のない居宅介護支援事業所等に回るのは残りの0.61%に留まる。それ以外の事業所も、処遇改善加算自体は全額が職員に支給されるため、収入とは言えない。実際は前回を下回る結果となった。近年の物価上昇を考慮した場合は、実質的にはマイナス改定であると言える。この点については、プラス改定報道が先行し、業界団体が大幅なプラス改定を陳情していた経緯から不満も多いだろう。しかし、当初は大幅なマイナス改定も予想されていた事から、今回のプラス改定は十分に評価すべきものである。

 

介護保険の財源は、半分は国民負担の介護保険料で賄われている。介護報酬の引き上げは、介護保険料の引き上げにも繋がる。今回の介護報酬改定審議では、何度もメリハリという言葉が飛び交った。どこかを引き上げたら、どこかを引き下げてバランスを取ると言うことである。実際に、同一建物減算の強化や創設などによって、収入がダウンする事業者も出てくる。皆が一律でプラスになる事はないのだ。

 

 

介護報酬改定率について

出典:第237回社会保障審議会介護給付費分科会(持ち回り)資料

 【資料1】介護報酬改定率、多床室の室料負担、基準費用額(居住費)について(報告)

    

         

2. 介護保険法の継続審議案件の確定

同時並行で審議されていた介護保険法関連の論点も結論が出された。一号被保険者の介護保険料負担額においては、高所得者の保険料負担を増やし、低所得者の保険証負担を緩和する。医療系施設の多床室料の自己負担化は、介護医療院のⅡ型と介護老人保健施設の療養型とその他型については、令和7年8月から実施される。自己負担2割の対象者拡大は見送られて、次期改定に向けた継続審議となった。

  

結論を言うと、令和6年度介護報酬改定は、事業者の大規模化を促進するための改定である。さらには、事業所自体の質の向上を求める改定でもある。また、既存の加算の算定要件が大きく変わる。同じ加算を算定して居るからと、今までと同じ事を繰り返していると、運営指導で返還指導となるケースも増える。現状維持志向は捨てる必要がある。ある意味で、来年度からの介護保険制度は、全くの別物になると考えた方がしっくりするかも知れない。

 

 

多床室の室料負担について出典:第237回社会保障審議会介護給付費分科会(持ち回り)資料

 【資料1】介護報酬改定率、多床室の室料負担、基準費用額(居住費)について(報告)

         

  

3. 介護サービスによって異なる施行時期と処遇改善支援補助金

今回の介護報酬改定の施行時期は介護サービスによって異なる。訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導の4つのサービスは6月1日の施行となる。それ以外の介護サービスは、従来通りに4月1日から施行される。現行の3つの処遇改善加算は、新たに介護職員等処遇改善加算として一本化される。その施行時期は6月1日となるので注意が必要である。2月からスタートしたひとり6000円相当の処遇改善は、支援補助金として5月まで算定となる。基本的に、介護職員等ベースアップ支援加算の要件が踏襲されている。よって、職員の支給金額の見直しと、3分の2以上を月給で支給する算定要件を満たす必要があり、請求手続として処遇改善計画書の提出も求められる。

 

 

 令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金の実施について 介護保険最新情報vol.1202(令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金の実施について)

  

 

4. BCP未作成減算と運営基準違反は異なる

令和6年4月(一部6月)より、BCP作成と高齢者虐待防止措置への未対応事業所には減算が適用される。BCP減算には特例措置がある。基本的には令和7年4月から減算となるが、虐待防止措置は今年4月から適用される。注意すべき点は、BCPの義務化は今年4月であることには変わりはないという事である。減算とならなくても、運営指導で運営基準違反として指導対象となる。やはり、BCPの作成と高齢者虐待防止措置は年度内に完了しておくことが必要だ。

  

                  

5. 居宅介護支援事業所の事業所間格差が拡大する

居宅介護支援事業所は、介護支援専門員ひとり当たりの取扱件数が、39件から44件に拡大され、ケアプランデータ連携システムを導入し、事務員を配置している場合は49件とされた。また、予防ケアプランのカウントが二分の一から三分の一となったことは賛否両論が渦巻く。間違いなく言えることは、

 

 

会員登録されている方のみ続きをお読みいただけます。

この記事を評価する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP