2024.02.22
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介護のICT化と業務改善

~小濱道博の基礎から学ぶ介護経営~Vol.10

令和6年介護保険制度改正に向けて 介護サービスの歴史20年を徹底検証(その1)

     

編集部より

現在、社会保障費の膨張により医療・年金・介護に使われる国の予算や保険の報酬は削減待ったなしの状態です。 介護報酬が抑制され、少子化対策や子育て対策にも保険料が回されていくことが予想される中、介護事業者はどのように公共の福祉を守りながら利益を出していけばいいのか。日経ヘルスケアや介護ニュースJOINT、介護実務書籍執筆者としても著名な小濱介護経営事務所代表、小濱道博さんが「基礎から学ぶ介護経営」と題して、初心者でもわかりやすい介護経営のヒントをお伝えします。

 

第10回は、介護事業所のICT化と、それによる業務改善についてです。パソコン、タブレット、データ連携システム、見守りスキャンなどの導入によって、どのように業務を楽にすることができ、その余力を他に回せるのでしょうか。

   

執筆/小濱道博(小濱介護経営研究所 代表)

編集/メディカルサポネット編集部

                                

1. 生産性向上が処遇改善加算の算定要件に

図表1:介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン

介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン

社会保障審議会介護給付費分科会(第223回)資料

介護現場の生産性向上の推進/経営の協働化・大規模化(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上) 

  

 

令和6年度介護報酬改定において、介護施設等には、生産性向上委員会の定期開催が3年間の経過措置付きで義務化される。介護職員等処遇改善加算の算定要件である職場環境等要件においても、現場サイドで生産性向上の取組を強く求める改定となった。業務改善活動の体制構築、職場課題の見える化、5S活動、情報共有、介護記録ソフト、介護ロボット、介護助手などへの取組の推進である。ICT化に取り組む事で、業務改善が進む可能性は高い。しかし、補助金を用いたとしても、費用負担感は大きくのし掛かる。その補助金の支給対象も、ハードからソフトに重点化しつつあって、機材の購入費用に活用しにくくなっている。仮にICT化が実現できたとしても、介護現場職員の高齢化によって、使いこなせないという現実に直面する場合も多いだろう。理想と現実のギャップをどのように埋めるかが経営課題となっている。

  

             

2. 職員の負担軽減とケアの質の向上が目的

業務改善と効率化によって、職員の無駄な動きが減り、少人数でも質の高いケアが可能となる。稼働率の向上と収益率の向上が期待できる。都市部においても人材確保は、年々厳しさを増している。地方から労働人口の減少傾向が顕著になっている。介護サービスは、役務の提供がサービスであり、労働集約型のビジネスであり。人材の確保は死活問題である。そのリスクが、地方から都市部に拡大してくることは時間の問題であり、対策が急務だ。対策とは、ICT化の推進であり、業務の効率化である。外国人の研修生などに頼る事にも限界がある。ICT化を中心として、介護の質の低下を招くことなく、質の向上を図りながら、介護現場の業務負担軽減と人員配置の効率化を実現する。この方法にしか、具体的な対策が見いだせない状況である。

        

        

3. ケアプランデータ連携システム

令和5年度より、ケアプランデータ連携システムが開始された。従来から、ケマネジャーと担当事業所間での提供表などのやり取りは、基本的に紙ベースで行われ、給付管理ソフトや介護報酬請求ソフトなどに手入力するという二度手間が発生していた。これを、ケアマネジャーと担当事業所各々でクライアントソフトを導入して電子データとしてやり取りし、給付管理ソフトや介護報酬請求ソフトなどに取り込むことで二度打ちの手間がなくなる。例えば、月初に担当事業所から届く提供実績表は、ケアマネジャーひとりあたり100枚前後となる。これを給付管理ソフトに入力するために通常3日間程度の時間を要している。これが、システムを使えば1日も掛からずに終えることができる。圧倒的にケアマネジャーの手間が削減される。

 

          

4. 見守りセンサーの導入

介護ロボットなどに先行して、介護報酬の加算における算定要件や、人員基準の緩和要件となっているのが、見守りセンサーである。令和6年度介護報酬改定においても、介護老人保健施設、グループホーム、特定施設における夜勤職員の配置基準の緩和や、夜勤職員配置加算における算定要件の緩和に繋げられている。これは、業務の効率化の実現が、モデル事業などによって評価できたことが大きい。見守りセンサーによる特例を利用することで、夜勤職員の人件費も削減できるし、夜勤職員配置加算が算定しやすくなる。どちらにおいても、経営上の収益の向上に繋がる。それ以上に、夜勤職員の負担軽減となることが、大きな意味を持つ。

 

                 

5. インカムによって移動距離と時間を削減

夜勤職員の配置基準の緩和措置で、インカムなどを活用していることで更なる夜勤職員の削減が可能となっている。夜勤に限らず、日中においてもインカムを利用して情報の伝達や確認をすることで、職員の移動距離とそれに伴う時間ロスを大きく削減できる。介護施設でなくても、例えば、デイサービスで職員の死角が生じるような間取りであった場合、その部分が視界に入っている職員にインカムを通して確認する事で、自ら見える場所に移動して確認する時間ロスを減らすことができる。介護施設においても、各階の入浴順をインカムを通じて連絡を取り合うことで、入浴順を待つ入所者の効率的な移動が可能となる。

 

 

6. 介護記録ソフトで、記録から請求までを一気通貫に

令和3年度介護報酬改定で導入されたLIFEによって、大きく脚光を浴びたのが、介護記録ソフトである。基本的には、日々の介護記録において、タブレットを用いて入力することで、自動的にコンピュータにデータが蓄積されて電子データ化される。介護計画書やアセスメント、スクーリングなどの日常業務を、介護記録ソフトを介して行う事で、LIFEへのデータ提供がオートメーションで行う事が可能となる。実際、LIFEに情報を提供するために

 

 

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